十一の巻 街中探検
「まぁ……その服なら、街中歩いても違和感ないわね。と言うよりも注目浴びちゃうかも」
「そこまでは流石にぃ。でも少しだけ服に隙間がありますね」
「やはりスタイルがいい人は羨ましいわね……」
そして二人は外へと出て、渋谷を散歩する事にした。
だが──
「この子どうします?」
「う〜ん」
それは子竜。部屋の中を彷徨いている子竜をどうするか。
そこに二人は悩んでいた。
「置いていく事って出来ないわよね……」
「龍の子供とは言え、何をするかは予測が付きませんからね」
「連れて行くしか……ないか」
子竜をペット用のバッグに入れて、帽子を被せてバレないようにして連れて行くことにした。
「現界にはこんな物があるんですね」
「友達の物だけどね。よく仕事で家長く開ける事多いから、私の家にペット用品があるのよ」
子竜の頭を撫でると、嬉しそうに鳴き、暴れる気配もないのを確認して二人は渋谷へと向かった。
初めてバスに乗り、朝姫に色々と教えられながら渋谷へと到着した。
「早速渋谷に来たよ。ここが日本の代表的な街?とでも言えば良いのかな?とにかく世界的に有名な渋谷の街よ!」
「へぇ!凄い!!でも、色んな音がごっちゃごちゃで、耳が痛いですね……」
静かな里で暮らしていた凛花にとって、初めて聞く都会の様々な音は耳にダメージを与えた。
耳を塞ぐ凛花だが、慣れようと手を離した。
「無理しちゃダメだよ。辛かったら行ってね」
「はい、私は何とか大丈夫です。でも、この子は」
子竜へと目を向けるが、別に暴れる様子もなく、ただ静かに外を見つめている。
「凄い静かね……」
静かにしている姿に感心する朝姫。これなら、暴れる事はないだろうと安心して、早速渋谷を案内しようとスマホを開いた。
「私から離れちゃダメよぉ〜ってあれぇ?」
朝姫が数秒眼を離した途端、凛花の姿が消えていた。
周りをキョロキョロ探すとガタイのいい男二人に両脇を固められて話をしながら何処かへと連れてかそうになっていた。
「君かわいいね?何処の人?」
「あなた達に分かるかしら?遠い里から来たんだよ」
「田舎育ちか。これは唆られる」
いかにもナンパしそうな金髪なツラに即座にやばいと感じた朝姫。凛花はナンパだとは知らず、ただ話しかけてくれているとだけ思って楽しそうに話していた。
「凛花ちゃん!?」
すぐに朝姫が男達の元へ駆けつけ、男達の間に割り込んだ。
「凛花ちゃん!行きましょう!!ここから少し!」
凛花の手を掴んでその場から離れようとした時、逆に男達に朝姫の手を掴んできた。
「あのお姉さんもどうですか?お茶」
「いや、結構です!私達は別の用事があるんで急いでるんで」
「いやいや、話だけでも聞こうや」
「ダメです!」
そう言って振り払おうとしても男達の力には勝てず、手を離してはくれなかった。
それを見て凛花は男の前に立ち、睨みつけるように言い放った。
「朝姫さんが嫌がっているのが見えないの?」
「あ?」
「離しなさい。その手を、離せ!」
凛花の威圧的な目と声に男らは少し怯むも、相手はただの若い女性二人。ともう一人の男が朝姫から離れて、凛花の肩に触れようとした。
その時、凛花は男の手を弾いた。
「触るな。そんな手で」
「んだと?おい!」
男が手を上げた瞬間、見えないほど素早く喉元に一撃突いた。
「がっ……」
相手が嗚咽をもらす程の痛みに膝をついた。
そこに回し蹴りを放って、顔面を蹴り飛ばして、男は鼻血を出して気絶した。
「おいおいマジかよ!」
周りの人だかりもこの騒ぎに次第に足を止めて凛花達を囲むようになった。
朝姫も突然過ぎる攻撃に口を抑えて黙り込んだ。
男も仲間が突然やられた状況を理解できていない。
「お嬢ちゃん落ちつ──」
もう一人の男が喋っている途中に関わらず、凛花は男の手を力強く掴み上げて、背を向けるとそのまま自分よりも大きな身体を軽々と持ち上げて背負い投げを喰らわせた。
