【Part22】放送開始まで後48時間
家から出てすぐさま学校へと向かおうとする。
角を曲がると、そこにはあの男がいた。
「やぁ、久しぶりだね」
「木田さん……でしたね」
星夜は驚き、何歩か後退りしてしまった。
やっぱりニコニコとしている木田。その顔もまた不気味で何を考えているのか分からない。自分を捕まえに来たのか?と身構えた。
「落ち着け落ち着け少年よぉ」
「貴方、都合よく色んな場所にいますね」
「まぁ、仕事柄ね」
そう言うと木田の目つきがガラリと変わった。優男風な目つきから無表情にも近い顔と見下すように細い目つきで語り始めた。
「君が今から何をしようとするかは自由だ。だけど、その力には代償が伴う。それだけは理解してくれよ」
「やはり知っていたんですね。刻印の力を」
刻印の名を聞くと、木田の眉がピクリと動いた。
「君も十分に詮索したんだな。刻印の力を使ってどう感じた?」
「凄いの一言」
「ごもっともな回答だね。その様子だと、僕が何を言っても意見を曲げそうにないね」
「止めようとするなら、アンタ諸共ぶっ飛ばすだけです。友達一人が行方不明になったり死ぬくらいなら、俺は同じ道を歩むか死地に飛び込んでやる」
「僕らは信用していないって事?」
「あんたらを信用していないと言うよりも時間がないとだけは伝えておきます」
「その言葉だと、相手側の情報も所持しているようだね。友達が誰に捕まり、どこにいて、どうなるか分かっているって事だね」
「そうです。ですが、話す気はないですよ」
「分かってる。今の君は刻印の持ち主だからね」
そう言って木田は星夜の前から退き、道を開けた。
「……」
「君がどうするかは自由だ。もしドンパチするなら犯罪者として君を捕まえる」
「ご忠告ありがとうございます。逮捕はご自由に。後、盗撮はやめて下さいよ。プライバシーの侵害っすよ」
星夜は冷静を装って、軽々しい態度をとりながら横を取りすぎて走って行った。
木田はすぐにスマホを取り出して、部下達へと連絡を入れた。
「他二人の追跡も中止だ」
『ですが──!』
「無理矢理止めた所で、我々に二次災害が起きると共に敵さんにも勘付いてしまう。簡単には死なないさ。刻印はね」
『上の命令が──』
「それと、監視しているご家庭の監視カメラも外しといて。彼らの前じゃバレバレのようだ」
木田の言葉に部下は疑問をぶつけるも、無理矢理電話を切り、走り去っていく星夜を見つめた。
その後ろから気配もなく、有が背後に立っていた。
「後ろに立っているならそう言ってくれよ。君は影が小さいんだから」
「それが性分ですから。また追求せずに捨て置くんですか?」
「刻印は強いからね。彼の友達を助けるくらいは余裕で出来るでしょ。銃撃くらいなら簡単に避けれるし」
「そうですけど……今回は真面目にすると思ってたんですけどね。彼らを放置ですか?」
「うん。そっちの方がいい結果が出ると思って」
「予言者になったんですか?」
*
星夜は学校には行かず、放課後まで廃ビルに集結して車などの点検や簡単な操作確認や運転練習をした。そして放課後になってから学校へとこっそり侵入していた。
「2日後の夜中に実行すると言うことだが、緊張しているか」
「当たり前よぉ。こんなのドキドキが止まんないよ。それに学校にお泊まりなんて、幼稚園の頃のお泊まりを思い出すし」
「あのなぁ……」
何処か楽しそうな秋を見て呆れる星夜だが、逆にこれくらいリラックスしてた方がいいのかもな。と星夜も考えた。
そこにブラウン管テレビを持って来た蓮も来た。
「そのテレビは?」
「職員室から持って来たよ」
「まぁ、やる事ないからゲームすっか」
「そう思ってね。レースゲームのコントローラー持って来たから」
テレビを置き、大きなバッグからゲーム機とソフト、コントローラを出した。それを星夜と共にセッティングを始めた。
「本番と思って運転練習するぞ!」
「うん!」
「それと明日も車の運転の練習をする。失敗は許されないからな」
「もちろんだよ」
そこに秋も混ざり、二人に背後から抱きついた。
「明日は忙しくなるよ!」
「いてて!」
「私にも運転の練習させてよね」
「いいぜ、勉強程度には覚えた方がいいからな。ただし車を壊すなよ。片方壊れたら、作戦めちゃくちゃになる」
「勿論だよ。私が壊すわけ無いじゃん」
「……不安だよ、全く」
一応秋の運転練習を承諾した星夜であった。
三人はその後、二日後が作戦開始とは思えないほど楽しく過ごした。
*
一方で東児がいる研究所──作戦決行が迫っていた。
研究所で毎日職員らから簡単を検査を受けつつ、刻印の研究を進めていた。だけど、この世のものとは違いナニかである、刻印の研究は進む訳なかった。
『何故、何も発見が出来ない』
『血液を何度分析しても反応が出ず、脳波を調べても変化は出ません』
『体内からの熱反応もなく、発動による体内の変化は起きない。刻印という力には科学的力とは別の力が働いたいるとでも言うのか……いや、科学で説明がつかない事はないはずだ』
『ですが、何度も検査をしても結果が出ないとなると、このまま少年を捕縛しているも──』
『だが、刻印の力を人工的に操るか作り出す事が出来れば、世界を一変する事が出来るんだ!』
周りの職員は諦めムードを出しているなか、将生だけは諦めてはいなかった。いつもは冷静なのだが、今に限って語尾を強く言って調べ続ける。
彼を何が動かしているのか分からない。でも、必死にパソコンのキーを叩き、血眼になってもいた。
誰も口出しできない状況に困り果てていると、ウルフが部屋に入ってきて真っ直ぐと将生に向かう。
「研究熱心は良いが、独りよがりはチームの輪を乱すぞ」
「ウルフさん……でも」
「落ち着け。もどかしい気持ちは俺も同じだ。だが聞け。ここでの研究は一度ストップだ。三日後にアメリカの研究所に移動する」
いきなりの発言に将生は慌てずにはいられなかった。
「で、ですが!」
「あのガキ共のせいで、ここは注目を浴びている。もしもの事を考えて、アメリカへと研究を移す事となった。俺からお前の事も伝えておいた。アメリカに行くぞ」
「アメリカに?」
「この肩身が狭い国ではここも怪しまれるのも時間の問題だ。上からの連絡で、あのガキとクマを連れていく事になった」
「クマさんも!?」
「あんたらが打った薬がとんでもないほど、身体への負担が重くて、精神が人間と動物の間って言えばいいのか。理性が崩壊し始めている。それに刻印を倒す事に執着して、いつこの研究所から逃げるか分からん」
「……分かりました」
研究に行き詰まりを感じ始めたのか、自分が何処かへと運ばれる話が進んでいる事ようだ。もっともっと大きな研究所があると言う"アメリカ"に。
ウルフは伝え終えると背を向けて部屋から出ようとドアの前に立つ。
「この事は後から上からも伝えられるだろう。準備を急げよ」
「はい……」
ウルフはそう言って部屋を出て行った。
東児は思った。時は迫っている。
そしてもうすぐで始まる。
自分も覚悟を決めて脱出する。始まりが近づく。奪還作戦と破壊作戦。
両者の作戦はまもなく始まる。




