(2)
お読みください!
「つぎはホームセンターで干し網を買ってこようか」
確か、チャックで蓋をできるタイプの干し網が売っていた。
「あれっていくらくらいするのだろう。千円くらいかな」
ただでさえ少ない小遣いなので、干し網に使うカネが惜しい。
しかし、可愛い妹のためだ。
貧血が続き、いつも青白い顔をしてベッドに寝込んでいる妹。
どの季節でも身体中の隅々が、ひんやりと冷たい妹。
彼女が電車にでも乗ろうものなら、決まって卒倒してしまい、駅員室に担ぎ込まれることになる。
だから、学校に通うことを諦めてしまった。
彼女の同級生たちは、見せつけるようにスカートを短くし、イヤリングカラーに染めた髪の毛で、タピオカ片手にケタケタと笑い合いながら街を闊歩しているというのに。
窓の奥で冷たい身体を持て余し、ひとりぼっちで灰色の青春を送っている僕の妹。
彼女のそんな境遇を思えば、千円くらいなんのことはない。
「僕の可愛い妹よ。次の休みに、コーナンへ行って干し網を買ってくるからね。
そして次こそ、そら豆血液製法を成功させ、お前に鉄分たっぷりのフレッシュな血液をわけてあげる。
血液さえあれば、お前は元気に動き回れる。
小さな頃は、そうだったじゃないか。
貧血が治ったら、お兄ちゃんと一緒に原宿に行こうか。
タピオカミルクティーはもちろんのこと、ホットクも歩き食べしよう。
お前にも、みんなと同じようにJKらしく青春を謳歌する権利があるんだ」
僕は心の中の妹に語りかけ、ベッドへと戻った。
続きます^_^