【Part37】第三ラウンド開始ッ!!
東児は秋がぶっ飛ばされた方向に糸を伸ばして、木にキツく縛りつけ、廃ホテルの柱にもキツく縛りつけて繋ぎ合わせた。
ピンッと糸を張り、準備が整ったのか二人に話す。
「ワイヤーロープで滑る奴知ってるだろ」
「ターザンロープって奴だっけ?」
「そうそう。一気に滑って秋の元に行くぞ!」
「マジかよ。高い所苦手なんだな……」
嫌々言いながらも、星夜は自分と二人の命綱と滑走する為の器具作り、全員で装着した。
刻印石は東児の糸で無理やり縛り付けて持っていく事にした。
「よし、行くぞ!」
「おう!」
全員で糸のレールを滑走して森の中へと進んでいく。
刻印石が重い中、東児は重力に引かれて落ちそうになるもの、落とさないように必死に耐えて森の中へと降りていった。
*
クマに頭から地面に叩きつけられ、引きづられている秋。ゴツゴツと岩に当たり、怒りを表す。
「くっ!離せこの変態!」
秋は手を開き、クマの心臓に腕を当てた。
そして機械の腕に付属しているボタンを押すと、手のひらが光り始め、低出力のビームが放たれてクマをぶっ飛ばして離すことに成功した。
秋は魚のように跳ねて立ち上がり、自分が何処までぶっ飛ばされたのか確認する。
森を抜け、地面には砂利や土でゴツゴツとしている。
「ここは、建設途中の……建物?」
それは大きな工場の建物なのか、骨格だけが完成している工場が建てられていた。
建築車両などが止まっているが、人の気配はない。秋はそれを分かって、ここなら全力を出せるとやる気をだした。
「でも、この機械重くて戦いづらい!」
せっかく星夜が作ってくれたバックパックを脱ぎ捨てて、機械も全て取り外した。
身が軽くなり、足でステップを踏みながらジャブを交わして、戦闘態勢へと移行する。
「こっちの方が戦える!」
穴あき手袋を装着して、クマがこちらに走って来た瞬間に秋の心のゴングが鳴った。
「ラウンドスリィ!ファイ!!」
戦闘開始の合図と共に、秋が先手を打ち、クマの懐に飛び込んだ。クマの目の前でしゃがみ込み、足をバネのように跳ねて、その勢いのまま腹部を振りかぶった拳で抉り込むように殴り上げて、宙に浮かせた。
秋の頭の中では、様々な格闘漫画のワンシーンが浮かび上がり、それを見よう見まねで繰り広げていた。
「次は投げる!」
クマが口から血を吐くが秋は気にせずに追撃し、両手で頭の毛を掴み、力一杯空に向かって投げ飛ばした。
クマは真っ直ぐと建設途中の建物へと飛んでいき、鉄骨に衝突し、くの字に凹ませた。
「よし!」
ダメージをうまく与えたと喜ぶ秋だが、クマはすぐに意識を取り戻して、凹ませた鉄骨をフルスイングで投げ飛ばした。
秋は驚いたが、スッと何歩か後ろに下がり、鉄骨が足元に突き刺さった。
「おっと!危ない!」
クマは雄叫びを上げて秋へと高く飛び、落ちる勢いをつけて真上から拳を振り下ろした。
秋は避ける事はせず、真下から拳を手で掴み止めた。
その衝撃は凄まじかった。秋の足元に小さなクレーターが出来、付近の地面が割れた。
秋は足の筋肉に力を込めていた為、クマの力の前には押し潰される事は無かった。だが、全体重がのし掛かったパンチを受け止めた事で身体全体に大きな負担が掛かり、秋は気づいていないが足の骨にヒビが入っていた。
「こんなもんで、アタシを潰せると思うなよ!」
秋は声を荒げ、拳を握り返した。ミシミシとクマの拳の骨を壊し始めた。
「破壊!!」
そして一気に拳のエネルギーを一点に集中にさせて、力を解き放った。クマの手の骨をぐしゃぐしゃに折り、手から血が吹き出た。クマは涙混じりの悲痛な叫びをあげた。
秋は血が顔に付着したが、暗い中の戦いのため血とは気づかずに、顔の血を拭き取った。
