表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/74

第3章 ep.15 鍛冶師、熱く語る

火山を後にした一行は、全身すすで真っ黒になりながらリゾート街へ戻ってきた。

 潮風が肌を撫でるだけで、まるで天国のように感じる。


「……生きて帰ってこれた」

 モルティナが深く息をつき、盾を抱きしめる。


「兄貴、マジで勇者っすよ……」

 ラッツは半ば感涙していた。


「ふっふーん! 軍神様の監督のおかげかなぁ♡」

 リリアが勝ち誇った顔で両腕を広げる。


「……何もしてなかっただろ」

 ガルドの冷静なツッコミがすかさず入る。


「はぁ!? 見守るっていう最高に重要な役割を担ってたんだよ!? あたしが余計な口出ししなかったから、ガルドが勇者っぽくキマったの! 感謝しなさーい!」


「……はいはい」

 ガルドは疲れきった顔で手を振った。


 工房の扉を開けると、カイが炉の火を調整していた。

「おう、やっと帰ってきたか……って、お前らボロボロだな。で、戦果は?」


 ガルドは黙って腰の袋を開き、中から黒曜竜の牙を取り出した。

 漆黒の光を帯びた巨大な牙が、炉の炎を受けて赤く揺らめく。


「……っ!!!」

 カイの目が、これまでに見たことのないほど大きく見開かれた。

「こ、これは……黒曜竜の牙……っ!? ほんとに手に入れてきやがったのか!」


 牙を両手で抱え、カイは興奮のあまり膝をついた。

「すげぇ……! これなら最強の刀身が打てる! ああ、ずっと夢見てた素材だ……!」


「やったじゃん兄貴!」

 ラッツが嬉しそうに肩を叩く。


 モルティナは静かに頷いた。

「この素材で……新しい盾も作れる?」


「ああ! アダマンタイトの盾は予定通り完成する。その上で――黒曜竜の牙を核にすれば、ガルドの剣は本物の“勇者の剣”になる!」


 カイは振り返り、炎を映した瞳でまっすぐガルドを見据えた。

「兄ちゃん、いいか。剣ってのはただの鉄の塊じゃねぇ。持ち主の意思と、鍛冶師の魂を重ねた時、初めて“命を託せる武器”になるんだ」


 その言葉に、工房の空気が一瞬で熱を帯びる。


「……でたでた。職人の熱い語り」

 リリアが耳をほじりながら笑った。

「でもさー、剣なんて結局“攻撃力+いくつ”でしょ? 派手に光ってたらなんでもいいじゃん?」


「なっ……!」

 カイの額に青筋が浮かぶ。

「嬢ちゃん、今すぐ外に出ろ! 俺の目の前でそんな暴言を吐くやつは、金床でしばいてやりてぇ!」


「ひぃ! 怖い怖い怖い! 軍神様はガルドの剣をかっこよくしてほしいってだけだもん!」

 リリアはガルドの背中に隠れた。


 ガルドは苦笑しながら首を振る。

「……見た目も、魂も、全部任せる。カイ、お前の最高傑作を頼む」


 その言葉に、カイは深く頷いた。

「おうとも! これ以上の素材と依頼主はねぇ。最高の一振りを打ってやる!」


 工房の炉がさらに燃え上がる。

 炎の奥に、未来の剣の輝きが見えるようだった。


 モルティナは盾を磨きながら、心からの安堵を浮かべる。

 ラッツは大漁の魚を思い出しつつ「また宴だな!」と笑った。

 リリアはというと――炉に映った自分の顔を見ながら、にやりと笑った。


「ま、勇者様がちゃんと勇者っぽくなったから、軍神様も安心して茶化せるわけよ♡」


 こうして勇者たちの物語は、再び大きな節目を迎えようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