幕間 ―銀髪の影―
――丘の上。
月明かりに照らされ、銀髪のエルフは戦場を見下ろしていた。
勇者が血に塗れ、バルゴラスの巨影に圧される。
その背後からリリアが歩み出て、ゲス顔で媚びへつらう声を上げた。
「ぐへへぇ! やりましたよ、バルゴラス様!」
その様子を見て、エルフは震えるほど胸を打たれていた。
(ああ……! やっぱりリリアは優しい。あえて悪を演じ、勇者を庇ったのね。仲間を救うために、自分が汚名を被るなんて……つらかったでしょうに)
勇者を吹き飛ばした爆炎の場面さえ、彼女には違って見えていた。
(そう……本当は傷つけたくなかったはず。でも誰かが血を流さなければならないなら、あなたは迷わず自分の手を汚す。なんて尊い……なんて健気……!)
リリアの鼻水と涙にまみれた情けない顔を、彼女は両手を胸に抱きしめるようにして見つめる。
(泣いてる……無理して笑ってる……ああ、守ってあげたい。あなたの痛みを全部、私が背負ってあげたいのに……!)
やがてバルゴラスに掴まれ、リリアが夜空にさらわれていく。
エルフは恍惚とした笑みを浮かべ、呟いた。
「大丈夫。必ず助けるから……。あなたは私のもの……どんなに演技で強がっても、全部わかってる」
彼女の声は夜に溶け、次の瞬間、銀髪の影は闇に消えた。
勇者たちはその存在に気づくことはなかった。




