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刻印戦記-Crimsonuniverse  作者: ワサオ
1-①紅と黒
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5.繋がりを断つ憎しみ


 近藤先生と翔吾君の件で学校は大騒ぎになり、午前中で生徒達は帰宅させられた。僕と真紀は近くで目撃した為、警察などから色々と聞かされて、帰るのが何時間も遅れて、外へ出れたのは昼頃になった。

 翔吾君が今、どうなっているかは分からず、何故あんな行動に出たのか。あの飛んで来た包丁はなんだったのか。そして僕自身に何が起きたのか。

 帰路に立ちながら色々と考えていると真紀が心配そうに顔を覗かせて来た。


「鷹斗、大丈夫?」

「あ、あぁ。だが、俺自身に何があったんだ。昨日の事から、身体がおかしい」

「昨日? 昨日からさっきの能力が?」


 俺は昨日の出来事を真紀に嘘偽りなく話した。

 真紀は少々困惑するも、冷静に頭の中で話を整理した。


「現実的な話ではないわね……でも、あんたが轢かれても生きてる事ははっきりと分からないけど、さっか私を助けてくれた時の能力。嘘とは言えないよね。証拠もこの制服の焦げがあるし」

「信じてくれてありがとう。だが、もう一つ謎があるんだ」

「ん?」

「お前を助けようとして時、何故包丁が飛んで来た? 包丁付近には誰もいなかったはずだ」

「先生達も翔吾君の事でてんやわんやで誰もあの付近にはいないはず」


 一体何故飛んで来たのか、翔吾君の異変と何か関係があるのか? そして僕の謎の能力の事。謎は増えていくばかりであった。


「僕の見間違いだと良いんだが……」

「見間違いとしても、包丁が飛んでくる事なんて──」


 僕達は今日起きた事を話しながら歩いていると、僕は足を止めて近くの本屋さんに立ち寄った。


「本屋さんに何の用?」

「何か近い情報があるかも知れないと思って……」

「近い情報って何?」

「魔術とか……何か超能力とかだよ。何かあるはずだよ」


 僕は本屋に入り、雑学コーナーへと向かい色んな本を探した。超能力・人体の不思議などと色んな本を調べたが何も今の自分に該当する本は一切なかった。


「該当する書物がない……」

「あるわけ無いわよ。そう簡単には」

「……ところで真紀は何の本を持ってるんだ?」


 僕が聞くと真紀は嬉しそうに僕に見せつけてきた。


「魔界の悪魔辞典の本とか、天使辞典の本とか色んなのが載ってるのよね。私こうゆう本好きだから買おうと思って」

「魔界とかどうでも良いよ……それよりも何か手がかりがないものか」

「なら、私も出来る事を手伝うわ。今度図書館にでも行こうよ。昔の本とか見れば、少しは何かあるかもしれないし」

「そうだな。ありがとう真紀」


 真紀の顔を見たら少しは気分が落ち着いた。

 真紀は本を買い、僕は手伝ってくれる真紀に感謝して僕達はその日は別れた。その日もずっと考え事をして中々寝られなかった。やはり、あの飛んで来た包丁は誰かが僕や真紀に向けて飛ばして来たのか。

