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第4章ep.1 連れ去られた少女

リリア視点


 ――空を切り裂く風。

 四天王バルゴラスの爪に掴まれ、リリアはぶら下がっていた。


「いやぁぁぁぁぁーッ! 鼻ちぎれるぅ! 落とす気!? 死ぬ死ぬ死ぬってばぁぁぁ!!」

 涙と鼻水を滝のように垂らし、足を必死にバタつかせる。


「……何を喚いている。抱き着くな、小娘」

 頭上から雷鳴のような声が響いた。


「だ、抱き着くなって……落とすほうがよっぽど怖いわよぉぉ!!」


「仲間を売るとは恥を知れ。卑劣な真似をした小娘よ、貴様に戦士を名乗る資格はない」


「ひ、ひぃぃっ!? ち、ちがっ……違うの! あれは全部演技だからぁ! 勇者を守るための作戦! ゲス顔もサービスサービスぅ!」


「……ふむ。演技、とな」

 バルゴラスの目が鋭く細められる。

「ならば、その心にまだ矜持が残っているか……試さねばなるまい」


「ええええええええぇぇぇ……」

 リリアは青ざめ、魂が口から飛び出しそうになっていた。


 翼の風が変わり、バルゴラスは急降下する。

 たどり着いたのは石壁に囲まれた城塞都市――スパルディア王国。


 厚い城門を抜け、連れていかれた先は松明が揺れる石造りの一室。

 高い天井、冷たい床、鉄格子の窓。

 壁には鎖がかかり、床には鉄輪が埋め込まれていた。


(ひぃぃ……ここ、絶対拷問部屋じゃん……!)


 リリアの顔は青ざめ、唇が震える。

 大きな鎖を見ただけで心臓が跳ね、耳元で自分の鼓動がやたらとうるさい。


「……おい。小娘」

 背後から響くバルゴラスの声に、リリアは跳ね上がった。


「ひ、ひぃっ!? や、やっぱり殺すんでしょ!? 私の肉を裂いて、骨をへし折って、勇者に送りつける気なんでしょぉぉ!? ひっ、ひぃぃぃ!」


 ガタガタと膝を震わせ、床に崩れ落ちる。


 だが返ってきた声は、意外にも静かだった。

「……戦士であるならば、矜持を示せ。朝までに心を整えよ」


 扉が重く閉じられる。


 残されたリリアは、石の床に毛布をかぶり、小さく縮こまった。


「いやぁぁ……死にたくない……。でもきっと朝になったら串刺しに……うぅぅ……」


 冷たい床に滴る涙の音だけが、夜に響いていた。


勇者たち視点


 ――荒野。

 仲間を失った一行は、沈痛な面持ちで立ち尽くしていた。


 地に崩れ落ちたガルドは血を流し、剣を杖代わりに立ち上がろうとする。

「……っはぁ……っ……追いかける、っつに……決まってんだろ……!」


「無理すんな! その体で動けるか!」

 カイが止める。


「リリア……」

 モルティナの声が震える。


 一同は、これまでにない敗北の重さに打ちひしがれていた。

 それでもガルドは、ふらつきながらも前へ進もうとする。


「……あいつが簡単にくたばるタマじゃねぇってわかってるよ! それでも――仲間だろ!」


 その時、女神の声が頭上から響いた。


『ガルド。無理をしてはいけません! 彼女なら当面は無事です。私は彼女の視界を共有しております。今はあなたたちの回復を優先しなさい』


「でも、でも!」

 モルティナが食い下がる。


『……ほんとうに心配性ですね。ですが良いでしょう。私の力で数時間後の彼女の様子を投影します。これを見れば安心できますよ。ただし――この術は力の消耗が激しい。私は一週間ほど、あなたたちと連絡を取ることができなくなります』


 一同が息を呑む。女神は続けた。


『その間に伝えておきます。軍神はスパルディア王国に幽閉されます。そこへ向かいなさい。そして――“白銀のエルフ”を探しなさい。きっとあなたたちの助けになります』


 光の幕が現れ、リリアの姿が投影された。


投影の中のリリア


「ん~極楽極楽……。あ、ジュースはそこ置いといて」

 ふかふかの椅子に寝そべり、だらしない顔でマッサージを受けているリリアがそこにいた。


「かしこまりました」

 燕尾服姿のバルゴラスの手下が恭しく盆を差し出す。


「うむ、よきにはからえ……あーそこそこ、強めで……」


 一同「…………」


 その時、手下の一人が口を開いた。

「バルゴラス様、この女、勇者どもの仲間ですよね? 今なら簡単に殺してしまいま――」


 ――バキィ!

 拳の一撃で、男は壁にめり込んだ。


「馬鹿者!!」

 バルゴラスの怒号が中庭を叩く。

「不意打ちなど誠の戦士にあるまじきこと! それに敵といえど客人に変わりはない。丁重にもてなせ!」


「イエッサー!!」


 リリアは鼻歌交じりにストローを啜っていた。


現実へ


 光が消え、荒野に沈黙が戻る。


 ガルドは天を仰ぎ、力なく笑った。

「……とりあえず、帰って寝るか」


 一同「…………」

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