今日も魔法は訪れない
紅桜です。
ほのぼの、とはちょっと違うかもです。
ゆったりと雲の流れる空。吹きそよぐ風。気に入っているいつも通りの屋上。寝っころがって見えるいつも通りの景色。別に不満はない。だが、
「……つまらない。」
ぽつりと漏れたその声を聴く人など、当然ここに、いる訳もない。予想外のことなんて何一つ起こらない。起こってくれない。
いっそ、空から消しゴムでも降ってくればおもしろいのだろうか。と、脳内で再生された消しゴムが雨の様に降ってくる映像に、
「それは嫌だな」
なんというか、気持ち悪い。どうにも消しカスを想像してしまう。気持ち悪くないもの……。
ガラス?
……危険すぎるだろう。
シャボン玉?
全身石鹸でベトベトになるのは勘弁して欲しい。
なら水?
……それではただの雨だ。つまらない。
「あぁ、つまらない……」
再びそんな声を漏らす。……そういえば腹が減ったな……。
キーンコーンカーンコーン
随分とタイミングの良いお昼休みのチャイムに俺は屋上を後にし、食堂へと向かったのだった。
続きます。