表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Quintet Colors  作者: 師走 扇
高校生活 開始編
6/6

入学式は前途多難

「いやー、しっかし水戸〇門とか座頭〇のDVDが見つかんなかった時はマジで焦ったよ。あれ、集めるのに結構苦労したからさ」


 スクール鞄をリュックのように背負い、頭の後ろで手を組みながらハハハッ、と笑っている相方——キドニー・エリゴスに俺は呆れていた。


「そんなもの持って来てたのか!? 大して必要無いだろうに」


 俺がそう言ったら、キドニーはニシシ、と目を細めて笑ながら俺を見てきた。


「人のことを言えるのか? お前だって調理器具一式を段ボール二つ分は持って来てたじゃないか」


「うっ!」


 キドニーの指摘に、俺は思わず言葉が詰まってしまった。


「べ、別にこっちは自炊に必要だったから持って来たんだ。お前のDVDより実用性は——」


「おっ! あそこの掲示板に人が集まってるぜ」


「おい」


 俺の……まぁ言い訳を、前方にいる大勢の生徒が群がっている掲示板を指差しながら打ち切った。


 よく見ると、その掲示板には一枚の紙が貼られて有り、目を凝らして見ると一年生のクラス表だったから群がっているのは俺たちと同じ一年だろう。


「なぁ翔吾。あれ、クラス表みたいだけど見えるか? てかあれ(・・)使ってくれ。あれ(・・)


 キドニーが眉間に皺を寄せながらクラス表を眺めていたが、一年の生徒の数が結構あり、俺達は一番後方に俺にいるため細かい字はなかなか見えない。そこでキドニーが俺にあれ(・・)を頼んで来た。


「あぁ、わかった」


 一年でも数が数なため時間が掛かるだろうし、俺達は人がいなくなるまで待つ気は毛頭ないため俺は早速あれ(・・)を使うために右手を右目に翳した。


 朱雀、頼むぞ。


『了解です』


 すると翳した右手から火が現れ、瞬く間に俺の右半分を覆った。


 第三者から見れば俺の顔半分が燃えているようにしか見えないが、これは俺の(スキル)なので熱くは無い。


 火が右目に集まったと思った途端に火は飛び散り、朱色で縁取られた片眼鏡(モノクル)が俺の右目に付けられていた。


 これは俺が持っている(スキル)の一つで、遠距離のターゲット探索や、多少の解析などにも使える代物だ。


 今回は俺達のクラス確認のために使わせてもらう。


「……神威ディセント・スキル、使えるようになったのか?」


 横目で見てきたキドニーが確認するような口調で俺に質問してきた。


「いや、バーベキューの火おこしや、荷物運びとかそのくらいでしか使えない」


 視界の端にいるキドニーに、片眼鏡(モノクル)でクラスを確認しながら答えた。


「そっか……でも、だいぶ進歩したんじゃないか? あの事件(・・・・)以来、それだけでも使うのを躊躇してたんだしさ」


「…………」


 それっきりキドニーは喋らなくなり、まだ俺とキドニーの名前を見つけてないためしばらく沈黙が続いた。


「…………おっ!」


 時間が掛かるかと思ったが、俺達は一年一組の欄に名前が載っていたためすぐに見つかって思わず声を漏らした。


「おっ、なんだ? 見つかったか?」


 俺の反応で気付いたのかキドニーが嬉々として尋ねて来た。


「あぁ、見つけた。クラスは……一組だな」


「オッケー! そんじゃあさっさと行こ——ヴェッ‼︎」


 飛んで行きそうな勢いで校舎に駆けそうだったから、俺はすかさずキドニーの襟元を掴んで止めた。


 襟元を掴んで首をもっていかれて締まったのか、変な奇声を出して咳込んだ。


「ゲホッ、ゴホッ。おい、いきなり何するんだよ!?」


 咳込んだからかキドニーは涙目になっていて、その状態で俺を睨んできた。


 襟元を掴んだことは謝るがまず、確認しなきゃいけない事が一つある。


「お前、教室の場所知ってるのか?」


「…………」


 睨んだ顔から段々と引きつった笑顔に変わっていき、頬をピクピクとさせながら口を開けてきた。


「ちなみに俺は今日が初見だから、どこに行けばいいかわからないぞ?」


 開こうとした口がゆっくりと閉じていく。

心なしか引きつった笑みに冷や汗をかいているように見えた。


「だ、誰かに聞いたり、学校の見取り図を見ればいいよな。うん、それが一番妥当だ」


 俺に——というより、自分に言い聞かせる様に呟いたかと思えば、頭をおもむろにかばっといきよいよく上げてきたから、俺は驚いて後ろに仰け反ってしまった。


「そうと決まればさっそく——」


「一人で行こうとするな、馬鹿!!」


 また飛んで行きそうな気配を感じて慌ててキドニーの襟元を掴み、無理矢理止めた。


 キドニーはまたグヴェッ、とまた、おかしな奇声をあげて足が止まる。しばらく咳込んだ後、再び俺を睨んできた。


「一人で行こうとするからだろ。俺だって場所がわからないんだ。勝手に行こうとするな」


「ったく、わかったよ。置いて行かないから次からは襟を掴むなよ」


 やれやれ、と頭を振りながら疲れたように言うキドニーに俺は顔を横に向けて極力顔を見ないようにした。


「とりあえず、周りの奴らに聞きながら教室に行くか」


「だな、始業式まであんまり時間ないし、ちゃっちゃと行くか。ねぇ、ちょっとそこの君ーーちょっといいかなーー?」


 方針が決まるや否や、近くを歩いていた女子生徒にいきなり話しかけて俺達の教室の場所を尋ねていた。


 女子生徒はいきなり話しかけられて一瞬引いたようだか、教室の場所を尋ねたら真摯に教えてくれた。


「高校生活が初っ端からこれじゃあ、苦労するな」


 俺も、キドニー(あいつ)も——。


 そんなことを苦笑しながら考えつつ、俺はキドニーの背中を見失わないよう追って教室を目指した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