7.交じり合う瞬間
僕はこの日、夜遅くまで真紀と共に駅付近の河川敷で力を使いこなす練習をしていた。この力を発動するには身体の力を一気に噴出するように力を解き放つ必要がある。
基礎的なステータスは常人よりも遥かにパワーアップしており、力も防御も速度も今までの自分を遥かに超えていた。
ボールを投げれば炎の魔球になり、木の枝を持てば真っ黒に焦げ落ちた。だけど真紀のサポートもあり、少しずつだけど慣れて来た。
そして今、簡単なトレーニングを終えた僕らは呑気に話しながら駅前を歩いていた。
「ねぇねぇ、明日は何するの?」
「少しはこの力の事は掴めたかもしれないけど、完全にマスターするにはまだ時間がかかるかもしれない。だから、明日も練習──」
その時、近くから激しくアラームが鳴り始めた。その音は近くの車のアラームであり、辺り一帯の全ての車がアラームを一斉に鳴らしたのだ。
「これは……何だ?」
「アラーム? 何なの?」
大勢の人が足を止めて周りを見ていた。
僕達も気になって様子を伺っていた。だが、その時何処からともなくガラスが一気に割れる音が響き渡り、悲鳴までもが聞こえて来た。
「な、何今の音!?」
「人の悲鳴が……」
何故だか猛烈に嫌な予感がした。まさかと思い、僕は何も考えずに悲鳴が聞こえた方へと走っていった。
「た、鷹斗!?」
「真紀はそこに居てくれ!僕が見てくる!!」
僕は走り、ガラスが割れた道へと出た。
僕が見た光景はビル一個のガラス全てが割れており、大勢の人が逃げ帰っていた。だが、それよりも驚愕な光景が目の前に広がっていた。
「あ、あれは……」
逃げている人がいる中、不思議が光景が広がっていた。道路の真ん中に宙を浮いている人間がいたのだ。それと僕と近い歳の人が苦しそうに宙に浮いていた。
不思議な光景で恐怖しているのに僕は逃げようとしたが、何故だか足が思うように動かなかった。というより逃げたらダメだと、心の奥から言われているようだった。気がつくと逃げている人はいなくなり、僕一人となっていた。
「なぁ先輩よ!気分はどうだ!!」
「ゆ、許してくれ……」
「俺が一番強いだろ!!そうだろ!!」
「わ、分かったから……もう」
フードを被った男はもう1人の不良っぽい男に怒鳴っていた。
だが、まるで僕と同じ謎の能力を持っているようだった。僕と同じく手の甲が光っていたが、僕と違って黒いオーラが放たれていた。
「ふん、つまらん」
フードの男は不良の男に手を突き、衝撃で吹き飛ばした。
僕は咄嗟に走って、その男が車に衝突する寸前でキャッチした。
「大丈夫ですか!?」
「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!」
僕は目の前にいるフードの男と目が合った。だがフードの奥は黒く染まっており、目以外何も見えなかった。
男は僕と目を合うとゆっくりと地上に降り、口を開いた。
「お前は……」
「君は僕と同じ力を持っているのか。だとしたら、変な事は辞めるんだ」
「だとしたらお前には分からんか?この力の意味が……」
「人に危害を与える力じゃないはずだ」
「だったら、何に使うべきか俺に教えてくれよ。鷹斗よぉ」
「それは──」
その時、男の背後にパトカーが止まり、2人の警察がフードの男へと話しかけた。ガラスが割れているとは言え、警察官は状況をあまり理解しておらず、普通に接していた。
「き、君か。暴れているのは」
「だとしたら?」
「今すぐに抵抗を辞めて、我々とついて来てもらう」
「捕まえられたらなぁ!!」
その時、男は警察へと振り返り手を突き出した。警察はパトカーと共に吹き飛んで、ビルの壁に叩きつけられた。
「はぁぁぁ!!」
