第十話:クリスマス
都内某所。昼未明。 人の気配の無い飲み屋街の路地。
山田と大場が立ち話をしている。この二人だと営業マンが軽く休憩をしている様に見えなくもない。
山田が鞄から厚みのあるA4サイズの封筒を取り出して大場に手渡した。
「これが世界が欲しがっている情報、”記憶操作された者のリスト”です。
A国にはずいぶん待たせてしまいましたが……」
「聞いている。
ところで、どうやって、記憶の操作をしたんだ? 知ってるか?」
大場は、受け取りながら質問で返した。
「あれは、空港の入国検査のゲートに装置を取り付けたのです。
そこの検査員をあらかじめ記憶操作しておけば、ターゲットを選択的に実行できます」
「装置?」
大場は、気になったのかさらに問い返した。
「上半身くらいの範囲を量子的に一括スキャンして、そのデータにある脳の特定部分を博士の性格データに上書きして戻すってことらしいです。
そのスキャンと書き込みはそれぞれ瞬間だそうで、データの加工にだけほんのちょっと時間がかかるとか。
あ、わたしも、そういう漠然とした話しか知りません」
「復活コーポレーションで機械を見せてもらったが、結構デカかったし、時間も十分くらい掛かるって聞いた様な。
時間は、それでもそんなに短いものなのかと関心した覚えがある」
大場と立花は、第二世代ではあるが、その恐ろしさを聞いていたのだ。
「会社にあるのは第二世代で、空港のは第三世代、といっても二と三の間には機械のサイズも含めて遥かな差があります。
提供するデータにはこの第三世代の情報も含まれます。現物は研究所といっしょに消失しましたので再現できるかは不明ですが。
まぁ、あの天才博士が三桁人で研究したのなら、技術革新の時間軸がおかしくなるのもうなづけるのです」
「なるほどな。
事実なら……事実ってことだろうが、とんでもないな」
「そんなものがあるのに、なぜ、もっと待たなかったと思います?」
「あいつの寿命のため、
もしくは、あのCMが流れたからじゃないのか?」
あいつとは黒木タカヤのことで、一連の事情は既に警察に説明されている。
「A国との約束ですよ。
だから準備もできたんです。
あのCMを流して、社長殺害、そのあたりも全てシナリオです」
「そんなのありなかよ……」
「死んだのは、多くの黒木博士のクローンと悪人のみですし、現状、そこは公的に文句を言う必要もない。
ただ、それでも海外の公人の記憶操作はしてるのですが、それは逆に性能の証明でもあります。
そして、黒木博士の本当のメッセージを伝えるためとも言えます」
「本当のメッセージ?
あ、続けてくれ」
「そうですね。 我々は簡単に言うと三つのチームに分けられます。我々と言っても、黒木博士のクローン達にわたしが混ざってるわけですが……。
一つ目は、博士のチームで、研究などを行ったりする者達です。
二つ目は、博士のシナリオに従うチームです。 黒木タカヤをヒーローにするために必要な事をします。ここにはシナリオ上、意図的な裏切り者も居ます。
三つ目は、それらに含まれてはいますが裏切者チームです。 チームに従いつつ、最終的には復活サービスの終焉を目指す。
黒木博士の自作自演の世界征服劇です。 最後に悪として滅ぶのも含めて。
皆、自我はありますので、例え本人の意識を持っていても、製造時の誤差が生じるからか、その数の多さからなのか、正しさを求めるものが出てきます。
その正しさを求めて裏切った黒木博士のメッセージです」
「そいつがA国と裏で動いていたってことか」
「そうです。
科学は進歩します。 時間の経過とともにある意味なんでも造っていくでしょう。
それでも、造ってはいけないものがある、やってはいけないことがある。
自分が、狂気の世界で造ってしまったものを、どうやって押さえるか、もう、世界に訴えるしか無いと考えました。
それを気付かせるための行動と、この情報提供です。
自分に造れたこの技術は、今消しさっても、いずれ誰かが造るでしょう。
その前に、考えて欲しいと」
「そうだな、核兵器はそれだな。
あと、俺は、スマホ、ドローン、SNS、生成AIなんてのも、もっとそういうのを考えて欲しかったと思うことがあるよ。