そしてそのまま馬乗りになって、男の腕を掴み、背中へと引っ張り始めた。
「私強いのよ。降参しないとこの腕くらい簡単にへし折れるわよ」
「痛い痛い!!許してくれ!!」
「降参するのよね?ねぇ!」
「降参するからやめてくれ!!痛い痛い!!」
語尾を強めて更に腕を逆側へと引っ張ると、男は地面を何度も叩いて降参の意思を示した。
そこに朝姫が我に帰って、凛花の手を掴んだ。
「凛花ちゃん!ストップストップ!じゃなくて止めて!腕折れちゃうから!」
朝姫の言葉で力を抜いて、男を解放した。
男らはそそくさと退散し、周りの人達が一斉に拍手を交わした。
「すごいよお嬢ちゃん!」
「かっこよかったわよ!」
みんなが凛花に声援を送り、照れくさそうになる凛花。
「凛花ちゃん。す、凄いわねぇ」
「いえいえ、寺で毎朝武芸を習ってますから、これくらい余裕ですよ」
「にしても男二人に勝てるなんて」
「怪しい雰囲気が漂っているのが何となく分からんですよ。そう言う気?的なのが感じるので」
「す、すごい」
と関心していると手からペッド用バックが地面に離されていることに気づいた。
「し、しまった!」
すぐに取りに戻り、子竜を確認するが変わらずに外をキョロキョロとみていた。
「こんなに騒がしいのによく暴れなかったわね……」
「人慣れすると、竜は人間の言葉を理解しようとうるさい音でも耳を研ぎ澄ませる習性があるんです。あの子は彼らは何故叫んで、何故拍手を送っているのかを自分自身で覚えようとするんです」
「動物とは違った知能を持っているって訳ね」
そう言いながら無意識にノートを取っていた朝姫であった。
「朝姫さん買い物しましょうよ」
「そ、そうね。また癖で……」
そうして二人は服を見たり、渋谷の様々なスイーツ、ゲームセンターなどを楽しみ、凛花にレクチャーをした。
初めてで様々な苦戦はあるものの、凛花は一つ一つ頭に入れて、現界を学んで行った。
*
帰り道──バスに乗り、凛花は窓際に座って街を眺めながら言う。
「楽しい所ですね。現界、いや日本て。暖かい人が多くて優しくて」
「まぁ、良い人が多いのが日本の良いところなのかもね。さっきの男達は例外だけど」
「はい。里の人とは違う感覚を持っている人が多いのもわかりました。色々と勉強になりました」
凛花が言い終わると朝姫は安心し切った顔で言う。
「現界が合わないって言ったらどうしようと思ったけど、心配要らなそうね」
「まだまだ慣れないことはあるけど、またげーむせんたーに行きたいし、それに抹茶ってのもまた飲みたいなぁ」
「まぁまた時間が出来たらいきましょう。他にも色々と見せたいものは沢山あるし」
「はい!」
喜んで返事する凛花だが、浮かない顔になり顔を下げた。
「でも、一つだけ願いがあるとするなら」
「何?」
「友達が欲しいかな」
「友達?」
「朝姫さんは友達と言うより、頼りになるお姉さんって感じですけど、げーむせんたーにいたような同じ歳で同じ感覚を持った友達が欲しいです」
ゲーセンに行った時、クレーンゲームをやっていた女子高生達を見て、凛花は同い年の友達が欲しいと感じたのだ。
友達同士で何かを共有して、何かを互いに喜び合い、何も考えないで話ができる関係。
朝姫との関係とはまた別な関係。それが今の凛花には欲しい存在であった。
「里にはいなかった?」
「私の立場上、同い年の友人と呼べる立場の人はいないですね」
「そう……」
「でも、ここでなら友達と呼べる人を作れると信じます」
「えぇ。今のうちに作らないと歳を取ってからじゃ遅いもんね。私も友達と中々会えなくて──」
と話していると隣なら優しい寝息が聞こえて来た。
凛花はぐっすりと寝ていた。色々と見て体験した凛花は今までにはない疲れが溜まっていたのだろう。
朝姫は起こさないようにアパートの近くまで到着するまでそっとしてあげた。




