【Part25】ヤバい奴と出会った!?一触即発の危機に?
ウルフは咄嗟の判断で行動して腰の銃を抜き取り、銃口を東児の膝に向けて引き金を引いた。
その時、東児の糸がウルフの腕に巻きつけて、咄嗟に腕の方角を変えた。そして銃弾は放たれ、東児の右耳を掠って、壁にめり込んだ。
「や、ヤバかった……」
「ちっ、やはり厄介だな。その力は!」
ウルフは右足で東児の顔面へと蹴りを放った。
それに対して、東児はまたも糸を放ち、右足の付け根辺りを糸が巻きつき、ウルフの体勢を崩す。
だが、ウルフは倒れる最中、蹴りの対処をした東児の一瞬の隙を見て、糸で縛られてない左手を使い懐からナイフを取り出して右手と右足を縛る糸を素早く切った。
「何!?」
ウルフは体勢を整えて、東児から一定の距離を取り、無線にて仲間に連絡を入れる。
「俺の部屋の前に対象物と交戦中。今すぐに増援を寄越せ」
東児はまさか対処されるとは思っていなかったので、驚きを隠せなかった。
「くっ!」
電話中のウルフに卑怯と分かっている中、糸を放ち捕獲しようとしたが、ウルフは先程の糸を切ったナイフを再び振り、目視が難しい糸を眼前にて切った。
「ま、マジかよ!」
「貴様の糸は光に照らされる。見えない糸だろうが、照らされれば、目視は簡単だ」
ウルフは銃とナイフの位置を持ち替え、銃を腰にしまい、銃をいつでも抜けるように構えた。そして東児の両手を凝視しながら、ゆっくりと距離を詰める。
東児は糸を見破られた事、それに実験経験なんてない。これは怪我をするかもしれないと言う考えが頭によぎり、ジリジリと後退していく。
刻印でどうにかなるだろうが、敵が敵なだけあってその可能性は0ではない。糸の刻印は使い勝手は良いが、糸を放つと両手がガラ空きになる。糸を放ち、ナイフを持った手を押さえてももう片方の手から銃で撃たれる可能性がある。
後退しすぎて背中が壁にぶつかった。
一瞬だけ意識が壁に移った瞬間に、ウルフは動いた。腰を屈めて一気に距離を詰めた。目の前まで接近して、ナイフを突き出した。
「ちっ!」
東児は瞬時に判断した。自分の顔の前に手を出してナイフを人差し指と中指の間に入れ、ウルフの手とナイフを近距離にて受け止めた。そこから握ったまま糸を放ち、ナイフと手に巻きつかせて、動きを抑えた。
それと同時に、もう片方の手にも糸を吐き、全ての糸を放って動きを止めた。
だが、ウルフはそれを分かっているかのように冷静に対応した。ナイフの持ち手にあるボタンを押した。ボタンを押すとナイフの刃の部分がロケットのように飛び出した。
「!?」
喉元に飛んできたナイフ。東児は喉元に当たる事を覚悟した。だが、喉元に到達寸前にナイフは動きが止まった。一本の糸がナイフに絡みつき、その動きを止めていた。手の糸は全てを使い果たしていた。その糸は下から上がって来ていた。
下を見ると──
「あ、足!?」
糸は裸足の足からも出ていた。ずっと手から出していたし、足から出そうなんて思った事もなかった。
ウルフもこれには驚いた。
「やはり、研究し甲斐があるな。余計に捕まえたくなった」
「今、殺す気満々な奴がよく言うぜ。でも、俺は捕まりたくはない!」
「だが、簡単には逃さんぞ」
ウルフは両腕が縛られていながらも、距離を詰めて東児に頭突きを喰らわせ、更には腹部に膝蹴りを食らわせた。
怯んだ影響で糸の縛り付ける力も弱まり、両手を縛る糸が緩んだ。そして、ナイフの刃先も落ちた。
至近距離で銃を撃とうとするウルフに東児も反撃して、足の糸で地面に落ちる寸前のナイフの刃先を拾い上げて、刃先で銃を弾き飛ばした。
ウルフがすかさず、もう片方の手で殴ろうとすると、東児は真っ向から突っ込み、拳を顔面に受けながらも突き進んで逆に殴り返した。刻印の力で強靭に身体になった東児には拳のダメージは少ないが、ウルフは大ダメージを喰らい何メートルも吹き飛んだ。
「ぐふっ!」
「……やっぱり至近距離なら拳の方がいいや」
倒れたウルフは立ち上がる事はなかった。
「こんな所で時間を食ってる場合じゃない……急いで外に」
立ち上がらない事を確認すると、東児はさっさとその場を後にした。
だが、背を向けた時ウルフは腕を上げた。そして裾の間から何かを放ち、何か粒状な物を東児のズボンに引っ付けた。
東児が走り去っていくと、反対側から遅れてウルフの部下達十名ほどが早足でやって来た。
「大丈夫ですかい!?」
「あぁ、少し顔が痛むだけだ。それよりも奴を追うんだ。多少負傷させても良い。捕獲が最優先だ。それと将生の部屋と地上の部隊にも付近を捜索するように伝えておけ。奴らの仲間が彷徨いているはずだ」
