ブラックホールを超えたら異世界に転位していた
「駄目か」
宇宙船の操縦士は出て来た結果にため息を吐く。
様々な試行錯誤をコンピューターにやらせたが、どうにもなりそうにない。
「ブラックホールが相手じゃしょうがねえか」
運が悪かった。
物資輸送中に襲われ、必死になった逃げたのだが。
逃げた先にブラックホールがあった。
襲ってきた宇宙海賊からすれば、ブラックホールとの挟み撃ちにして逃げ場を無くすつもりだったのだろう。
そうして強制的に船を停止させ、船ごと物資を強奪する。
そんな目論見だったのではないかと。
残念なことに、この宇宙船の操縦士は宇宙海賊の予想より根性があった。
諦めが悪いともいう。
捕まるまいと必死になってどこまでも逃げた。
捕まれば乗組員は皆殺しになるのが定番なので、逃げるしかなかったのが一番の理由だ。
宇宙海賊は物資と宇宙船だけを求め、乗組員は殺していく。
生かしておいたら情報が漏れる可能性があるからだ。
持って生まれた残虐性による所も大きい。
人を虐待するのを楽しむような連中ばかりが集まってるのが宇宙海賊だ。
捕まるわけにはいかなかった。
しかし、そのせいでブラックホールに追い込まれてしまった。
既に危険な領域に入ってしまい、抜け出す事はできない。
宇宙海賊はそんな操縦士の動かす宇宙船を安全圏で見ている。
「楽しんでんだろうな」
殺戮や蹂躙が大好きな連中である。
ブラックホールにとらわれて逃げられないのを見て楽しんでに違いない。
そういう連中である。
実際、ブラックホールから逃げられる可能性はない。
このまま重力に引かれて、押しつぶされるだけの未来があるだけ。
船に透視してるコンピューターもそういう結果しか示さない。
お手上げだ。
だが、この操縦士は諦めが悪い。
なんとか生きのびる方法はないかと考えた。
そこでコンピューターにする質問を変更する。
「どうやったら生きのびる事ができる?」と。
脱出とは違う。
それは不可能だと断言されている。
だから、これ以上同じ質問をする意味がない。
だから生きのびる方法はあるのかと尋ねた。
脱出以外の方法で。
考え始めたコンピューターは数分後に答えを出す。
それは突拍子もないもので、操縦士は唖然となった。
「本当なの?」
思わず尋ねるが、
「これ以外の計算結果はありません」
とコンピューターは返事をした。
ブラックホールへの突入。
これがコンピューターの出した答えだった。
あくまで理論上の話だが、ブラックホールは全てを吸い込む場所だ。
その先には、全てを吐き出す場所があると言われてる。
別の宇宙に繋がってるのでは、という理論もある。
その理論にのっとり、ブラックホールの中心に向かっていく。
そこを突破する。
別の宇宙に向かう。
生き残るならこれしかないとコンピューターは結論を出した。
「それしかないか」
あっさりと操縦士は受け入れた。
納得したわけではない。
本当の理論通りに別の宇宙があるのかも分からない。
そもそも、ブラックホールを突破出来るのかどうかも分からない。
しかし、他に方法は無い。
どのみち、ブラックホールから脱出する事はできないのだ。
ならば、やるしかなかった。
即断・即決・即実行。
操縦士の行動は早かった。
ブラックホール突破の為に必要になるものをコンピューターに用意させていく。
その為に、積み荷も全部使っていく。
輸送中の物資は操縦士のものではないが、かまう事はなかった。
どうせ送り先に届ける事はできないのだ。
遠慮しててもしょうがない。
開き直った操縦士は、コンピューターに必要な作業を全部やるように命令した。
残念ながら操縦士に科学知識や製造技術はない。
出来るのは、宇宙船の操縦だけ。
それもほとんどは自動化されているので、実際にやれる事はほとんどない。
実際、操縦士といっても、宇宙船の運行で彼が何か出来るというわけでもない。
それでも、人間の監視や管理も必要だろうと、最低限の人員が配置されてるにすぎない。
この為、巨大な宇宙船の中にいるのは操縦士一人だけ。
そんな操縦士に必要な作業を考えて実行する能力などあるわけがない。
コンピューターに任せるしかないのだ。
命令を受けたコンピューターは即座に動いていく。
船内の工作機械などを使って、必要なものを作っていく。
宇宙船内に工場が作られ、それが宇宙船を改造するのに必要な材料を作っていく。
作られた材料で作業をする工作・製造用のロボットも作られていった。
幸い、時間はある。
重力の増大と共に時間の流れは遅くなるという。
その理論通り、ブラックホールに吸い込まれていくごとに作業時間は長くなった
余裕があるとまでいかないが、必要な作業をこなすだけの時間は確保出来る。
輸送用の宇宙船はどんどん様変わりしていく。
ブラックホール突破に必要な補強や変更がどんどんされていく。
