電話
あっと言う間に夏が過ぎ、秋が過ぎた。
風が強く肌寒い季節になった。
東京に比べると風が強いだけだが、間違いなく冬が来た。
学校の冬独特の静けさが僕を包み込む。
僕らの高校は昨日から休みに入った。
冬休みというやつだ。
僕は学校にいた。
別に補習があるからとか、先生に呼び出しされたとかではない。
先週借りた本を返すために来たのだ。
本を返し終わり当ても無く歩き続けると、前から寒そうな格好の集団が現れた。
集団といっても5、6人だが。
駅伝部だ。
僕はニット棒を深くかぶり直し、他人のふりをした。
嘘をついて部活を辞めてしまった事に、気まずさや罪悪感があったからだ。
そんなことを考えていると彼らは僕の横を通り過ぎて行った。
人は自分が考えているより他人を見ていないのかもしれない。
急によくわからない寂しさに襲われたが、自分で決めたことに今更後悔するなんて我ながら女々しいと思った。
考えていても仕方ないので僕は、バス停へと向かった。
「風強いな・・・。」
ブーブー。
ポケットから携帯のバイブ音が聞こえ慌てて取り出した。
カチッ。
「も、もしもし!」
「あ、隆志君。今、大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。」
「えと、明日。明日、そっち行く事になったから。」
「そうなんだ。何時ごろ?」
「うーん。まだわかんない。」
「そっか。」
「うん。明日、また連絡するね。」
ひかりからの久しぶりの電話だった。
内心かなり驚いたが、自分でも驚くほど落ち着いて電話の対応はすることが出来た。
「明日か、楽しみだな・・・。」
ひかりがなぜ急に石垣島に行こうと思ったのか、僕自身よくわからなかった。
僕は自分から行動することが出来なかったことへの不甲斐無さに、僕自身に呆れてしまう。
「あ。明後日、12月25日。クリスマスか・・・。」
僕はバス停から重い腰を持ち上げて雑貨などが売っている商店街へと歩き出した。
一人で歩く道はなんだか暖かかった。




