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第4章 ep.7 筋肉の誓い ― スパルディアの真実

バルドとゴルドが土俵で膝をつき、忠誠を誓った。

 その巨体が並んで頭を下げる姿は壮観で、見守っていた一行はただ唖然とするばかりだった。


「……なんだろうな、急に一行の暑苦しさが三倍になった気がするんだけど……」

 カイがぼそりと呟き、ラッツが苦笑した。

 モルティナは頭を抱え、小声で「リリアぁ……女子力が死んでいく……」と泣きそうに呟いた。


 焚き火を囲み、バルドが重々しく語り始めた。

「勇者よ。お前たちは勘違いしているだろうが、スパルディアはいま、決して荒れてはいない」


「……は?」

 一行が首を傾げる。


「勝者がすべて。それが我らの文化。敗北した我らが王バルゴラスに忠誠を誓うのは当然。

 誰も文句は言わぬ」


 ゴルドも頷き、胸を叩いた。

「むしろ、奴は良き王だ。国民の文化を尊重し、筋肉を愛し、鍛錬を奨励した」


 カイが顔をしかめる。

「……いや、むしろ健全すぎね?」


「徴兵はない。あるのは――徴筋制だ」

 バルドの声は厳かだった。


「十六歳を迎えた者は全員、日々の筋トレを義務付けられる。

 スクワット、ベンチプレス、デッドリフト――いずれかは必ず行わねばならぬ」


「文化的にマッチしすぎだろ!」

 カイが思わずツッコミを入れる。


 しかしバルドの顔は渋く曇った。

「だが……我らは反乱軍のリーダーでもあった」


「反乱……!?」

 モルティナが目を見開く。


「理由はただ一つ。バルゴラスは……一日の筋トレを“二時間まで”と制定したのだ」

 ゴルドの拳が震える。

「我らは筋肉を極めたい! 三時間でも四時間でも追い込みたい! それを禁じられた……!」


「ふ、不満そこかよ!?」

 カイが叫ぶ。


「我が息子も毎晩泣いていた! 『父上ー、もっとベンチプレスがしたいよー!』と!」

 バルドが胸を叩きながら涙する。


 一同は絶句した。

 ガルドが頭をかきむしる。

「おいおい……それ、反乱起こす理由か……?」


「そうだ! だが……敗北した以上、忠誠を誓わねばならぬ。それが掟。

 だから我らは剣を収め、筋肉を抑え、今日まで耐えてきたのだ……」



 一行は顔を見合わせた。

 覚悟していた血と暴力の悪政など、どこにもない。

 むしろ平和で、筋肉信仰に支えられた健全な王国。


 カイがぽつりと呟く。

「……これ、バルゴラス支配してるほうがマシなんじゃね?」


 ガルドも肩をすくめる。

「だな。むしろ筋肉制限のほうが正しいんじゃねぇか」


「う、嘘でしょ……」

 モルティナが頭を抱え、途方に暮れた。


 ――こうして、勇者一行に新たな仲間が加わった。

 だが、その筋肉文化の奥深さは、まだ誰も理解していなかった……。

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