第2章 ep.4 裏技レベリング開始!?
カジノで大勝ちした翌日。
リリアは街の商店街に乗り込み、山のように積まれた毒瓶とポーションの前で、全身を震わせていた。
「はぁぁ……見て、この光景。金貨の山にポーションの海、そして毒の滝!
もう……死んでもいい……!」
「本当に殺すぞ?」
ガルドが冷たい目で吐き捨てる。
「ひぃ〜! 勇者様! 怒らないでぇ〜!」
ラッツがすかさずリリアの腰にすがりついた。
「ぐへへぇ、リリアの姉御ぉ〜、喉とかかわいてませんか? ほらほらポーション、可愛い可愛いラッツが代わりに口移しで――」
「死ねぇぇぇ!」
ガルドの手刀が飛び、ラッツは床に沈んだ。
「……ふふ、忠義の部下を持つといい気分だねぇ」
リリアはうっとりとチップの山を撫でながら微笑んだ。
「その“忠義”は命乞いだろ」
ガルドの胃はすでに痛かった。
郊外の森。
裏技レベリングの舞台は、薄暗い洞窟の奥に棲むメタルモンスターだった。
鱗のように硬い銀色の皮膚を持ち、普通の攻撃はほとんど通らない。だが――。
「準備はいい? 毒でじわじわ削って、最後にガルドがトドメ!」
リリアは満面の笑みで号令をかける。
「軍神リリア様の知略の前に、どんなモンスターもひれ伏すのだー!」
「知略……というより姑息……」
ガルドが小声で呟いた時、ラッツはせっせと毒罠を仕掛けていた。
「……俺、盗人ジョブだからこういうの得意なんだよなぁ……。
はは……でも“盗人”って名前がもう泣けてくる……」
「大丈夫、姉御が誇り高く『泥棒!』って叫んでやるから!」
「やめてええええ!」
どたばたしつつも罠は完成。
そこへ銀色のモンスターがひょこひょこと姿を現した。
「来たっ!」
リリアが手を振り下ろす。
「作戦開始ぃ!」
毒の煙に包まれたメタルモンスターが、嫌がるようにのたうつ。
ラッツが投げ縄で進路を縛り、リリアが「いまだガルド!」と念話を飛ばす。
ガルドの剣が白く輝いた。
「……ヴァレリアン流剣術――一の型!」
銀の身体を貫き、モンスターが絶叫をあげて倒れ伏す。
瞬間、ガルドの身体に力が流れ込むのを全員が感じた。
「よしっ、経験値入った! レベルアップ成功!」
リリアはガッツポーズを決める。
「これだよ、これ! 効率こそ正義!」
「……正義ってなんだろうな」
ガルドは剣を収め、深く息をついた。
「ぼ、僕も……ちょっと経験値増えた……! わぁぁ、やっと役に立てたんだぁ!」
ラッツは涙目で両手を振り回す。
だがその頃、カジノの奥。
重厚な扉の向こう、支配人の間では低く笑う声が響いていた。
「ふふ……あらやだ♡ ほんとに“裏技レベリング”なんてやってるじゃないのぉ」
筋骨隆々の巨体に、金糸のフリル。扇子を口元に当てた支配人は、艶やかに目を細めた。
「勝ちすぎて、金を使いすぎて……目立ちすぎ♡
いやぁねぇ、そんな派手な子。放っておけないわ」
隣に控える部下が膝をつく。
「ご命令は?」
扇子をぱたりと閉じる音が、いやに艶やかに響いた。
「簡単よぉ。監視しなさい。……そして、次は“私のテーブル”に招待してあ・げ・る♡」
闇の笑い声が、カジノ街の底でこだました。