 この日僕はあの謎の力は発動する事なく一日が終えた。



 夜になって俺は家に帰った。まぁ、どんだけ遅くても親とかは別に心配はしていない。むしろ、帰って来た方が嫌だろうしな。

 玄関の前で、学校で待機中の翔吾をテレポートさせた。


「うわっ!」

「ここが俺の家だ」

「こ、ここが……」


 驚いても無理はない。玄関先にはゴミ袋がそこら中に散乱しており、年がら年中ハエが集る程の異臭が常に放たれている。

 翔吾はまだ、戸惑っているが肩を叩いて俺は先に家に入る。


「ここで待ってろ。逃げるなよ」

「え?」

「奴を黙らせる」

「奴?」

「あぁ、この世で一番嫌いな奴だ」


 家はボロく、玄関内もゴミ袋が散乱しており、ゴミ袋内にはビール缶や酒の瓶が無造作に詰め込まれており、かなり腐敗臭が漂う。

 家の中もゴミまみれで、周りの家からもゴミ屋敷と言われているらしい。

 足の踏み場もない中、リビングから汚らしい笑い声とテレビの音が暗い家の中に響き渡っていた。リビングに行くと、笑い声の正体、クソ親父が酒を飲みながら笑っていたのだ。


「あ、劉生か? 一日も何していたんだおい。死んだ思っていたんだぞ?」

「まぁ、死んだっちゃあ死んだけどな」

「あ?」

「いや、何でもない」


 このクソ親父め。俺の母親はもういない。物心つく前に愛人を作って出て行った。それも、親父に毎日のように暴力を振るわれて。だから、愛情も知らずに顔も一切知らない。だが父は気にする様子もなく、新しい愛人を何人も見つけて、呑気に生活している。

 あんな奴らの息子であるなんて、俺の人生の汚点だ。


「おい、劉生。帰って来たばかりで悪いが、酒買ってこいや」

「あ?」

「今日も頼むぜ。金は渡すからよ。釣りはやるよ」

「もう、そんな事する気はない。自分で買いに行け、クソが」

「あ?今、何て言った?」


 親父は瓶片手に持って立ち上がった。


「行くなら自分で行けと言ったんだよ。クソ親父が」

「歳的には反抗期だとは思っていたが、そんな口を叩けるようになるなんてな」


 親父も昔は悪で有名だった。喧嘩も強く、多くの手下がいて、武力であらゆる悪事を働き、逮捕された事もあるらしい。だから、昔から最近まで俺は親父の使いっぱしりをして来た。

 だけど、今はもう違うんだ。俺は親父に従う必要はもうないんだ。

 親父は突然俺の胸ぐらを掴み上げて、壁に叩きつけて来た。


「歳はお互いに取りたくないとは思っていたが、やっぱり嫌だよな。これ以上、怒らせない内に買って来いよ!」


 親父は俺の顔を何発も殴りかかって来た。だが、全然痛みなんて感じなかった。昔はこれだけ殴られたら簡単に従ったが、もうそんな必要はない。


「そんなもんかよ。親父の拳は」

「まだ、殴られたいのか!? 従うまで殴り続けてやる!」

「へっ、笑わせるなよ。お前みたいな蟻以下の低俗に従うわけないだろ。お前が従えよ、俺に!」


 親父が舌打ちをすると共に拳を見せた時、俺は力を込めた。俺はこんなクズには絶対に従わない。

 親父の動きは止まり、拳は眼前にて止めた。


「な、何!?」

「親父は超能力とか信じるタイプか? いや、昔テレビで超能力者をバカにしていたっけなぁ」

「何だ一体!? 劉生!」


 親父は驚いていた。何の仕掛けもないのに、拳が思ったように動かない。こんな事は普通に生きていれば、味わえない出来事だろうな。


「俺は人間を超えたかもしれないんだ。今までのお礼をたっぷり返してやる。親孝行ってやつだ」

「ひっ!」


 俺は力を使い、家の中の包丁やナイフを目の前に出現させた。


「人って、どんだけ刺せば死ぬと思う? 親父、答えてくれよ」


 ナイフらを親父の周りに浮かせて、徐々に親父へと近づけてた。

 その光景に親父の恐怖に青ざめた表情は、初めて見て情けなくて笑いが出るほどであった。


「こんな事したって警察にいずれ逮捕されるんだぞ!」

「そんなの上等だ。今の俺には敵なんていない!」


 命乞いする親父にムカつき、ナイフや破片はゆっくりと親父の皮膚に刺さり始めた。

 皮膚を貫き、肉へと到達すると大きな悲鳴が永久的に響き渡った。

 親父は苦しみながらも俺の手を握りしめて、目で助けてと訴えてきた。だが、俺は手を振り払わずに耳元で言う。


「お前は覚えちゃいないだろうが、お前が殴ろうとする度に俺はやめてと何度も言った。でも、お前は止める事なく笑って殴り続けた! その気持ちが分かるか? 痛かった、ダチや先公に心配されるのが嫌だった。だから、ずっと夏だろうと長袖を着て生活していた!」

