【Part35】総力戦開始!
蓮は怪我をしていないもう片方の手で辺りに風を巻き起こし、山全体の木や草を揺らして、スナイパーの視界を遮った。
その隙に、秋が持った岩を盾にして、星夜は蓮を抱えてボロボロに壁が崩れている廃ホテルへと侵入した。最上階の4階まで逃げ、四方が狙われずらそうな部屋に閉じこもった。
蓮を秋に簡易的に手当てをされ、包帯を巻かれながら秋のバッグから小さな野球ボールサイズの硬い球体を渡した。
「秋、頼みがあるんだ。狙撃された方向にこれ投げてくれ」
「これって?」
「星夜がお前に渡したやつだ。ショックウェーブと呼んでくれ」
その球体は作戦開始直前に渡された小袋。それがこのショックウェーブとなのだ。
星夜が球体を持ち、秋に説明する。
「それを地面や壁に当てれば、球の中が衝撃に反応して、中より衝撃波が破裂し、数メートルの範囲にダメージを与える事が出来る。蓮は敵の位置を特定してる。後はお前の投球に掛かっている。その刻印の力なら、絶大なパワーを発揮する」
「なるほどね。まぁ、蓮と星夜を信じて投げてみるかな」
秋はニヤリと笑い、球体を見つめて悦に浸り、敵から見える位置に立ち、外を見渡しながら投げる準備をする。
作戦は狙撃をされた瞬間に投げ、弾と交差するように相手にぶつける。
「小学生の頃は女子野球やってたんだから、狙いはバッチリよ」
と何秒か狙撃して来た方向を見つめていると、蓮が撃たれた弾を察知した。
「大きな岩山の上だ!」
「チョイサー!!」
蓮が銃弾が放たれた軌道から位置を特定し、秋は全力投球を見せ、示された方向へと直線上に投げた。
球体とすれ違い、秋の額を向かう。額に直撃する1メートル手前で、東児が放った糸が銃弾を包み込み、速度を殺して秋の眼前で止まり落ちた。
ショックウェーブはスナイパーの数十センチ横の土に突き刺さった。
「!?」
スナイパーが冷や汗を掻いていると、ショックウェーブが突然破裂し、衝撃波と共にスナイパーは吹き飛ばされて気絶した。
「よし!」
「これで、何とか危機は──いや、待って外に気配が」
蓮がまたも何かを察知し、窓の外に目を向けた。
その言葉に全員で窓の外を顔だけを出して覗き込むとビルの周りに、特殊部隊に匹敵する程の重装備と武装をした傭兵達が集結していた。
建物の周りを取り囲み、いつでも突入出来るように準備をしていた。
「おいおい、マジかよ。展開早すぎだろ?」
「もはや標的は俺達だけじゃないようだ。刻印石も標的だ」
「リーダーさんよ。どうするよこの状況」
東児の問いに、星夜は胡座をかいて腕を組み、精神統一するように無の境地に入り込んだ。
何秒間くらいか、悩むと何かを……閃いた。
星夜は立ち上がり、作戦を全員に話し始める。
「よし、蓮は怪我をしてるし、此処で石の防衛に徹して、作戦の為に体力の温存をしてくれ。お前はこの作戦の要でもある」
「その作戦とは?」
星夜は自慢気に夜空を指した。
「空だ。この空を鳥のように飛んで一気に逃げるんだ。その為には風の刻印、糸の刻印、そして俺の機械の刻印の力が必要不可欠」
「アタシは?」
と自分の役割を聞く秋。
星夜は肩を叩き、口角を上げて言う。
「この石を持つパワーにお前が必要だ」
「よね」
「その為にも、此処に来た連中を撃退して、ドローンのと様々なパーツを奪って空飛ぶ簡易的な翼を作る。三人でやるぞ」
「てか、配信まだしてるの?」
秋に指摘されて、背後に飛んでいるドローンに装着したスマホを確認する──
「やっべ充電切れてた」
「長時間配信はスマホじゃキツイもんね」
電源が切れていた。
いつからかは分からないが、途中から配信の存在を忘れていた。それだけ、必死になっていたんだろうが、これは大ミスだ。と自分を責めるが、取り敢えずは落ち着こうと息を吸って吐く。
「ふぅ……はぁ」
「20〜30分前には止まってたみたいだね」