ついでに、ブラックホール突破後に備えていく。
たとえ突破出来ても、すぐに野垂れ死んでは意味がない。
ブラックホールを抜けた先に別の宇宙があるなら、そこで生きていけるようにしなくてはならない。
生命維持に必要な設備や装備を用意していく。
それこそ水や食糧といった基礎的なものからだ。
準備がととのっていく。
原型を留めないほど改造された宇宙船はブラックホールの中心へと向かっていく。
改造が上手くいってるなら、これでどうにかなるはずだった。
とはいえ、ありあわせの物で間に合わせただけ。
これで上手くいくのかは悩ましいものがあった。
だが、悩んだり迷っても意味がない。
どのみちブラックホールに捕まってるのだ。
逃げ場などない。
一か八かの博打をするしかない。
分が悪いと分かっていても。
「そろそろか」
その時が迫る。
ブラックホールの中心が近づいてきた。
あとはそこに向かっていくだけ。
「どうなるかなー」
死ぬかもしれないが、もう気にしても仕方が無い。
悟ってるというより開き直った気持ちでその時を待つ。
死ぬのはほぼ確定してるのだ。
運良く生き残れたら儲けもの、くらいに考えてないといけない。
「でも、こうなるんだったら、もっと遊べが良かった」
心残りではある。
基本的に宇宙船にのってばかりなので、遊ぶ機会が無い。
そのせいであまり楽しい事ができなかった。
それが悔やまれる。
「コンピューター。
上手く生き残る事ができたら、遊びを用意してくれるか?」
「余裕があれば」
返事は素っ気ないものだった。
だが、やらないとか、出来ないとはいってない。
「じゃあ、期待してるぞ」
「はい」
そんな事を言ってるうちに、宇宙船はブラックホールの中心に突入していく。
さてどうなるかと思いながら、操縦士は万が一の可能性に全てを託した。
結果はあっさりとしたものだった。
中心に到達したと思った瞬間に、目の前が開けた。
ブラックホールによって星の光さえも吸い込まれ、暗闇だけが拡がっていたのだが。
いきなり無数の星が輝く宇宙に変わった。
「突破成功です」
コンピューターの音声で、理由が分かった。
全てを吸い込むブラックホールからの解放。
そこから抜け出したからだと。
「…………あっさりしたもんだな」
拍子抜けするくらい簡単に事は終わった。
とはいえ、今はまだブラックホールから抜け出しただけ。
これで終わりとはならない。
居住可能な星を見つけて、そこに根を下ろさねばならない。
宇宙船ではやはり万全な生活環境は構築出来ない。
人は大地と空がなければ生きていけないのだから。
「住めそうな星はある?」
「現在捜索中です。
結果が出るまで、1時間待ってください」
「はいよ」
探知結果が出るのを待つ事になった。
居住可能な星はすぐに見つかった。
運が良い。
迷うこと無く向かい、住み着く事にする。
ただ、あくまで居住可能な条件が揃ってるだけ。
これから地球化の改造が必要になる。
「その間は生命維持装置で長期間睡眠に入っていてください」
そう言われて操縦士は、素直に従っていく。
反発しても得るものはない。
言われた通りにしておくのが一番良い。
操縦士は長期保存に入った。
その間にコンピューターは宇宙船を目的地に到着させる。
即座に地球化作業を開始し、人類が生存可能な環境を作っていく。
それが終わると、必要になる動植物も合成して作り出していく。
作業が全て終わるまで、数千年の時間がかかった。
居住可能にするための改造期間としては短いが。
そうして出来上がった星に、操縦士はおりたった。
これからの人生を送る場所で、心機一転頑張っていこうと思いながら。
「けど」
予想外のおまけもついてくる。
「まさかこうなるとは」
地上におりたった操縦士。
彼には数人の女がついていた。
いずれもコンピューターが合成して作った人間だ。
人造である事を除けば、寸分違わず人間そのものな存在。
それらは操縦士の相手として用意された。
「今後、この場所で生きていくなら、子孫も必要かと思いまして」
「うん、まあ、そうなんだろうけど」
生き残れたら楽しみが欲しいという事を言ったおぼえはある。
それをまさか本当に用意してくれるとは思わなかった。
おまけに、容易された女はいずれも操縦士の好みだった。
聞けば、これまでの生活を見て、好みを判断したという。
「お気に召しませんか?」
「そんな事は無い。
最高だ」
何とか生きのびた操縦士は、別の宇宙での生活を始める。
コンピューターのおかげで生活に困る事もない。
やってきた宇宙で子々孫々まで繁栄していく事になる。
宇宙海賊に追い込まれ、ブラックホールに巻き込まれてしまったが。
結果としてこれが操縦士にとって最良の結果になった。
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