「うわぁぁぁ! た、助けてくれ! 昔から殴ってすまない。許してくれ!」

「許しを乞うなら昔の俺に言うんだな」


 俺はナイフを中途半端に刺したまま、次に左手で力を込めて親父の首を力強く絞め始めた。


「簡単には殺さんぞ。苦しみをじっくり味わって、息子の手によって殺されるんだ!」

「ぐっ……や、やめ……」


 簡単には殺させず、ゆっくりとじっくりと苦しみ踠きながら、生きていることすら後悔させて死んでもらう。昔の俺を思い出しながらじっくりと。

 首を能力で掴んでいるが、奴の心臓の鼓動は伝わって来て、徐々に激しさを増してくる。


「死が近づく気分はどうだ。俺は気分がいいぞ」

「あ、あ……」


 口数が減り、口から泡を吹き出し始めた。暴れていた親父の動きもゆっくりとなっていた。心臓の鼓動も遅くなり、そして親父の心臓の鼓動は静かに時を止めた。それは俺が人間としての時も止め、別の存在へと移行して新たな時を刻み始めた。

 だが、俺は人を殺した。それも親だ。力が抜けて、壁に背を向けて腰を下ろした。

 親父の屍を見て、俺の手は激しく震え、身体からゾクゾクと変な寒気が走った。部屋の中には自分の心臓の鼓動と、テレビから聞こえてくる笑い声のみが聞こえて来た。


「こ、殺した。親父を……ふふふ」


 だが、震えや寒気はすぐに消え去り、涙が何故か流れ笑いへと変わった。心の底から笑いが響き渡った。


「は、はは! ははは!」


 もう戻れない。この力が全てを変えて、俺自身を別世界へと連れて行ってしまった。親父が仕事を来ないことに疑問も持ち、いずれ、警察が親父を捜索するだろう。

 この能力を使って証拠を消すしかない。俺は翔吾を家の中へと入れた。


「入れ。用は済んだ」

「う、うん。何か凄い音が……はっ!?」


 翔吾は親父だった骸を見ると、その場で腰が抜けて倒れ込んだ。


「し、し、死んでる……まさか、君がやったの?」

「こんなところにあって邪魔だ。最後まで面倒をかけさせてくれるな。お前は土でも掘ってくれや」


 俺は家の中にあるスコップを手元にテレポートして、翔吾へと投げ渡した。だが、翔吾はスコップを手放した。


「君は親を殺して、何とも思わないの!?」

「そうだ。愛もない親に何か思うか? 嫌なだけ悪さして、一人嘲笑っている奴に生きる価値はない」

「君のお母さんだって──」


 俺は翔吾の首に力を込めて、首を絞めた。


「うっ、うぅ!」

「それ以上言ったら殺す。黙って、土でも掘っていろ。それが終わったら、ゴミのお片付けをしてもらう」


 力を緩めて首に掛けた力を解くと、翔吾は何度も咳き込んだ。


「がはっ! がっ!」

「匿ってやってるんだからこれくらい当然だ。雑用でもしてな」

「はい……」

「後でコンビニで弁当買ってこいよ」

「……僕が?」

「当たり前だろ」


 翔吾は無言でスコップを持ち上げて、庭の土を掘り始めた。

 俺は部屋に転がっている漫画雑誌を片手にテレビを見る事にした。だが、今日ほどテレビの内容が入らなかった日は初めてであった。

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