じゃ、通常兵器は?とか、車は?とか、飛行機は?って議論になるんだろうが、”造ってはいけないものがある、やってはいけないことがある”ってのに同感だよ」
「そういう物は、もしかすると人類の寿命を縮める可能性を秘めているかもしれませんね。
さて、話を戻しましょう。
こちらが公安様の欲しがってるものです。
もちろん第二世代の方ですが」
山田は封筒の中身の説明をしつつさらに資料の束を渡した。
「なんでこれまで渡す?」
資料を受け取った大場が少し疑問な顔つきで聞き返す。
資料の表紙には、あからさまに”生者からの記憶抽出技術について”と書いてあるのだ。
「これが無いと我々への不信を晴らす方法が無いからですよ。
確認のために殺されて復活とかされたくないですからね。
だから、信じてもらうためです。
安心してください、それは全文ではありませんし、重要な部分は印刷による黒塗りです。
全文は同封した端子を破壊したSSDに入れてあります。
中のデータは、コピーガードと一週間後に開ける様な暗号化をされていますので、早めに確実に手放してくださいね」
「どうしても疑うならこれを使えと……。
いや、どちらかと言うとリストの人物の方の確認か……。
そして、これを俺たちは見てはいけない……と」
「いかがです?
そうそう、さらにこちらを。 これはあなたのチームが欲しいものです。 既に十分なものを渡しましたから、これは要らないかもしれませんが」
そう言いながら、小さ目の蓋のある試験管を手渡した。
「これは?」
「焼失した研究所に落ちていた髪の毛です。
襟裳岬で拾得したヘルメットから採取した髪の毛と遺伝子が一致するはずです」
中を見ると確かに髪の毛が一本入っている。
「なんでヘルメットの事を知っている?
いや、もうそういうことなのは理解できる。
本当に研究所で入手したかも……まぁいい。
犯人が焼死しましたってか、まぁ、事件のケリはついてる、これで建前になるか。
まさに何人居るのかさえわからないというのが事実、しかも身体だけが対象でも無い、とんでもない事件だ。
今後、真面目に法律にして規制しないと簡単に完全犯罪が成立しちまう。
だからいいだろう、乗ってやる。 俺はあんたとの取り引きに応じるよ。
これだけの情報を提示されたんだ、断れるわけも無いがな。
確認だが、何かあんたらの保身の為に残してるのもあるのか?」
「ご心配していただき、ありがとうございます。
念のため、リストの方々の人格情報などのバックアップを格納したサーバの情報は開示しません。
データ量が膨大過ぎるのもありますが、たぶん必須の場合もあるはずです。
ですので、後日、全ての約束が果たされた際に引き渡す予定です」
「なるほどな。
いや、こう返すのも変だが、俺を信じてくれてありがとう」
「お互い様ですよ。
では、あらためて、よろしくお願いいたします」
山田は、お辞儀してから、その場を後にした。
「がんばれよ」
大場は、どことなく弱弱しくみえるおじさんの背に向けて声援を送った。普通の人間にとって対する者達が強大であることは間違い無いのだ。
そしてすぐに、
「追跡は不要だ。
すぐに、公安に連絡を付けてくれ」
大場は無線機があるのか襟もとに口を寄せて指示を出した。
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早瀬は、駅前、コインロッカーの傍に立っていた。以前にタカヤと強引に待ち合わせしたした際に利用したコインロッカーだ。
二時間ほど経ったころ、近づいてくる人の気配にそちらに顔を向けた。
「ずっと立ってるけど、もしかして彼氏にすっぽかされたの?」
知らない男だった。
声から違うとわかっていても、少しだけ笑顔だった表情は、「え?」という疑問符を口にして、あからさまにがっかりした表情に変わった。
「暇なら、一緒に飲まない?」
知らない男は、図星だと思い込んだのか話を強引に進めようとした。
「君、ちょっと良いかな?」
別な男が、知らない男の後ろからその肩をちょんちょんとつついてそう言う、警察手帳をもう片方の手に持った立花だった。
「え?警察? お、俺何もしてないよ? な……」
知らない男は、少し引き気味に無罪を主張した。間違っていないが。
「立花さん」
早瀬は、名前を口にした。
「待ち人って、こいつか?