「うるさいわよ!」
秋は身体を飛び上がらせ、一回転した素早い回転力が大幅に加わった蹴りをクマの顔面に食らわせた。
クマはのけ反って何回転も宙を舞って、再び地面に崩れ落ちた。
秋が着地した時、足に痛みが走った。
「いった……」
と足を心配する間も与えず、口から涎を垂れ流して、もはや正常な状態ではないクマが再び飛びかかってきた。
秋は咄嗟に攻撃を避けるも、一歩一歩足を踏み込む度に痛みが押し寄せてきて、反応が遅れていく。それでも攻撃を避ける事は可能であり、隙を見つけて何度も反撃を喰らわして体勢を崩す事に成功した。
ここで一気に決めるようと、秋は大振りなパンチを振り下ろしてクマの脳天を殴り押して、地面へと頭を埋め込んだ。
「はぁ……はぁ……こんなにも人?を殴ったのは人生初めてかも」
汗を拭うと、クマの手が動き出して地面から頭を出して、ふらふらとした足取りだが、秋にまだ挑もうと迫ってくる。
そして目の前で爪を立てて振り翳すと、秋が先手を打って顎にアッパーを食らわし、身体のバランスが崩れ掛かった。次にジャンプして目に蹴りを入れ、視界を奪う。
着地した瞬間、足の痛みで気を取られた。
「うっ!」
クマは目が見えない中、今の秋の声を頼りに足を掴み上げてタオルを振り回すようにグルグルと振り回してビル方面へと投げ飛ばした。
「うわっ!!」
このままでは頭から鉄骨にぶつかる。秋は体勢を整えて、鉄骨に足を向けて鉄骨を凹ますほど力強く踏み込んだ。足に激しい痛みが走ったが、歯を食いしばって耐えて、反撃しようと足を勢いよく伸ばしてクマの元まで一直線に飛んで行く。
「オラぁぁぁ!!」
頭を突き出して顔面に頭突きを当て、再び顎を蹴り上げた。
クマは膝をつき意識が朦朧としていた。
秋は着地して、止めにと拳を握りしめると、手の甲の拳の文字を発光した。腕の血管が浮き出て、筋肉が引き締まっていく。
拳を脇の下まで引き、目にも止まらぬ速さで正拳突きを放った。あまりにも早い速度で拳が当たるより早く、風船が破裂するような高音が鳴り響く程だった、
正拳突きはクマの胴体に直撃して、クマは声を上げる事なく地面にぶっ倒れた。
*
三人は刻印石を運びながら、森の中を走って秋の元へと向かう途中、先程の秋の正拳突きの音がこちらまで聞こえて来た。
「激しくやってんなアイツ」
「一人でも勝てそうだけど、助けに行かないわけにもいかないよな」
その時、蓮が空を見上げて何かを感じ取った。
「ヘリが来る」
「またヘリか!」
二人も足を止めて、空を見上げてると、自分達の頭上をヘリコプターが通過した。森の中だったお陰か、バレる事は無かったが、ヘリコプターの行く先には秋が戦闘を行っている方向であった。
「あっちは秋の場所だぞ!」
「急ぐぞ!」
三人は足早に向かうが、ヘリはあっという間に秋とクマの元に到着していた。
ヘリのドアが開き、真っ暗なライダージャケットを着た女性がスナイパーライフルを構えた。スコープを覗き込み、秋と倒れているクマを確認しながらイヤホンから聞こえる男性を話をしていた。
「どうする、あの子撃つ? 早くしないと私たちが殺されちゃうよ」
秋がヘリを見つめて、いつ攻撃を加えた来るか分からない中、女は秋の脳天に標準を当てた。
『いや、クマを撃て。奴らのデータは十分に取れた。次は薬の効き目を測る為に奴には実験台となってもらう』
「了解」
女は銃を引っ込めて、同じスナイパーライフルでも別の物に変えた。標準を秋からクマへと変えて、一発の注射針のような物を撃った。
注射針はクマの首元に刺さった。刺さると注射針がクマの体内に液体が挿入されて行き、全て挿入された途端、気絶したクマの筋肉が突然膨張し始めた。
「な、何!?」




