第3章 ep.12 火山奥への進軍
火山の道は次第に険しさを増していた。
空気は重く、熱で視界は揺らめく。時折、地面の割れ目から真っ赤な溶岩が吹き出し、辺りを赤く照らす。
「……暑い……死ぬ……」
ラッツがだらだら汗を流しながら呻いた。
「気を抜くな」
ガルドは険しい表情で前を歩く。
「奥へ行けば行くほど、魔物の数も強さも増すはずだ」
その予感はすぐに的中した。
ごう、と地響きが走る。
次の瞬間、両側の岩場から赤熱したトカゲが這い出してきた。
一匹、二匹……十、二十――いや、それ以上!
「ひぃぃぃ! どんだけ湧いてくるんすかぁぁぁ!」
ラッツが絶叫する。
「数が多すぎる!」
モルティナが盾を構え、汗を滴らせながら叫んだ。
「全員、囲まれた……!」
トカゲの群れが火炎を吐き、岩場に次々と爆発が起きる。
ガルドは必死に剣を振るい、ラッツは影走りで一体を仕留める。
だが焼け石に水。数は減るどころか、さらに増えていく。
「くそっ、このままじゃ……!」
ガルドが歯を食いしばる。
その背後で、リリアがにやりと笑った。
「ふふっ、待ってました~♡」
腰の袋から取り出したのは――見覚えのある銀色の円筒。
「まさか、それは……!」
ラッツが青ざめる。
「例の超強力爆弾(投)!? やめろ、俺らも巻き込まれるやつっすよ!」
「大丈夫大丈夫♡ 使いどころってもんがあるの!」
リリアは軽やかにステップを踏みながら、爆弾を高く掲げた。
次の瞬間――
「山ごと吹っ飛べぇぇぇぇ!」
彼女は笑顔で爆弾を投げ込んだ。
――轟ッ!!
世界が赤に染まった。
爆炎が連鎖し、岩壁が音を立てて崩れ落ちる。
炎と瓦礫が群れごとトカゲを押し潰し、絶叫が響き渡る。
揺れは収まらず、山肌全体が崩落していった。
地響きに飲まれ、一帯は一瞬にして静寂へと変わった。
「……」
モルティナは盾を握りしめたまま呆然と立ち尽くす。
「……あっけな」
ガルドは口を開けたまま言葉を失っていた。
「ちょっと! 崩落で俺らまで死ぬかと思ったじゃないっすか!」
ラッツが涙目で叫ぶ。
しかし当のリリアは――
「大量経験値ひゃっほーーーっ!!!」
両手を天に掲げて大はしゃぎしていた。
「お前ってやつは……!」
ガルドは額を押さえて深いため息をつく。
山は半分ほど崩れ落ち、炎に包まれた谷底には、無数の魔石とトカゲの残骸が転がっていた。
討伐数は計り知れない。
「これで一気にレベル上がったっすね……」
ラッツは呆れながらもウィンドウを確認する。
「スキルポイントまでごっそり増えてる……」
「ほら、言ったでしょ? 軍神様の神采配♡」
リリアは胸を張って笑った。
「……もう何も言わん」
ガルドは肩を落とし、崩れた山肌を見上げた。
「だが、確かに道は開けた。黒曜竜の牙は、この先にある」
炎の向こうから、再び地を揺るがすような咆哮が響いた。
竜の巣が、すぐそこに迫っていた。




