表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/74

第2章 ep.5 街の影とチンピラ勇者

 大都市グラン=ヴェルムの街路は、夜でも賑わいが絶えない。

 宿に戻る道すがら、リリアはまだ昨日の勝利を自慢し続けていた。


「ほら〜! 私がいたから大儲けできたでしょ? もう一回カジノ行っちゃう?」


「いい加減にしろ」

 ガルドは短く返す。視線は鋭く、しかし心中には小さなざらつきが残っていた。

(……確かにステータスは上がった。レベルも伸びた。だが……これでいいのか? 本当にこれで魔王と戦えるのか……)


「ねぇ勇者さま〜? 顔怖いよ。もっと笑顔笑顔!」

 リリアがわざと口角を引っ張ってみせる。

「そうだそうだ〜! 姉御の笑顔で和ませなきゃだめだぞ〜!」

 ラッツも媚びを売り、手を合わせて拝むようにぴょこぴょこ飛び跳ねる。


「……てめぇらの顔が一番ストレスなんだよ」

 ガルドはぼそっと吐き捨てた。


 そのときだった。路地の暗がりから、黒服の男たちがぬるりと現れる。

 どこかカジノの匂いがする連中。無言で一行を取り囲んだ。


「なぁ、昨日の美少女……いや、軍神様? 派手に勝ったらしいじゃねぇか」

「目立つのはよくねぇぜ。カジノに逆らうとどうなるか、教えてやらねぇと」


 リリアは肩をすくめ、笑顔でごまかす。

「いやぁ〜人気者はつらいですねぇ? 俺、ファン対応とか苦手なんですよぉ」


「姉御ぉ! や、やっばいよ逃げよ逃げよぉ!」

 ラッツはすぐに後ろへ下がり、汗をだらだら流す。


 だがその横で、ガルドはゆっくり前に出た。

 目の奥で光るのは、久しく押さえ込んでいた炎。


「……最近は我慢してたけどよ」

 彼は指を鳴らし、黒服たちを睨みつける。

「溜まってんだよ。……ちょうどいい、少し発散させてもらう」


 次の瞬間、ガルドの拳が閃いた。

 黒服の一人が呻き声を上げ、地面に沈む。

 周りの男たちが「なっ……!」とたじろぐ間に、ガルドはすでに次の相手へ踏み込んでいた。


 ラッツはギルドで絡まてたころを思い出し絶叫する。

「ひぃぃぃ! や、やめて勇者さまぁ!」

 リリアは後ずさりし、両手をぶんぶん振り回す。

「もうー! お母さんこんな子に育てた覚えはありません! 今すぐ謝ってー!」


「そうだそうだぁ! お父さんだってお前がこんなんなるとは思わなかったぁ!」

 ラッツも涙目で叫びながら必死に止めようとする。


 だがガルドは鼻で笑い、冷ややかに呟いた。

「……ああ、雑魚より先にお前らから片づけるか」


「す、すみませんでしたーー!」

 二人は声を揃えて土下座した。


 やがて黒服たちは、全員転がされたまま呻き声をあげていた。

 ガルドは袖を払ってため息を吐く。

「……ちょっとは気が晴れた」


 リリアとラッツは顔を引きつらせたまま同時に言った。

「こいつ絶対ヤンキーだ……」


 一方その頃、カジノの奥。

 黒服の一人が、這うようにして支配人の前にひれ伏していた。


「し、支配人……あの一行、我々では手に負えません……」


「あらぁ〜ん♡」

 支配人は大きな体をゆるりと揺らし、宝石の散りばめられた扇子をぱたりと閉じた。

「やっぱり手強いのねぇ。ますます遊びたくなっちゃうじゃないのぉ♡」


 筋骨隆々の巨体に、艶やかな笑み。

「しょうがないわねぇ……次は“私”が直接サービスしてあ・げ・る♡」


 闇に溶けるような声が、街の底へと響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