じゃ、夜に一人は危険だから、気を付けろよ」
知らない男は、説教の様な捨て台詞を残して去っていった。
「何様よ」
早瀬は、少しべーと舌を出しながら吐き捨てた。
「来ませんね」
立花は、特に何も無かった様に口にした。
「来ないのは分かってるけど、ただ待ってるだけだから」
「ここに居ても?」
「一メートルくらい離れてて」
「お優しい。 では、そうします。
まぁ、虫よけとでも思ってください。季節感は無視ですが……。
ん? ……いや、やはり離れますね」
立花は、早瀬の返事も待たずに離れて行った。
「え? ちょっと?
あ………」
歩き出す立花の方に顔を向けたとき、すれ違いで別な男が歩いてきた。
そして、早瀬に問いかける。
「どうしてここに居るんですか?」
タカヤだ。ヘルメットはいつものでは無く予備の方、黒い強化スーツにはダメージが見える。
連絡した時間を過ぎているが、それは伝わってなさそうな言い様だ。
「信じたかったから、わたしの初恋を……。
わたしも聞きます。 どうして来てくれたのです?」
「もし、あなたがここに居たら、それは、僕のせいだから……」
「そうよ。 あなたのせい」
早瀬は、そう答えて胸に飛び込もうとした。
タカヤはそれを制止した。
「では、さようならです。
警察に行く前に、立ち寄って見ただけですから。
ちゃんと帰ってくださいね」
「待ってよ、せっかく逢えたのに帰るわけないでしょ」
「僕は、このまま自首しますので。
では」
タカヤは、踵を返すと、離れて立っている立花の方に向かって歩き出した。
「なんでよ」
早瀬は、慌ててタカヤの後を追う。
様子に気付いたからだろうか、立花は速足で近づいてきた。
そしてタカヤの歩みを制止する様に正面に立った。
「あの、刑事さんですよね?」
その立花にタカヤが先に話しかけた。
「よく聞いてくださいね」
立花は、問いへの返事は無視するが、刑事か?については答える必要もないだろう。
「はい」
「あなたの考えている件ですが、すでに司法取引が完了しています。
詳しくは、あなた本人にも話せませんが……無罪どころか全て無かったことになります」
立花はタカヤの問いには答えず、その必要性について答えた。
「え?」
「それでも罪を償わないと納得できないとか思うのなら、まずは体を治して、普通に生きる事で世の中に貢献してください。
偉そうですいません。
それと、あの時は我々を助けてくれてありがとうございました。
ロボットゴリラの時です。
今日は、それを言いたくて便乗して待たせてもらいました」
立花は頭を下げた。
「あれは、僕の仕事でしたから、でもこちらこそありがとう、お役に立てたのなら嬉しく思います。
そして、アドバイスをありがとうございます」
話が逸れている間に早瀬が追いつく。
「待ってよ」
タカヤの手を取って振り向かせる。
「あの……」
タカヤは、立花の言葉から、決意を持って固めてきていた意思の行き場を失ったのだろう、少し呆然としている。
「あの?」
早瀬は、目を合わせて聞く。
「では、僕は行きますね」
立花が、言葉をかけながらタカヤの背を押した。
タカヤはそのまま早瀬に傾き、早瀬はそれを抱きとめた。
「わたしの……わたしの話も聞いて」
「はい、あなたが好きです」
「あ、はい、わたしも。
じゃなくって、もう、あなたって、どうして思考まで人間離れしてるのよ。しかも斜め方向に」
「え?
