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23 縁談話

「縁談!?」


 ユリスは心底嫌そうな顔をしてライムを見る。


「家は兄貴が継ぐって決めたんだから俺は別に結婚も何も自由なはずだろ。なんで今さら」

「いや、それはそうなんだけどさ。お前もいい歳だろ。親父があの歳でまだ結婚もしてないなんて公爵家の息子なのにはずかしいだのなんだのってうるさくて」


(えっ、公爵家?ユリスさんて公爵家のご令息だったの?)


 ライムの話にリリィは目を丸くする。そういえば、ユリスの家の話は一度も聞いたことがなかった。


 リリィの驚いた顔を見てユリスが複雑そうな顔をし、ライムも不思議そうな顔をする。


「もしかして、リリィちゃんに家のこと話してないのか」

「いちいち言う事じゃないだろ。それにそもそも研究課は実力主義で家柄については一切話をしない。誰がどんな家柄かなんて関係ないしみんな興味もない。そこがよくて俺は今の仕事についてるんだ」


 はぁ、と深くため息をつくユリス。


「とにかく、俺にはリリィがいるし縁談は必要ないから。親父にも余計なことするなって言っておいてよ。そもそもわざわざ忙しい兄貴を使うなんて……」

「いや、親父が直接来てもお前は話もしないだろ」


 ライムが苦笑するとユリスはまたため息をついた。


(ユリスさん、お父様とあまり仲がよくないのかしら?)


「まぁいいさ。こんなに可愛らしい彼女がいるなら縁談は必要ないって親父にも言えるし。ただ……」

「ただ?」


 ライムの様子にユリスが顔をしかめる。何か嫌な予感がする、そうユリスの中に警戒音が鳴り響いたが、ライムの次の言葉でその予感は的中した。


「縁談の相手がベラなんだよ」

「ベラ……」


 その名前を聞いた途端、ユリスは絶句しライムは困ったような顔をしながら頭をかいた。


「よりにもよってなんでベラなんだよ。親父の嫌がらせか?」

「いや、縁談を持ちかけてきたのはベラの家かららしい。たまたまユリスがまだ未婚だって話をしていたら食いついてきたらしくてな」


 二人の話についていけないリリィはぽかんとした顔で二人を見つめる。それに気づいたライムが、申し訳なさそうな顔をしてリリィに説明をし始めた。


「ベラっていうのは俺たちの幼馴染なんだ」



 ユリスとライムとベラ。小さい頃から仲がよく、顔を合わせればいつも三人で遊んでいた。


 ユリスより五つ年下で、長く赤みがかったブロンド色の髪の毛にルビー色の瞳、誰もが納得するほどの可愛らしい顔立ちだ。

 ベラの家も公爵家でライムより一つ歳上の兄が一人いる。両親にも歳の離れた兄にも溺愛され、小さい頃から蝶よ花よと大事に育てられていたせいか少しわがままがすぎるところがある。だがそれもベラの見た目の可愛さとそれを生かした立ち回りで帳消しになっていた。


「私、大きくなったらライムお兄さまと結婚する!」


 小さい頃は何かあるたびにそう言ってベラはライムのそばを離れなかった。成長してからもそれは続いていたが、ライムがことあるごとにそれをかわし他の女性と恋仲になると、今度はユリスが好きだユリスと結婚すると宣った。


 ユリスはそんなベラが小さい頃から苦手で、学生になると寮がある魔法学校へ入学し、成人するとすぐに魔法省へ勤務するようになる。それ以来ベラとは疎遠になっていた。


「あんなに兄貴を好き好き言ってたくせに兄貴がダメだとわかると俺にくるような女だよ。無理に決まってる。それに俺にはリリィがいるんだ、ベラもさすがに諦めるでしょ」

「だがあのベラだそ。俺に彼女がいたときも婚約が決まった時も何かにつけて俺に近づいてきゃんきゃん喚いていたからな。しかも今は自分の年齢を気にして本気で結婚相手を探しているそうだ。お前も気をつけた方がいい」


 ライムの話にユリスは心底嫌そうな顔をして身震いするが、ふとリリィの顔を見て目を見張った。


(あ、どうしよう、すごく不安そうな顔になっちゃってたのかな)


 リリィは精一杯の笑顔をつくりユリスに向けると、ユリスは机の下でそっとリリィの手を握る。


「大丈夫、ベラに何言われても俺はリリィしか見てないしリリィとしか一緒にいたくないから。リリィのことは俺が守るから心配しないで」


 ユリスの言葉を聞いてリリィは安心する気持ちが湧き上がってくる。


(すごいな、ユリスさんはいつも私がほしい言葉をくれてあっという間に安心させてくれる)


 リリィはいつの間にかつくり笑顔ではない本当に嬉しそうな笑顔になっていた。そして、ライムはユリスとリリィのやり取りを見ながら優しい眼差しを向けていた。





 


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