第3章 ep.7 軍神様の乱入
「もう! ほんとに置いてくなんて信じらんない!」
甲高い声が戦場に響いた。
振り返ると、岩場の向こうからリリアが走ってくる。
「一人でここまで来るの、こわかったんだから! ええーんえーん! ……あ、みんなぁぁ! 怖かったよぉ~!」
大げさに手を振り、涙声でわめきながら。
だが次の瞬間、巨獣を見て声色が変わった。
「ちょっと……アンタたち、なんでボロボロになってんのよ。え? ミスリルコータスごときに……」
目を細め、甲羅をじっと見る。
「……ってこれ、アダマンタイトコータスじゃない! ラッキー!」
「ラッキーじゃねぇ!」
ガルドが怒鳴る。
「うるさい! 倒すには裏技があるのよ!」
リリアはにやりと笑い、腰の袋から銀色の円筒を取り出した。
「なっ、それは……!」
ラッツが蒼白になる。
「超強力爆弾(投)! 0.5秒で爆発するやつ! 使用者も巻き込まれるやつぅぅぅ!」
「そう♡」
リリアは軽くウインクして、コータスへ向けて高々と掲げた。
巨獣が咆哮し、炎を吐こうと大きく口を開く。
その瞬間――リリアは爆弾を放った。
「モルティナぁ!」
ガルドの叫びと同時に、モルティナは盾を突き出し、全身で仲間を庇った。
――轟ッ!!
閃光と衝撃が世界を飲み込む。
灼熱の爆炎が岩場を吹き飛ばし、耳をつんざく轟音が空気を裂いた。
「ぐっ……!」
モルティナの腕が痺れ、盾の表面が赤く焼け爛れる。
それでも彼女は立っていた。盾を構え、仲間を守り抜いていた。
爆炎が収まり、砂煙が晴れる。
「……ひっくり返ってる!」
ラッツが叫ぶ。
アダマンタイトコータスの巨体は爆風にあおられ、仰向けに転がっていた。
甲羅を支えに戻ろうともがくが、その重さが仇となり、立ち上がれない。
「今しかねぇ!」
ガルドが剣を握り直し、全身の力を振り絞る。
深く息を吸い込む。
踏み込みと同時に、刃が疾風のごとく走る。
光の残滓が宙に軌跡を刻み、幾重にも折り重なって巨大な紋様を描く。
それは刃が放った“未来の斬撃”。
一閃、また一閃。
数え切れぬ残光が一点に収束し、最後の閃光へと凝縮される。
「二の型――《残光連断・一心》ッ!!」
雷鳴のごとき轟音。
渾身の一撃が、甲羅のない柔腹を貫いた。
アダマンタイトコータスの巨体が痙攣し、赤い瞳が光を失う。
炎が散り散りに吹き出し、巨体は沈黙した。
ガルドは剣を引き抜き、砂浜に片膝をついた。
モルティナは燃え焦げた盾を抱きしめ、ほっと息を吐く。
ラッツは尻もちをついたまま泣き笑いしていた。
そしてリリアは……腰に手を当て、どや顔で仁王立ちしていた。
「ふふん! だから言ったでしょ? 裏技があるって!」
「……お前なぁ!」
三人の怒声が重なり、砂浜に新たな爆発音が響いた。




