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第三話 他の牧場の馬の声も聞こえるらしい

本話の要約

・JRAではなく、SRAとしてます。意味はないです。

・当歳とか、重賞とかの説明をちょっとだけしましたが、難しい。文章で説明している人たちスゴイ。

 読者さんは知ってる前提で書きます……。

「おー、ここがゴールドファームか。でけぇな」


 金持が桜井牧場に来てから数日後、俺は折角なのでゴールドファームに見学に来ていた。


 バタン。


 軽トラを降りて眺めるが、本当に広い。

 というか、普通に駐車場があってびっくりした。


「本当に来たのだね!さすが小さい牧場は暇があるようだね?」


 向こう側の建物から金持が歩いてくる。


「いや、電話したら案内してくれるって言うからせっかくだし」


「その学ぼうとする精神は評価しよう。順番に見せてやろう」


 うん、やっぱりいいやつだ。


 金持について、歩いていく。


「今日は、SRA(日本最北競馬会)のお偉いさんが来るから、ちょっとドタバタしていてね」


 ふふん、とドヤ顔で言われるが、それがどれくらい凄いことかよくわからん。


 SRAが、競馬の全部を管理・運営している組織だってことくらいしか知らん。


「そうか、大変だな」


 どうやら一番手前の建物は事務所か何かだったらしい。


 数人の人が、パソコンに向かって何かしていたり、書類を何かしているのがチラッと見えた。


「何人くらいの人が働いているんだ?」


「大体400人くらいかな」


 わーお。

 普通に大企業じゃねぇか。


「すごいな」


「そうだろう!そうだろう!!おっと、この先は大きな声は出さないでくれ給えよ」


 自慢げな様子だが、厩舎が近づくと声のトーンを下げる辺り、やはり馬のことを考えている奴だと思う。


「ここが、うちの繁殖牝馬の厩舎一つ目だ」


「一つ目かよ……」


 ずらーっと並ぶ馬房と繁殖牝馬の数。


 そりゃ400人必要だわ、これ。


「……一応聞くが、繁殖牝馬という言葉の意味くらいは分かっているかね?」


 金持が俺を振り返って、不安げに聞いてくる。


 それくらいは一応大丈夫だ。


「大体どこの牧場にもいて、年に一回仔馬を産む、いわゆるお母さん馬だな」


「うむ、ざっくりとしてはその知識でいいだろう。

 君、馬の知識はどんなものなのだね?」


 金持が先導して歩きながら器用にうなずいている。


 ……時折、「坊ちゃん、お友達ですか!?」とか「お疲れ様です、坊ちゃん」とか言われてるから慕われているようだ。


「ダビスタとウイポの知識がメインだな。

 未だにデビューが3歳でダービーが4歳のイメージがある」


「一体いつの話をしているのだね!?本当に同世代か、君!?」


 仕方ないんだよ、一番ハマったのが『ダビスタ99』だったのが悪い。


「はー、いいかね?

 馬は産まれた歳を、0歳として数えて、1月1日を迎えると皆1歳になる」


 0歳は、当歳とうさいと言ったりもするんだよな。


「うんうん」


「そして、2歳の春~冬くらいになると、大体の馬はデビューをするために、調教師に預けられる」


 調教師は、『西』と『東』に別れるが、桜井牧場にはあまり関係はない。


「それまでの時間は大体、どの馬も牧場で過ごすんだよな」


「そう、調教師に預け始めることを『入厩』と言う」


 へー。


「そして、その後一般的には、だが、

 新馬戦または未勝利戦、条件戦、オープン戦、重賞の順で勝ち上がっていくことになる」


 わかるよ。

 重賞の中には、G3~G1があり、G1が一番上だ。


「君たちのような中小牧場だとオープン戦クラスの馬を輩出するのも一苦労だろう?」


「そうだなぁ。他の牧場もそれくらいなのか?」


 実際、うちの牧場で今一番強いのは、オープン馬のストーンブレイクだ。

 重賞には挑んだことすらない。


「もちろん、差はある。が、そのイメージで良い。特に、君の言うダービーや皐月賞なんかはデビュー後一年しないうちにレースを迎えるわけだ。」


 うんうん。


「だから、特に2歳・3歳のレースは牧場での過ごし方も大事になってくるんだよな」


 ダビスタやウイポのイメージ通りだ。


「そのとおり!そして!僕の牧場における、入厩前の馬がこの厩舎にいる約400頭だ」


 厩舎の中に足を踏み入れつつ、自慢げに振り返ってくるが、俺はそれどころじゃない。


「知らねー奴がいる!!」

「誰だソイツ!?」

「坊の友達か!?」

「坊に友達ができるわけねぇだろ!?」

「おい人間!リンゴくれ!」


 うるせぇ!!


「ふふふ、この馬たちの育成のために、うちにはプールや坂路、ウォーキング施設等充実した設備があるのだよ!!」


 何か解説をしてくれているが、正直馬たちがうるさいせいで、あまり聞こえてない。


「はやく遊びに行かせろ!」

「お腹痛い……」

「もう練習飽きたー」

「坊、ご飯足りねーぞ!」

「おい人間!リンゴ!ふじリンゴな!!」


 ……ん?


「なあ、金持」


「ん、どうした?どこか見たい施設でもあるのかね?いいとも!」


 正直設備は見てみたいんだけど。


「あそこの奥から三番目の馬」


「ん、あの子がどうかしたかね?」


「腹痛があるっぽい」


 たぶん、さっき「腹痛い」って言ってたのはあいつだ。


「聞こえたの?そうなの、お腹痛いんだよ……」


 あ、正解だ。


「わかった。すまないが、帰ってくれ給え。僕はこれから、あの子を専属獣医に見せに行く」


「……信じてくれるのか?」


 正直、「何を言っているのかね?ど素人が」って言われるかな、と思いつつ言った。

 

「嘘をついたのかね?」


 真剣な顔で金持はこちらを見る。


「いや、嘘じゃない」


「なら、それでいい。仮に違えば、それでいい。素人目線でも違和感があったのなら対応するに越したことはない」


「……そうか、ありがとう」


「いや、本当に腹痛があったのならば、感謝するのはこちらだ。では、失礼する」


 金持は近くの職員に声をかけて、自分はその馬に近づいていく。


 ……うん、やっぱり癖はあるけど、悪いやつじゃないと俺は思う。


 そんなことを思いつつ、俺は踵を返し、駐車場に戻った。


「おい人間!リンゴっつってんだろ!!」

「帰るの!?お前聞こえてんだろ!」

「お前誰なんだよ!!」

「坊の友達なの!?また来いよ!」

「うちの坊、友達いねぇんだ!」


 馬たちうっせえ!!

 数が多いせいで、うちの牧場よりうっせぇ!!

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