でも、これっきりです」
「そうじゃなくて、あなたは死なないのよ。
わたしでは詳しく説明できないけど、そういう処置ができるって。
だから、わたしの事はどうでもいいから、あなたがちゃんと戻ってください。
わたしは、無線が繋がらないって言うから、それを伝える為にここで待ってたのよ。 いちおうスマホにもメッセージ入れたけど既読にもならないし」
「あの」
「はい」
「ありがとうございます。
では、あらためて言わせてください。
僕は……あなたが好きです」
「え、ええと、それはわかったわよ。
わたしなんか、もう、とっくに大好きだから、今は戻ってちょうだい」
「あなたも……」
タカヤは、早瀬のほほに手を当てた。
「だから、わかったから、早く行ってください」
「わかりました」
「あ、やっぱり」
タカヤの頭を引っ張って下げると、背伸びして口づけた。
「……行ってきます」
離れてから、少しの間目を合わせて、そういうと車の方に歩き出した。
「また逢いに行くからね……ん?」
早瀬は、タカヤの背に向けて手を振っていた。
ところが、タカヤが戻って来た。
「あなたが好きです。 由美さん」
「あ、今なの? 名前呼び……。
待って、今の聞かなかったことにするから、今度逢った時にあらためて言いなさい。
これが最後とか考えたでしょ?」
「ははは、そうですね。
では、また」
タカヤは、爽やかな笑顔を見せてから止めたバイクの場所に向けてタカヤは歩きだした。 引きずる体も少し軽やかに見えた。
黒木タカヤは、能力を強化するための遺伝子操作が施されている。それが影響し寿命の短縮という状態にあった。
黒木博士のクローン達は、その人数の多くをタカヤを延命するための技術開発にも充てていた。
それがぎりぎりで完成できていたのだ。
まだ、復活コーポレーション病院において、かなりの大きさの装置が複数必要だが理論は確定したのだ。
さらに、この研究成果は、近い将来、臓器提供を必要とする者の治療を遺伝子レベルで行う技術へと発展し、復活コーポレーション社の次のサービスとなるのである。
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***** 当子side ****/
今日は、十二月二十五日、
そして、クリスマス、
そして、納品の日。 納品というのは語弊を感じるけど、山田さんの立場的には、そういうことになるらしいので、念のため。
”ピンポーン”
来訪者を知らせる音だ。
夕方の予定のはずだけど、
山田さん、サービス大好きなのは分かるけど、こんなに早くしなくても……焦るじゃ無いですか。
準備はとっくに済んでるから問題無いんですけどね。
宅配便だった。
わたし宛だ。
ものすごく軽い。
差出人は、???、復活コーポレーション?
そして、なんで宅配便? 今日、手渡しの方が確実な気がする。
そう思いながら、雑にテープを引っぺがして開ける。
緩衝材か隙間埋めとして入れてある丸めた新聞紙をがさごそと取り出す。
中には、茶封筒が一封入っていた。
それと、白い折り鶴。 この白は、折り紙では無くコピー用紙かな。
「何?」
不審過ぎるけど、とにかく茶封筒を開けて見る。
入っていたコピー用紙に手書きで字が書いてある、見覚えのある字だ。
これは彼からの手紙なんだ。
焦る様に読んでみる。
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当子さまへ
今日まで、ありがとう。
僕への手紙を渡して、とお願いしたとき、
君も手紙が欲しそうだったので書いてみることにしました。
個人的アピールはやっぱりして置きたかったからかもしれない。
覚えていて欲しいから。
君に出会えてよかった。
本人では無いけど、僕にはその記憶がある事が嬉しかった。
君の選ぶ僕は、きっと君を幸せにするだろう。
だから、その一人に全力してください。
がんばって。
君たちの未来に幸あれ
君を好きになった者より
追伸
折り鶴は、クリスマスプレゼントだよ。 なんてね。
山田さんに日時指定の宅配便でお願いしたので、たぶん、今日はクリスマス。
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手紙なんて、はじめてもらった……作文苦手って言ってたのに……偽物め。
それでも、いろいろ思い出して涙は出て来る。
そして、吹き出す。 この手紙、ネタになるよね。
