【Part24】捕まっていた俺だったが、脱出して研究所内をリークした!
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時を同じくして、研究所内──東児はスマホを糸で引き寄せて、ダクトの板の上に置いてそこで星夜とやりとりをしていた。
少しだけこの生活に慣れてしまったのか、何処か気の抜けた感じであった。
そんな東児の隣の部屋では、東児と共に研究のため、アメリカへの出発を控えている将生が職員達と共に色々な資料を段ボールに詰めていた。
その手伝いをしている職員が天井を見つめる東児を見てつぶやく。
「ここ最近ずっと上向いてますね」
「やる事もなくて、退屈なんだろう。資料を段ボールに詰めて、明日の出発に備えよう」
「……はい」
と再び作業に戻り始める職員達。
その時、職員がふと東児を見た時、東児は天井に向けて、口をパクパクと開けて何かと喋っていた。
それに気づいた職員の一人が気になって部屋のマイクのボタンを押して、ガラスの向こうにいる東児の音声が流れてくる。
『──かな。俺が顔出しするかって?あぁ、今から出るさから、その時にカメラオンにして顔出しするさ。バレるのも時間の問題だしな。脱出は皆んなにもその様子を見てもらうよ』
「何を話しているんだ一体」
『脱出手段はあるさ。今は企業秘密だけどな』
「な、何だ?」
その音声に全職員の手が止まり、将生はゆっくりとガラスの前に立った。マジックミラーのため、東児からは確認できない。
「将生さん。どうします……誰かと連絡を取っているのでしょうか?」
「そのようだ。今すぐにウルフさん達に連絡を」
「分かりました」
と職員が部屋の電話でウルフに連絡しようとした時──
「なっ!?」
職員の足が突如、動かなくなり両足とも踏み出せなくなった。
「早く連絡をしてくれ!」
「あ、あしが……」
「何?」
将生は職員の足元を見るが何もなく、何が起きているのか理解ができなかった。だが、職員の足元から東児の部屋へとドアにかけて、きらりと光る糸が見えた。
それに気づき東児の部屋を覗くと、こちらを見つめてニヒルに笑って人差し指を横に降っていた。
『おいおい、まだ視聴者と話している途中でしょうが。演出がなってないよ職員さん達』
将生が咄嗟に緊急時の非常ボタンを押そうと手を伸ばした。東児は見逃さず、指から糸を出してドアの小さな隙間をすり抜けて将生の腕に糸を絡ませて引っ張り、ボタン直前にて動きを止めた。
更に糸を出して、もう片方の手も糸を巻きつけて身動きを取れなくした。
『そうはさせないよ。今、あんたらには静かにして欲しいからな』
「くっ……あれが糸の力の刻印か」
『あんたらが言う刻印だよ。なぁに、グルグル巻きになってもらうまでだ』
東児は部屋内の職員全員にめがけて糸を出し、身体をグルグル巻きにして身動きを取れなくした。
「ぐっ!
「俺が部屋から出たら解除してあげるからさ。痛ぶる事をしなかった事への敬意だよ」
「誰か!警備員を!」
「無駄でしょ、その部屋は防音室だって事くらいは知っている。叫んだって誰も来ないのはアンタらが一番知っている事だろ」
「くっ……」
東児は天井のスマホに向けて指を刺して、視聴者に対して言い放つ。
『みんなよく見ろ!刻印の力を使った大脱出劇の始まりだ!最高の夜はここからだ』
通気口へと一本糸を放ち、蓋に巻きつかせ、力強く引っ張ると軽々とぶち抜かれて、落ちて来たスマホをキャッチした。
その画面は真っ暗だが、大量のコメントが流れている。早く顔出せだの、どうせヤラセだの、炎上不可避だのと一杯書かれている。
「一線を越える瞬間なんて分からないもんだよ。そんな一線を俺らは越えちゃったんだよ。でも、一線の境目に線を引くことが出来た。今ごろ引いてる時点でもう遅いけどな」
手足につけられた硬い拘束具を確認すると、身体全体の力を込めた。
「はぁ!」
引き抜くように力を入れて両手両足を勢いよく上げた。すると拘束具がベッドから引き抜かれ、拘束具は両手両足についたままだが、ベッドからは離れる事に成功した。
将生もこれに驚きを隠せなかった。
「な、何!?」
