【Part33】クマさん注意報発令
秋達の事なんて忘れたように、クマに目を向けていた。
「あれは、何だ!?」
「動物なのか!?2メートルは超えてるぞ!?」
クマは眩しいライトニング腹を立て、ガードレールをぶち抜き、槍投げのようにパトカーへと投げ飛ばし、車に突き刺さった。
パトカーのサイレンや赤色灯、ライトも消えて完全に沈黙した。
新米警察の一人が年上の中年先輩警察に怯えながら問う。
「あ、あれも逮捕するべきでございましょうか……」
「んなわけあるかい。これは規格外じゃ!」
「発砲許可などは──」
「出とるわけない!」
クマは次弾を発射しようとして、またもガードレールを引っこ抜いた。
二人の警察に投げ飛ばした。
「うわっ!」
野球選手の投げるボールよりも早く飛んでくるガードレール。二人は目を瞑って覚悟した。
だが──
「おたくら大丈夫か!」
東児の声と共に目を開けると、ガードレールは眼前で宙に止まっており、そこには無数の糸が巻き付いていた。
刻印を使って無理やり止めたのだ。本当はあまり見せたくはなかった。状況がよりややこしくなるため、刻印を使わずに事を済ませたかったのだが、人命救助を優先した。
「あんたら警察はここから避難しろ!と言うよりも、この付近の道路を封鎖しろ!高速道路付近の民家にも警告入れとけ。危険がより危険になるぞ!」
東児は警察に道の封鎖をさせる事で、クリーンフォックスの追手を近づけさせない作戦だった。
東児の神経な顔に、警察達は無言で頷き、息が合ったようにすぐに行動を始めた。全パトカーを遠くまで引き、多くの場所へと連絡を入れた。応援を呼ぶために警視庁にはもちろん、交通局など様々な場所に連絡を入れて、交通整理や住民の避難などを呼びかけた。
東児は二人に向かって叫ぶ。
「二人共!予定変更だ!ここから山奥に逃げるぞ!秋と蓮、お前らは石を持って離れろ!俺がここで引きつける!」
ここは神奈川県と静岡県の県境にある東名高速道路。幸いにも辺りは山に囲まれた人も少ない。東児はここでクマを撃退する事を決意した。
山奥に石を持っていけば、捜索にも時間がかかり、破壊するのにも持ってこい。
「東児一人で!?」
「もちろんだ。迷惑かけた分、働いてみせるさ」
とかっこよくクマの前に出たが、蓮が先に前に出た。
「……いや、僕が行く。ここまで裏方でやって来たけど、今は皆同じ立場、僕でも戦闘員にはなれる。刻印があるから!」
クマは蓮を見るや否や襲いかかる。
蓮は両手のひらに小さな竜巻を生み出して、クマを突き出し、突風を巻き起こした。クマは地面に爪を立てて耐えるも、蓮は更に力を出して風を巻き起こた。
「まだぁ!!」
蓮の繰り出す強風にクマは地面から宙に浮き、吹き飛ばされて壁にめり込んだ。
だが、めり込んでもなおクマは動こうとしてまだ体力が残っているようにも見える。
「早く行って!東児だって捕縛されて疲れているだろ?僕は満タンだ。石を持ってる秋一人にさせる方がもっと危険だぞ!僕にもかっこいい所を見させてよ」
「分かった。お前に任せる!」
蓮の覚悟を受け入れて、秋は石を持ち、東児と共に道路から離れて山へと昇って行く。
気がかりなのが、蓮の体力だ。蓮だってここに来るまでに刻印の力で風を放ち続けていた。そうとう体力が減っているはずなのに自ら買って出た。時間を稼いでも長くは稼げないだろう。無情にも東児はそう悟った。
「あいつ、俺より体力が少ないのに……」
「だからと言って戻るのは違うわよ。止まって暇があるなら、一緒に進むわよ!」
「……あぁ」
東児は秋の後を追いながら星夜に連絡を入れて、今の状況を伝えた。
*
同じ頃、蓮達を追いかけて星夜はバイクを運転している星夜。東児からの連絡を聞き、切羽詰まった表情になりながら速度を更に上げる。
「間に合ってくれよみんな!」
トンネルに差し掛かると、パトカーが止まっており、赤色の誘導棒を振って止まるように指示した。
「そこの君!今はこの高速道路は通行禁止なんだ!止まってくれ!!」
「すいません!友達を助けに行くんです!!」
と星夜は速度を落とさずに、パトカーを避けてトンネルへと入って行った。
警察達が追おうとパトカーに乗り込むが、星夜の刻印の力で、ドアが開かないようになった。
「あ、開かない!?」
警察が追って来たら、それこそ危険が増える事となる。それを何としても避けたい星夜の考えである。
星夜は警察が追ってこない事を確認すると、トンネル内を爆走し、東児達の元へと急ぐ。
*
時間を稼ぐ為に強風を放ち続けて10分か経った。東児達が山を登る中、クマの動きを止め続ける蓮。
だが、蓮の体力の低下と共に風も弱まり、徐々にクマが動けるようになり、壁から離れて蓮へと近づいてくる。
「くっ……まだ!まだまだ!」
風を更に強く押し込むが、力が出ない為かクマが後ろに引いてもすぐに前に進み出す。
「……やばい」
目の前にいる自分の背丈より倍はあるクマ。こんなにも巨大だったのかと思いほど、巨大かつ威圧的な風貌。
身体が恐怖して動けず、クマに腕を掴まれて、そのまま投げ飛ばされた。
「ぐわっ!」
飛ばされた蓮は勢いよくガードレールを凹ませてぶつかる。
衝撃は凄まじく、ガードレールが粘土を捏ねるように簡単に曲がった。肩がベキッと聞いた事ない音がなり、動かせないほどの激痛がはしった。
「くっ!!肩の骨が折れちゃった……かも。本当いいとこないな僕……」
クマは蓮の前に立ち、爪を立てた。
目の前に立たれると分かる。これは化け物だ。自分なんかじゃ勝てない。死だ。もう死ぬのかもしれない。と様々な感情が入り乱れた。
そしてクマの口がゆっくりと開いた。
「コロス……」
蓮は目を背けた。
クマが蓮の顔面目掛けて突いた。
「……えっ?」
クマの爪は眼前にて止まっていた。
蓮がクマを見ると、山の方を見つめていた。犬の唸り声のような声を上げて、何かに反応している。
同じように山へと目を向けると、山の1箇所が眩い光が激しく点滅していた。
蓮には分かっていた。その光の正体が──
その正体は秋が持ち上げている刻印石だ。
数時間前と同じで脈絡もなく突然光出した。バレてしまうと、秋があたふたしてしまう。
「石がまた光り始めた!?」
「また!?どうゆう事だよ!?」
「私が知りたいわよ!さっきも激しく発光してわけが分かんないよ!」
「光を静める方法はあるのか。敵にバレるぞ!」
「わからないわよ!」
二人が言い合いをしている間もずっと石は点滅を続けている。
だが、クマは二人以上に反応を示していた。
「ウガァァァァ!!」
クマは雄叫びを上げ、蓮を無視して何メートルと高くジャンプし、秋達へと標的を変えて足早に向かった。
蓮は二人に向かって叫んだ。
「二人共!クマさんがそっち向かったぞ!」