ピンポーン
今度こそ……そう思って玄関の扉を開けた。それでも、やっぱり早いんだけどね。
山田さんが立っている。 その横に彼、五人目の彼が立っている。
「こんにちは」
山田さんが挨拶をくれた。
「いらっしゃい、ちょっと待っててくださいね」
わたしも答えたけど、視線は彼の方に向いていた。
「はい、ごゆっくり」
わたしの視線など気にもしない山田さん。
「じゃ、お母さん、行ってくるね」
少しだけ涙が出てきた。
「はい、がんばりなさい。 和希くん、娘をよろしくお願いします」
お母さんは、普通の朝のいってらっしゃいの時と同じ感じだ。 今生の別れでもないし、泣かないか。
「はい、全力を尽くします」
五人目の彼が力強く答える。
「山田さんも、いろいろお世話になりました」
お母さんも、もう何度も打ち合わせで会ってるので、そんな感じですよね。
「こちらこそ、お嬢様には、ご迷惑をおかけしてばかりで恐縮でございます」
山田さんも定型文の様に会話をこなす。
外には、大きめのワゴン車が止まっていた。
彼が、荷物を後部の荷台に運んでくれた。
わたしは、勝手に開いたスライドドアから中に飛び込む。
「当子」
の声が同時に四つ聞こえた。
---- 一年後 ----
わたしは、瀬戸内海の孤島に居る。
和希一号から五号と一緒に……。
無人島を買って、そこに家とか畑とかいろいろ作った。
五人も若い男手があるとなんでもできた。
今は、四号が近くの港で漁師をして稼いでくれています。自らに課す罰ということらしい。あの日の事はみんな知っていて不問とされたけど、本人の気持ちだそうです。
他の四人もいろいろ勉強して、ほぼ何かしらの専門家……の見習いを自負する。
そして、彼らは、順番に本土にわたって献血することを欠かさない。
自分たちの運命では、誰かの命を救えていたかもしれない、と、ずっと気にしてるのです。
ちなみに、”号”呼びは、彼らの決めたことで五人居るし戦隊的な雰囲気を出してるらしい。 私的にはちょっと恥ずかしいんだけど。
実は、山田さんに希望を聞かれた時に、
五人全員を選びますと答えたのだ。
山田さんも、本心として、その選択は、とても嬉しかったらしいのです。
記憶を勝手に操作するほどの人ですから、協力者も居たようですし、頑張ってくれました。
人の命を本当に大事に思ってる人だったのです。
選択されなかった者は生きられないという事実が許せなかったのです。
その後も、彼らの人権を得るために、わたしと一緒に訴訟を起こしてくれています。
そして、クローン廃止についても動いている様でした。
彼を復活させていまったわたしにはその権利は無いのかもしれませんが……
これまでに犠牲になった命に報いるために。
ちなみに、今日までには、山田さんと何度か話す機会があり、その際にいろいろ聞いた話によると…………
国が他国より先んじたい理由が、少しでも多くの特許を押さえるためでした。
他国では、軍事転用されるでしょう。 すごく強い人間をたくさん作れるから……これは、一般人が戦争するよりいいと言う考えかもしれないですが?
重労働なんかも全部やらせる?
影武者とかも?
とにかく、人間なのに人権の無い扱いが予想される。
法律とかどうなるのかも検討が付かない。
だから、特許使用料とかを増やしたり条件付けたりで少しでも妨害したいらしい。
山田さんは、そんな国でなら、今回の件、訴訟に勝てるんじゃないかって言ってました。
事例の一つにするために裏で誰かが動いてくれるんじゃなかって。
その誰かについてはヒントも教えてもらえませんでしたけど。
…………と言っても、わたしの頭では、わけわからないのですけどね。そもそも何かがおかしいと感じるし。
さて、今のわたしは、とっても幸せ。 名前通りの当りの人生ってところかな。
いつか一人を選ぶことになると思うけど、今は、たとえ我がままであっても五人と一緒にいたい。
五人とも、彼の代わりとしてでは無く、個人として愛しているから。
今は髪形が皆違うから、そこだけ好みで優劣があるかもだけど……そこは置いといて……。
そう、皆、違う人間、記憶を電子化してコピーしても、見た目が同じでも、魂が違うのだ。
だから、天国の彼への気持ちが消えることも無いのです。
蛇足だけど、わたしは思うの、この五人は、あのクリスマスの日に届いた彼からのプレゼントだったのかもと…………ありゃ、これって物扱い?
/**** 当子side *****