僕は怒りを感じて無意識に力を発動して、炎を拳に纏わせて力任せに男を殴り飛ばした。初めて人を殴ったてしまった。それに手がヒリヒリと痛い。
「ぐっ!」
飛ばされた男は車にぶつかり、大爆発を起こした。
僕はすぐに警察官の方へと駆け寄り、安否を確認した。
「大丈夫ですか!」
「だ、大丈夫だ……それより君は……」
「僕が彼をなんとかしますので、あなた方は離れていて下さい」
僕は男の方へと向くと、男は爆発した車を浮かせていた。
それに先ほどよりも強く黒いオーラを放っていた。
「やる気になったな。それで良いぞ!」
男は手を軽く下に振ると車が物凄い勢いで飛んできた。
僕は逃げようとしたが背後にいる警察官の人らがいる。受け止められる自信がない。でも、逃げたら警察官の人が被害に。僕は自分の力を信じて咄嗟に飛んできた車を受け止めた。
「ぐっ……!」
身体に衝撃が襲い、手に痛みが走った。だが、受け止める事にら成功し、何とか車を下ろしたが男の姿はなかった。
「ど、何処だ」
「こっちだよ」
背後から聞こえてくる声に振り向いた瞬間、男は背後に移動しており、咄嗟に身構えたが首根っこを掴まれて地面に叩きつけられた。
必死に抵抗しようとするも、金縛りにあったかのように身体が動く事ができなかった。
「くっ……」
「その力は危険だ。今の内に敵は殺しておく……死ね!」
「や、やばい──」
首が絞められる力が徐々に強まっていき、意識が遠のき始めた。このままじゃ、殺されてしまう。こいつを倒さないと……
そう思い、身体の力を一気に放とうと力を込め始めた瞬間──
「はぁ!!」
突然どこからともなく白のフード付きのマントを被った男が乱入し、男を蹴り飛ばしりて何処かの建物の窓を突き破った。
男が吹き飛んだ事で僕は地面に落ちて、ようやく息が出来る様になった。
「ぐはっ!!はぁ……はぁ……」
「刻印もまともに使えない癖に、戦おうとするんじゃない!」
「……だ、誰だ!あんたは」
「そんな事は後だ!」
いきなり出てきたこの謎の男に困惑するも、僕は息を整えて再び戦闘態勢に入った。
「やってくれんじゃねぇか。援軍とは良いじゃんか。2人まとめ殺して──」
その時男の動きが止まり、いきなり呼吸が荒くなると共に心臓を掴んだ。
「ぐぅ……限界が来たのか」
「待て!!」
「くっ……逃げたか。気配すら感じなくなったか」
「何とか凌ぎ切ったようだね……」
「ったく、街中で激しい戦闘しやがって怪我人でなかったのが奇跡だぜ」
謎の男はフードを取ると、僕より少し歳が上ぐらいなら青年であった。
「あ、貴方は何者なんですか」
「俺は豪太郎。刻印を知る者だ」
「刻印……何ですかそれって」
「お前の持つ能力とだけ言っておくさ。取り敢えず下手に動くのはよせ。使いこなせてない状態でその炎の刻印を使うと身体を壊すだけだ。あの闇の刻印は俺に任せろ。よく頑張った」
そう言って豪太郎と名乗る者は高く飛び、十階もあるビルの屋上に飛び乗りそのまま何処かへと姿を消してしまった。
「鷹斗!!」
「ま、真紀……」
「だ、大丈夫なのその身体!?」
真紀が駆け寄って来た。
僕は体力がないのに、無理をして手を軽くふった。
「大丈夫。大丈夫だよ」
「何処がよ!腕や頭から血が!!」
「これくらい何とも……ないさ」
まだ大丈夫だ。身体は怠くなっているが、まだ言う事を聞いてくれると言うよりも、聞かせているの方が合っているかな。身体が悲鳴を上げているのが分かるが、身体が無意識に立ち上がろうとしていた。
「だ、大丈夫だ……まだ──」
「鷹斗!!」
僕は体力の底をついたのか、意識を失ってその場に力なく倒れた。真紀の僕の名前を呼ぶ声が聞こえているが、その声も徐々に聞こえなくなった。




