月光
大学を卒業した僕は、小説家として日々頑張っていた。
「牧野君。この前の小説かなりの人気よ。頑張ったじゃない。」
「ありがとうございます。西野さんのおかげですよ。」
ブー、ブー。
ポケットにしまってある携帯が震えた。
カチッ。
石井。
携帯電話の画面には2年程前から付き合っている彼女からの電話だった。
カチッ。
「あれ?電話大丈夫なの?」
「ええ。今は仕事中ですから。」
「はぁ。もう仕事は終わったからいいのよ。」
西野さんは僕の少し年上で何かと面倒を見てくれている。
「すみません。」
「いいわよ別に。牧野君。あなた、いい加減にしないと彼女に振られるわよ?」
石井 真奈美とは、2年前大学の同窓会で連絡先を交換してから交際が始まった。
「好きです。」
彼女の言葉に僕は頷く事しか出来なかった。
ガチャッ。
家に戻ると、電気もつけずに風呂に向かった。
風呂に入り、、一日の汚れを落とし終わり、すぐに出た。
「今まで、本当にありがとうございました。」
「牧野君、本当に辞めちゃうのね・・・。寂しくなるわ。」
僕は、今までに3点ほどの小説を書いた。
1点目、2点目と書いて行くうちに、日に日に積もっていく虚しさに耐え切れなくなり仕事を辞めた。
今まで脅迫的と思えるようなものが何処から湧いて来るのか解らず、日に日に削られていく心がとても痛かった。
気付けば、脅迫的とも言えたあの気持ちが失われている事に気がつき、仕事を辞めた。
カチャッ。
カラカラ。
部屋に戻り、ベランダで煙草を吸った。
夜空には綺麗に輝く月が浮かんでいた。




