【Part21】決心しました。
「お母さんに言って。本当に星夜が関わってないか」
母の言葉に一瞬の戸惑いを見せたが、何かを感じた星夜はゆっくり階段を上がりながら答えた。
「東児がどうなったかは俺は知っている。でも、今は教える事は出来ない」
「えっ」
「それを言えば、俺らが困る事となる」
「本当に知っているなら教えてよ。そうしないと東児君の行方や場所が──」
「だからこそ、教える訳にはいかないんだよ母さん。こんな馬鹿でわがままな息子を許して」
「星夜!」
星夜は話を切り、逃げるように部屋へと逃げ帰った。
だが、母は追うことをせず、星夜の背中を静かに見守った。
「星夜……」
部屋に入り、部屋内を見渡す星夜。
星夜は感じていた。いつもとは違う空気感や、親のぎこちなさが気になった。
星夜はおもむろにスマホを取り出して蓮へと電話を入れた。
電話入れるとワンコールした時点で蓮が電話に出た。
『どうした星夜。まさかそっちも?』
「そっちって、お前も同じ状況か?」
お互いに何かを気づいていた。
蓮はヒソヒソと話し始めた。
『うん。家の近くに通りがかった時にいつもとは違う複数の人が歩く風の流れを感じた。ずっと僕の家を周りを。まるで、僕の動向を伺っているように。それにお母さんもお父さんも何処かぎこちない感じがして。クリーンフォックスかと思ったけど、それなら僕達を東児のように襲撃していると思うんだ。だから、警察というか政府が僕達を完全にマークしていると思う』
「俺ん所の母さんも同じだ。それに部屋内に複数の監視カメラが仕掛けられていた。やはり俺達がまた何かしでかすかを監視しているんだろう。ここまで来て、止められてたまるか」
『僕も同じだ。秋にも連絡を入れといたから、明日は荷物まとめて時が来るまで何処かで隠れよう』
「その方がいいな。当分、家には帰れなさそうだけどな』
『当分で済めばいいけどね』
「まぁな。でも、こんなことに巻き込んで本当に済まない」
『乗っかった船だ。ここで降りるなんてごめんだよ。東児を助けて、奴らの悪事を裁こう。そして僕らも──』
「そうだな、その時は裁かれるべきだな。この力ごとね」
「うん……」
二人は電話越しながらもお互いの認識を確認し合った。
そしてこの日は就寝する事になったが、ぐっすりとは寝れなかった。むしろ変な夢を見て、逆に起きてしまうくらいに。
朝方、起きた星夜はさっさと準備して大急ぎで出発しようとした。だが、親には言わないといけないと思い、台所にいる母へと話しかけた。
「母さん」
「な、何?」
「ちょっと2日ほど、帰らないかも」
「どうして?」
いきなりの発言に母は戸惑いを隠せず、星夜へと詰め寄る。
星夜の目を見つめる母であったが、星夜は罪悪感からか目を合わす事が出来ず、すぐに顔を逸らして背を向けて家から出て行こうとする。
「ごめん、母さん!」
「待って!星夜!!」
「絶対に何とかしてみせる。だから母さんは冷静に家で待ってて!父さんにも謝っておいて!」
母の言葉を静止して家から飛び出そうとすると──
「待て星夜!」
「!?」
その声は母ではない。父であった、
「父さん……」
「お前が危険な事をした事も、謎の力を持っている事も警察から聞いた。信じられないが、信じざるを得ないと昨日母さんと話した」
「これは俺の責任だ。父さんには関係ない」
「そうは行かん!自分が何をしたのかをはっきりと言うんだ!」
父は星夜の手を強く握りしめた。
今の星夜は家族も大事だが、今は友情が大事だと思っており、何も答える事はなかった。
「何か言うんだ星夜!父さんは言うまでこの手を離さんぞ!」
「ごめんよ、父さんは今は許してくれ……!」
父が握りしめた手を逆に握り返した。手の甲には"機"の文字が浮かび上がっており、その普通の人間ではない力に、父は思わず手を離した。
母も刻印を目の前に、唖然としてただ口を押さえているだけだった。父もまた初めて見る刻印に驚いているが、臆せずに話を続ける。
「くっ……その力が、お前の言っている──」
「そう、俺の持つ力刻印だよ。力も体力も動きも人の限界を優に超えている」
「どこでそんな力を」
「それは言えない。言えない事情があるんだ。分かってくれ、父さん母さん」
「……」
父は何も言わずに手を引いた。
「この力は世に放ってはいけないんだ。ごめんよ、父さん!」
背中を向けて家のドアを握る星夜に父は激昂した。
「その力が何を示すと言うんだ!言うんだ!」
「……」
「俺はお前の親だ。力になりたいんだ。息子が悩んだら、血が繋がっている親子同士、責任を持って聞いて分かち合う義務がある。抱え込んで解決出来る事なんて一つもない!」
その言葉に秋に言われた言葉達を思い出した星夜の手は止まった。振り返って袖を捲り、手を突きつけた。
再び刻印を発動し、腕の皮膚がパカっと開けて腕の中には複雑な機械が所狭しと張り巡らされている自分の身体を見せつけた。
その姿には父も驚き、瞬きも忘れてジッと見つめていた。
「これが刻印の力だよ。発動している時だけといえ体内の構造が自分の刻印の名のように変わってしまう。それに──」
今度は懐からスマホを取り出して自分の手の上に置いた。するとスマホが宙に浮き、ゆっくりと部品を分解され、一つ一つの部品が宙を舞った。
母は思わず口に手を当てた。
「それって……星夜の力なの?」
「うん。機械の刻印と俺は読んでいる。機械を操る力。身体が全体が機械のようになり、機械を自由に操れるし、作れる」
「まさか、他のみんなも……」
「うん。東児は糸を操り重い物すら持ち上げれる。蓮は風を操り風の流れで人の気配や場所などを特定出来る。秋は力が爆発的に上がって大男をも軽々と殴り飛ばせる。凄い力だけど、俺が使い方を間違えたせいでこうなった。東児も俺が付き合わせたからこうなった。だから、捕まってしまい誘拐されたんだ」
そう言うと星夜は肩の荷が降りたのか、少しだけ楽になった表情になる。
父も優しく頷き、肩を叩いた。
「よく言ってくれた。やってしまったのは仕方ない」
「でも、この結果では……俺は助けないと行けないんだ!東児を!」
「お前が東児君を助けたいのは分かった。警察に頼らない事には何か事情があるのもおおよそ検討はついた」
「警察らが公に動けば、それこそ犯人の行動を早めて東児を見つける前に何処かへと連れてかれてしまう。だから、俺らは自分達の力で助けるんだ。そして連れて帰るんだ。また俺ら俺らでいれるように」
星夜は再び正面を向いてドアノブを握り、ドアを開けた。
父も母も何も言わず、星夜は家を出て行った。
ドアが閉まり、父はその場に胡座を掻いて座り込んだ。
「……お父さん」
「すまない。俺には答えが出せなかった。息子が危険な事をしようとしているのに、何も言えなかった。止めることも……」
「……」