「分かりました!」
その後、東児は少ない充電のスマホを眺めて、ここに来てから撮り続けた写真を見て、逃げ口を探しながら逃げ続けた。
目の前にウルフの部下の傭兵らが現れては敵が撃つ前に糸で手を縛り、足へと糸を放って縛り付けて行動不能して倒していく。
だが、行くとこ行くとこ敵が待ち伏せされて、行動が徐々に制限されていく。何階か上がっていくも、警備が手堅くなり、脱出に時間がかかってしまう。
「くっ、監視カメラで動きが制限される。やってくれるな。だが!」
そう言いながらも東児は星夜との合流の為に、敵をぶっ飛ばしながら地上一階にまで進んで行く。
監視室──研究所内や研究所の外の監視カメラを何人もの職員が確認していた。東児が映れば、その場所をウルフの傭兵に連絡を入れていた。
「対象は一階へと進んでいる。搬入口に向かっているようだ。すぐに向か──ん?」
外の監視カメラの一部の映像が途切れ、続けて別の外の映像も途切れ、伝染するように外の映像が全部途切れた。
「な、何だ?何が……?」
更に研究所内の映像も途切れて、アラームも鳴り止んだ。
職員達はすぐに対処をするも、ボタンを押しても何も反応せず、手を離して唖然とするだけだった。
「何が起きてるんだ……」
*
謎の現象のお陰でアラームは鳴り収まり、静まり返っていた。東児も少しだけ心休まった表情で搬入口を観察する。
「やっとやんだか」
搬入口には誰もおらず、静かな雰囲気になっていた。
「ここを抜ければ……」
東児が足を踏み出した。
その時、搬入口のトラックや車の隅から何十人もの銃を構えた傭兵達が一斉に出てきた。
前も後ろからも現れ、逃げ道を失った。
「さぁ、観念しろ!」
東児は壁に背を付けて、周りをもう一度見渡しながら言う。
「くっ……一階の搬入口まで来て捕まっちゃうのかよ!あと少しだったのによ!」
「手を挙げて、床に伏せろ。下手な真似をしたら手足を撃つ」
「撃つって実験体だろ俺って。なのに、殺す気満々じゃねぇか!」
「黙れ。手の甲が見せて刻印を発動してないかをこちら見せるんだ!」
「分かったよ!」
東児はゆっくりと手を挙げて手の甲を見せて、刻印を発動してないことをアピールして地面に伏せた。
手錠を掛けようとした時。突然、搬入口のシャッターが上がり始めて、傭兵ら不思議に思い、すぐに東児へと向き、銃を突きつけて問う。
「何かやったか!」
「手の甲見ただろ。発動してねぇよ俺は」
「俺らが知らない力があるやもしれない」
何か変だと思い始めて、ウルフへと連絡を入れようととするが──
「ウルフさん。すぐにこちらへ──ん?」
「うん?無線の反応が?」
連絡を入れようとしたが、ずっとノイズが流れるだけで誰にも連絡が入れる事ができなかった。
「ん?」
その時、エンジンが外から聞こえて来た。
何人かが外を確認すると、遠くから一台の車が搬入口の何十メートルも向こうから、激しくクラクションとパッシングを行って、猛スピードでこちらに走ってきた。
咄嗟に傭兵達は銃を向けて、止まるように呼びかける。
「止まれ!止まらないと撃つぞ!」
もちろん呼びかけに応答する訳でもなく、車はクラクションとパッシングをやめず、更に勢いを増して迫ってきた。
パッシングで眩しいのか、傭兵らは車を直視できず、とにかく車を止めようと銃を撃とうとした時、東児は周りの傭兵らも車に気が散っている事を確認して動いた。
「はっ!」
東児は糸を手足から全て放ち、周りを取り囲む数人の傭兵らの銃を奪い取り、足を引っ張って転ばせた。
すかさず東児は立ち上がり、車に銃を向ける傭兵らにも背後から糸を放って、身体をぐるぐる巻きにして身動き取れないようにして倒し、その場にいる全員をグルグル巻きにした。
車は東児の前に止まり、窓をゆっくりと開けた。
そこには──
「お久しぶり!いい腕じゃんか!」
紛う事なく星夜の姿だった。いつも登校の感覚で現れ、手を差し伸ばしてくれた。こんなにも会えて嬉しいと思った事はなかった。信じていた、絶対に来てくれると。
星夜の姿が、とても眩しかった。本当は抱きしめたいくらい感謝を述べたかったが、その気持ちを抑えて平然を装って車に乗り込んだ。
「あぁ……予想通りだったな」
「泣いてんのか?」
目元を手で触れると何粒かの涙がこぼれていた。
無意識に涙が流れていた。これも嬉しさ故だろう。
「そうかも……な。ここから出られる事が嬉しくて」
「なら、さっさと行こうぜ。ここから映画ばりの大カーチェイスが始まるぜ」
「あぁ!」