「ちっ、これは取れなかったか」
ベッドから降りると糸を放ち、隙間を抜けて内側からパスワードを打ち込んで簡単に開けた。
「何故パスワードを!?」
「感謝をするよ。俺を丁重に扱ってくれたお陰で、この施設内を隅々まで見る事が出来た。じゃあな将生さん」
「名前までも?」
「刻印は様々な可能性が秘めていると言ったのはあんただ。それが答えさ」
「まさかドアのパスワードも!?刻印の力で!?」
「そうゆう事。今しばらくはそのままでいてもらうから、お世話になりました」
東児はまた糸を放ち、扉の奥に人がいないか確かめて、ドアから出て行った。
廊下はあちこちにドアや部屋、出入口があり、まるで迷路のような状態だ。
研究所内の位置はある程度は把握済みだが、無事に出られるかは不確定。
「今から画面ONにする。さぁてどこからでようか──」
その瞬間に研究所内に激しいアラームが鳴り響きだした。どこに監視カメラがあるのか探したが、何処にも見当たらなかった。それよりもいきなりの出来事にあたふたする
さらにアナウンスが流れた。
「重要な実験体が逃走!現在B5階、R3研究室の前!速やかに捕獲せよ!」
「うわぁぁぁ!失敗は付き物というが早すぎる!早速ばれた!みんなすまん一旦配信切るわ!」
と慌てて配信を切り、星夜に電話を掛けた。
*
その頃、外で待機している星夜は東児の生放送を確認しつつ、流れてくるコメントと戯れていた。
「大丈夫大丈夫、もうそろそろ合図が来るって。俺も用意すっからみんな見ててくれよ」
のんきに話していると研究所方面からアラームが外にまで聞こえてきた。
音声からも東児が慌てている声が聞こえてきた。
「言った通りだよ、生配信には事故が付き物だって。みんな予定通りだけど、予想外な事が起きた」
コメントの受け答えしながら、今すぐに動けるように準備を始めた。
そこに東児からの電話がかかって来た。電話に出ると、電話越しにアラーム音が鳴り響く研究所内から東児が大声で話して来た。
『おい、予定通りだけど、予想外な事が起きた!』
「うるさッ!てか、久しぶりの会話が被りって何だよ全く。とにかく、頑張って外へ出ろ。その間にお前から送られた動画を全部アップする。少しは内部で混乱が起きる……と思う!」
『やならないよりはマシだ。頼むぞ』
「おう!お前も何とか脱出しろよ。お前が出て来たら、大きな音か何かで合図を送る!」
『あぁ、分かった!』
東児から電話を切り、星夜は準備を急ぐ。
その頃、秋や蓮は刻印石を運んで、トラックの荷台に縛り付けていた。その最中、蓮は星夜と東児の生放送を見ながらトラックの発進を待ちながら、星夜が話していた東児の動画をアップロードを始めた。
「もう事故ってじゃんか」
「あの二人なら大丈夫よ。きっと」
「だと良いけどな」
*
アラームがなる研究所の中、銃やその他の武器などを身体に装着していく。その最中でとある人物と電話をしていた。
「あぁ、脱出されたようだ。動画サイトで配信もしている。外と中からの二つからダチと助けるだとよ。何処からかここにいる情報を手に入れたようだな」
『まぁいい。刻印とやらに資金を投資した企業や組織が多数現れた。成功したら何倍も報酬を弾むぞ』
「ありがたいお言葉だが、欲しいの報酬じゃない。俺のプライドの問題だ。刻印の力を目の前に俺はガキに負けた。ガキ如きにだ。完璧主義な俺にとっての最大の汚点となる。きっちりとこなさせてもらう。俺の倍額の報酬は俺の部下にでも渡してくれ。そっちの方がやる気が出る」
『珍しく、口調が荒いな。その言葉を信じる代わり、失敗は許されないぞ』
「もちろんだ」
電話を切り、武器を装着し終えて被り物を被り、足早に駆けた。
報酬よりも勝敗。子供に負けたレッテルがそこまでウルフを動かしている。プライドの為に、勝利を掴む。そう考えながらドアを開けた。
そこには──
「もうすぐで非常口のはずだが」
「……」
「うえ!?」
目の前に東児がいた。周りをキョロキョロとしていたが、ウルフと目が合った瞬間、全身から嫌な汗が流れ始めた。
それにウルフもその場で止まり、互いに目を見つめ合った。
「……マジかよ」
「そのまさかのようだな」