「しゃあない。じゃあ、三人ともこれを付けろ」
そう言って星夜が三人に渡したのヘッドカメラである。
流石におかしいと東児がツッコむ。
「ヘッドカメラ!?それにイヤホン?」
「そうだ。ヘッドカメラは視聴者へのサービス。イヤホンは蓮の刻印の力で各地にいる敵を索敵させる為だ。怪我している蓮は石の元に居て、風の流れを読んで俺達に敵の位置を知らせる。秋、渡したの物を装着しろ」
秋が手に装着したのは色々な配線が繋がれている分厚いゴム製の手袋と靴である。それと背中に大きなバックパックを背負い、手袋と靴の一部の配線はバックパックと繋がっている。
「すっご」
「お前ならそれくらい背負ってても戦えるだろ? 作っておいて良かったぜ」
「これぐらいなら余裕かな?ありがとう」
とまんざらでもない表情で装備を見つめる。
「これってどんなパワーが?」
「バックパックに詰め込んである電子エネルギーを手足から放出されており、拳で地面を叩けばバックパックからエネルギーが手に送られて衝撃波が放たれ、敵を殴れば身体に衝撃が走る」
「やるじゃん」
「理解してなさそうでなりよりだ。心配はいらなさそうだな」
とにかく戦う準備を進める星夜ら。
配信も蓮のスマホで再び開始し、視聴者に状況を伝えた。
「──てな訳だ。今から死地に向かう。俺らの戦いをがご覧あれって奴だ。とち狂ってると思うだろう?とち狂ってるからこそ、この危機的ムーブメントが悦に感じられるんだ」
と視聴者に説明した後、四人で集まって円陣を組んだ。
全員緊張なんてしていない。いつも通りの動画を撮っている時のような普段通りの顔だった。
刻印があるから、大丈夫。絶対にこの場は乗り切れると、刻印に絶対的な信頼を得ていた。
「チームならではの、息の合ったプレイを見せてやろうぜ。やるぜ悪巧みNova!」
「おう!」
四人でハイタッチを交わして、いざ行かんと歩み始めた瞬間、蓮が何かを察知して窓の方へと走り出した。
何かと三人が窓を見つめると、空き缶のような筒状の物が複数投げ込まれて来た。それを蓮はいち早く気づき、風の刻印を発動して缶に向けててを振り払う。
「また危ない!」
飛んできた缶らしき物を全て風で流して、外へと吹き飛ばした。
遠くへと風に流された数秒後、缶が眩い閃光を広範囲に放ち、視界が遮られた。全員目を逸らして、目が戻るのを待っていると、蓮が敵が侵入して来た気配を感じ取った。
「一気に侵入して来たよ!」
「敵さんの攻撃が始まったようだ!行くぞみんな!」
星夜の言葉と共に全員、動き出して東児が刻印を発動して、ホテルの至る場所に糸の結界を張った。
「俺の糸で敵の進路を食い止める!」
「サンキュー東児!」
星夜は秋と共に下の敵を迎撃する為に動き出した。
「なら、俺と秋で地上の奴らを蹴散らすぞ!」
「一丁かましたらぁ!」
「この二つ目のショックウェーブで、敵を混乱させる!最後の切り札だ!」
と隠し持っていたもう一つのショックウェーブを窓の外から投げ捨てた。
数秒後、下からドン! と大きな音が鳴り一気に静まり返った。
「秋!行くぞ!」
「おうさ!」
二人は全員倒れただろうと4階から飛び降り、ショックウェーブを投げた地点に着地した。
「よし、これで──」
余裕の表情で周りを見渡した。
そこにはショックウェーブで倒れた傭兵達……ではなくて、銃を二人に構えている傭兵達。
「え?」
確かに衝撃音が鳴ったはずだと地面を見るが、ショックウェーブは真っ二つに割れているだけで、何も爆発していなかった。
「不発……だと」
「不備があるなんて聞いてないわよ……」
「すまん」
二人が冷や汗を掻く。秋は苦笑の表情で、怒りを通り越して呆れ果てた笑いだった。星夜も表情を作る力すら生まれず、真顔で謝る。そして二人は同じ事を思った。これはヤバいと。
傭兵らは一斉に銃をお構いなしに撃ち、星夜らは逃げるように塀の裏に滑り込んだ。




