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三題噺もどき3

小腹

作者: 狐彪

三題噺もどき―よんひゃくさんじゅうろく。

 


 どこかに、鋭い痛みが走った。


「……」

 浅い眠りから目が覚める。

 頭の重さに耐えきれず、首が悲鳴を上げたらしい。

 ズキズキと響くその痛みは眠りから引き戻すには充分だった。

「……」

 たいしてちゃんとした眠りでもない、ほんの少しうたた寝をしてしまった程度の眠りだ。

 痛みでなくとも、よかったのではと言いたくなるが。

 物音でも起きれるほどの浅い眠りだった。

「……」

 まだ少しぼやける視界で時計に目をやる。

 たいして時間は経っていない。せいぜい30分程度だろうか。体感は5分だけど。

 うたた寝をしてしまう程に眠れていなかったと言うのに、少し驚いているが。

 まぁ、それはあとで。

「……」

 しかし……やけに部屋が暗い。

 時間的にはまだ明るくてもいい時間だと思うんだが……。

 カーテンは開いているはずだし。電気はつけていないが……それでも事足りるほどに明るかったはずだ。

「……」

 と、視界の暗さに言及しようとした辺りで。

 くぅ―と、子犬の声が聞こえた。

 甘えるような悲しむような。そんなのが二回ほど連続して聞こえる。

「……」

 家に子犬はいないので、これは自分の腹の虫なのだけど。

 さっきから妙なわだかまりが腹のあたりにあると思ったら……空いていたのか。

 確かに、今日は食欲がわかなくて二食ほど抜いたけど。

「……」

 くぅ―ともう一度鳴く。

 ふむ。何かを腹に入れてしまうか。

 よく見れば机の上に置いてあったマグカップの中身が冷え切ってしまってるし、入れなおすついでに。

「……」

 だとしてもちゃんと食事を摂ると言うよりは、軽食程度で済ませておきたい。

 今下手に普通の量の食事をとると、夕食が入らなくなってしまいそうだ。

 せっかく食欲がもどってきたのなら、タイミングを合わせておきたい。

「……」

 が……何かあったかな。

 菓子類は食べないからとこの間妹に持たせてしまったし。

 買い置きしていたものもほとんど食べてしまったし。

「……」

 と、そこまで考えてようやく体を動かす。

 見ない事には分からない。たまに忘れ去られているものが入っていたりするから。

 とりあえず……。

「……」

 未だにズキズキと響く首にしかめながら、頭をちゃんと上げる。

 手元に置いてあった本を机の上に置き、代わりにマグカップを手に取る。

 そのまま立ち上がるまでの動作を終わらせ、軽く伸びをする。

 節々が軋むが、それはいつもの事なので気にもしない。

「……ん」

 部屋が暗い理由が分かった。

 どうやら外は雨が降り出しているらしい。

 まだ雨音は聞こえないが、道を歩く人々が雨具を取り出して広げている。

 さして酷くはなさそうだが……全く天気が安定しないなぁ。

「……」

 まぁ、それはさておき。

 空腹がさすがに煩わしい。

 キッチンへと向かい、シンク横へとマグカップを置く。

 さて……。

「……」

 冷蔵庫の扉を開く……何もない。

 食器棚の上にも菓子袋はなし。棚の中にも何も入っていない。

 外に買いに行ってもいいが、雨が降り出したんじゃなぁ……。

 気のせいか頭も痛くなってきたし……今日は外出そのものが無理そうだ。

「……ぁ」

 そうだ。

 ふと思い出し、冷凍庫を開ける。

 そこには、冷凍食品が数種類と、作り置きの氷がある。

 その中に1つ。

 普段ならあるはずのないものがある。

「……」

 これでいいか。

 妹が食べると言って買ってきたのだが、結局忘れられここに放置されているものだ。

 基本この類のものは食べないので、自分で買ったりはしない。

 腹が冷えると、すぐ下すのだ。

「……」

 カップに入ったタイプのソフトクリームのアイス。

 コーンは嫌いなので、カップだったのが幸いした。

 これでコーン付きのやつだったら、冷凍庫を閉じて、小腹を満たすのを諦めていた。

「……」

 ソフトクリームを取り出し、蓋を開ける。

 長時間ここにはいっていたせいか、固くなってしまっている。

 ま、いいか。

 さっさと小腹を満たしてしまおう。






 お題:浅い眠り・ソフトクリーム・雨具

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