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雪月花  作者: 茶葉風味
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すれ違い


あれから、半年という時間が過ぎた。

昨日、勇気を出して高志君に電話をした。



「この電話は現在使われておりません・・・。」


 

この時、私は思った。

彼は前に進むことを決めたのだと。

そう、次は私の番だと・・・。























昨日、家の近くの海に散歩に行った。

 

だらだらと過ごしている毎日を変えたくて、散歩をして気分転換したかった。


しばらく、浜辺でぼんやりとしていた。

僕は何故か無性に苛立ちを感じた。

それは、自分に対してなのかそれとも他のまだ見ぬ何かに対してなのかはよく分からなかった。

でも、たぶん前者の方だろう。



不意に僕は何も考えず、海に入った。


季節は夏になりかけていて、暑かった。

汗ばむ体と苛立つ心をどうにかしたくて、泳いでみた。


海は冷たくて気持ちよかった。

波に身を任せ、しばらく空を見上げていた。


そこで、ポケットに何か重い物が入っている事に気づいた。

この時は大して気にしなかった。

 


それから、一時間ほど泳いで我が家へと帰った。


家に着き、お風呂に入ろうとした時にようやく気づいたのだ。


僕は携帯電話をポケットに入れたまま、海で泳いでいたのだ。


もちろん、僕の淡い期待など完全に無視をしてくれて、携帯電話は完全に機能しなくなっていた。

 

「何をやってるんだろ・・・。」


もう溜息すら出てはこなかった。

 

ひかりの連絡先は携帯電話にしか情報は無く、手紙で聞こうと思ったのだが、ひかりが石垣島に来る一ヶ月程前に引越しをしたと言っていたのを思い出した。


要するに、ひかりとの連絡は完全に絶たれたのだ。

手紙に載っている住所は前の住所っていう事は嫌って程確認した。



「本当に何してるんだよ・・・僕は・・・。」


涙が零れた。


すぐに止まったが、心の悲しみは膨らんでいく。























「ひかり。ご飯出来たから降りてきなさい。」


「はーい!」


今日のご飯はカレーだ。

空いている席に座り今日のメニューを確認すると同時になんとなく、温かさを感じた。


そういえば、高志君もカレー好きだったな。


一口。

カレーの味を確認した一口。


不意に、手に温かい何かが落ちた事に気付いたのと、父と母が慌てている姿を確認したのはほぼ同時だった。





「あんた!どうしたの!」


「嫌な事があったなら相談しなさい。」


父も母も慌てていて、優しくて、その優しさが逆に辛く感じた。


だから、私は落ち着いて一言言う。


「ううん。もう、大丈夫。だから、もう少し泣かせて。」


泣き止んだら、もう振り返らない。



思い出すことはあるだろう。


それは思い出としての記憶で、新しく何かをする為の経験と思うことにしよう。




覚悟を決めた日は、母の優しいカレーと、父の面白くないジョークに包まれた6月の夕日が綺麗な夕飯の時間だった。





















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