これから
高校入学式。
今日から、高校生活が始まる。
東京で暮らしていた僕からすれば、高校の人数はやっぱり少なかった。
それでも、彼からしたらこの人数はとても多かったらしく、少なくとも戸惑いを感じた。
彼とは、良太のことだ。
良太も目標が特に無かったらしく、僕と同じ普通課のあるこの高校を受験していた。
心地いいくらいの暖かさに包まれながら、僕の高校三年間を過ごすための入学式が始まった。
「新入生、入場。」
この声を合図に、控え室代わりの体育館の隣の武道場と名付けられた部屋から体育館へと次々に入場していった。
入場し終わり、僕は自分の席へと座った。
僕の席よりずっと前の方に良太の緊張しきった背中が見えた。
僕らの高校の校長先生が舞台上に立ち、何か祝辞のようなもの言っていたのを遥か遠くからの呼び声のように僕は感じた。
長かったようで短かった入学式も終わり、今は今年一年間一緒に過ごすクラースメート達と共に教室に集まった。
担任の先生が来て、簡単な挨拶をした。
人前に立つのはちょっと苦手な僕も自己紹介し、このクラスの一員となった。
ひかりはというと都内の高校に受かったらしい。
中学で仲良くなった人も何人か一緒の高校らしく、一人で新しい場所に行かなくてすんだ事に喜んでいた。
図書室で時間を潰してばかりだった僕は、高校で部活に参加することにした。
僕が選んだ部活は陸上部で今まで貧弱者で通っていた僕を良太が心配していたのを覚えている。
練習途中の休憩時間僕は、体力がまだぜんぜん追いつけず始まって三十分ほどで体力のほとんどを失っていた。
「大丈夫?高志君」
僕の一つ年上の先輩はよく僕のことを心配してくれた。
「はい。なんとか。」
僕は擦れた声で言った。
「今日は無理そうだな。今日は帰ってゆっくり休みなよ。」
先輩は何故か僕には優しかった。
彼女の名前は鈴木夏帆。
彼女は高校からこの石垣島に来たらしく、出身は九州の方らしい。
そんな彼女は、僕が陸上部に入部してきた日から何かと面倒を見てくれていた。
「夏帆さん、もう少し頑張ります。」
なんだか申し訳なく、そう呟いた。
「だめ。帰りなさい。」
だが僕の申し出は断られ、帰ることを余儀なくされた。
「わかりました。明日また来ます。」
他の部員に挨拶をしに行こうとすると夏帆さんに呼び止められた。
「あ、高志君。明日は部活休みだよ。ゆっくり休んで!」
明日は休みなんだ。
その日、家に帰るとひかりから手紙が届いていた。
拝啓 牧野高志様
御手紙ありがとう。
お久しぶりです。
高校生活はどうですか?
陸上を始めたと聞いて驚きました。
図書館で本を読む姿しか思い浮かばないので、本当に驚きました。
高校に入って忙しくなるから正直、手紙も電話も少なくなると思ってました。
実際私は、隆志君に手紙もなかなか返せず、電話もできずごめんなさい。
でも、隆志君と離れてから長いこと逢ってないので寂しいです。
早く逢いたいな・・・
弱音ばかり吐いてごめんね・・・
私は元気です。
今はちょっぴり忙しいけど、落ち着いたら隆志君に電話するね。
藤原ひかり
ひかりからの手紙は短かったが、想いがたくさん詰まった手紙だということに僕はすぐに気づいた。
所々ペンで書いたはずのインクが雨で濡れたかのように滲んでいたからだ。




