第3章 ep.11:火山前哨戦(溶岩トカゲ戦)
割れ目から這い出したのは、体表が真っ赤に焼けた蜥蜴の魔物だった。
全身を覆うのは石のように硬質化した鱗。口からは小さな火炎を漏らし、瞳はぎらぎらと燃えている。
「な、なんすかこれ……すでにボス戦級の雰囲気なんすけど!」
ラッツが叫ぶ。
「ただの溶岩トカゲだ」
カイから聞いた知識を思い出しながら、ガルドは低く呟く。
「だが油断するな。火山の魔物は一匹でも死ぬほど厄介だ」
次の瞬間、トカゲが咆哮を上げて跳躍した。
口から火の玉を吐き出し、一直線にモルティナへと襲いかかる。
「……っ!」
モルティナは盾を突き出した。
火球が炸裂し、炎の衝撃波が彼女を吹き飛ばす。
「モルティナ!」
ガルドが駆け寄るが、モルティナは必死に立ち上がった。
「大丈夫……でも、威力が強い」
「ひぃっ、盾ごと焦げてるっすよ!」
ラッツが目を丸くした。
「おもしろーい!」
一方、リリアは炎を背に浴びながら楽しげに笑っていた。
「まるでライブの特効みたい!」
「遊んでる場合か!」
ガルドが怒鳴る。
トカゲは再び口を開き、火炎を吐き出す。
ラッツが地を蹴り、影のように背後へ回り込んだ。
「影走りィィィ!」
新スキルを発動し、蜥蜴の尾に短剣を突き立てる。
ジュッと煙が立ち、トカゲが苦痛の声を上げた。
「やった! 効いてる!」
「今だ、ガルド!」
モルティナが盾でトカゲの動きを受け止める。
火花が散り、衝撃が走る。
ガルドは深く踏み込み、剣を振り下ろした。
しかし――刃は鱗に阻まれ、表面を削るだけだった。
「硬ぇ……!」
火花とともに腕が痺れる。
「なら――私が隙を作る!」
リリアが両手を広げ、詠唱を始めた。
「燃えろ燃えろ燃えろ! 炎の大爆発~♡」
「なに勝手に魔法詠唱してんだ!?」
ガルドが振り返る間に、リリアの掌から小さな火花が散った。
……爆発は起きなかった。
「ちょっと!? なんで出ないの!?」
「そんなスキルお前にはねぇ!」
ラッツが悲鳴のように突っ込む。
だがその一瞬、トカゲの注意はリリアに逸れていた。
「今だ!」
ガルドは跳躍し、トカゲの口内へ剣を突き立てた。
炎が漏れ、熱で皮膚が焼ける。それでも歯を食いしばり、一気に押し込む。
ごぎゃっと嫌な音を立て、刃が頭蓋を貫いた。
次の瞬間、トカゲは断末魔を上げて地面に崩れ落ちた。
「……っはぁ……」
ガルドは息を切らし、剣を引き抜いた。
焼け焦げた臭いが辺りに漂い、地面の割れ目からは再び熱風が吹き上がる。
「……強い。雑魚でこれなら……奥の竜はどうなるの?」
モルティナが不安そうに呟いた。
「でも、連携できれば勝てる!」
ラッツが拳を突き上げる。
「俺たち、ちょっとずつ強くなってるっす!」
「……そうだな」
ガルドは剣を握り直し、前を見据えた。
「この火山を越えて、必ず黒曜竜の牙を手に入れる」
「ま、軍神様にかかれば竜退治も余裕よ♡」
リリアがにやにやと笑う。
しかし次の瞬間、山全体がぐらりと揺れた。
火口から吹き上がる黒煙。
奥から響く、地を震わせる咆哮。
「……聞こえたか?」
ガルドの顔が強張る。
火山の主が、彼らの存在に気づいたかのように。




