【Part20】放送開始まで後少し……
何日か経ち、放課後は毎日のように廃ビルへと行き、車の制作をし続けた。
東児からの連絡は減っているが、焦ることはなく、冷静に行動をしていく。他の二人もそれに気づいて徐々に結束力が高まり、救出作戦の計画も念密に考えていく。
「もしもの事件が起きた時の作戦も考えとこうよ。どっちかに何かあったら片方が助ける、と言いたいけど僕達と星夜らの逃げる方向は逆。どちらに何かあってもどうカバーをする?」
「そこが問題だ。本来ならお互いに無事に何とか逃げ切るといいんだが、出来ない可能性だって高い。俺らが刻印の能力があってもその場を潜り抜けれる可能性は不透明だ。援軍はいない。信じれるのは俺らと自分の拳だけ」
「つまり……」
「その場で決めろって事だ。はっきり言えば、分からない」
「うぅ……」
「よからぬことが起こらないように祈るだけだ。そこは深く考えないようにしようぜ」
「う、うん……」
そうして話題を変えながら作業を進めていき、秋が持って来たパーツなどで車のエンジンはほぼ完成した。
「もうそろそろ出来そう?」
「あぁ、外装もばっちり。これでコントローラーを接続すれば──」
ゲームのコントローラーを運転席へと持って行き、ハンドルを取り外してそこら辺に投げ飛ばした。ダッシュボードを無理やり剥がし、機械盤や無数の配線などを剥き出しにした。そこから星夜は分かっているかのように適当なコードを引っ張り出した。
ゲームのコントローラーを分解し、その中の配線とコントローラーの配線を刻印の力で無理やり繋ぎ合わせて、直結部分をゴムテープでぐるぐる巻きにした。
「で、出来たのか?」
「一応は接続した。後は試運転ってところだな」
星夜は集められた外装パーツを刻印の力で形造り、時間がかかりながらも車が星夜のイメージ通りに作り上げられていく。
見た目は真っ白な軽自動車ながらもエンジンはスポーツカーの物を使用した特殊な車が仕上がった。軽トラも同じようにエンジンは古いものの、十分に動く事が出来る仕上がりとなった。
「よし!完成!」
「「おぉぉぉぉ!!」
刻印を使いすぎて汗をかいた星夜の一言に二人は大喜びし、その疲れも一気に吹き飛んだ。
「一旦エンジン掛かるぞ」
「ワクワク」
本来キーを所持した状態で運転席のPowerと書かれたボタンを押してエンジンが掛かるのだが、星夜はボタンの前に手をかざすとカチッと音が鳴り、エンジンが始動した。その瞬間に車体の下から紫色の光がピカッと点滅し始めた。
暗い廃ビルにずっといた3人はいきなりの神々ほどムカつく光に目がやられた。
「うわっ!」
「な、何これ!?眩しい!!」
「また趣味を悪いもんを!」
すぐに星夜はエンジンに手を翳してエンジンを止めた。
エンジンを止めると、3人は目を押さえながらぶっ倒れた。
「くぅ〜疲れた時にこれは効くなぁ」
「目が潰れたかと思ったよ。これ違法車でしょもう」
「この光の機能は絶対に切っておこう……」
「そうして……」
別の日──
放課後、夕陽に車が照らされている中、走って来た秋の手にはバケツが握られていた。
二人の前に着くと、バケツと共にバックから絵の具と画材用具を突き出す。
「ねぇねぇ!家から絵の具持って来たよ!」
「絵の具?」
「私の絵を描くのよ。どんなチームかをみんなにアピールするのよ!絵の具ならいつでも消せるし。それに決めてないでしょ"悪巧みNova"のロゴ」
「……それもそうだな。景気付けに書くか。ちょうど2台とも真っ白だ。自由に何でも描けるな」
秋は二人に筆を渡し、全員で描く事にした。
今回はライトを持って来て、光を車に当てながら絵を描いていく。その表情は数日後にとんでもない事をやらかそうとする少年少女達とは思えないほど笑顔で楽しそうであった。
話し合いながらも順調に絵は描かれて行き、数時間後の日が沈み辺りは完全に真っ暗になっていた。
「よし、完成!」
全員顔に絵の具がつき、制服にまで絵の具が付いてしまっていた。そんな事よりも本人らは完成した絵を見て満足気になっていた。
ボンネット部分に漫画のタイトル風に"悪巧みNova"と描かれており、車の屋根であるルーフには全員の刻印に記されている"機"、"拳"、"糸"、"風"の文字を書いた。
そして前と後ろの計四つのドアには四人の似てもいない似顔絵が描かれており、秋だけは自分で丁寧に書いたのか少女漫画風な顔つきになっていた。
「お前だけ気合い入り過ぎだろ。図工2の俺なんて男ってくらいしか分かんないぞ」
「でも、個性が出ていいじゃない。蓮も星夜よりは上手だし、東児と星夜はどっちがどっちかが分からないけど、まあいいか」
蓮もまだマシな絵であったが、星夜は自分に加えて東児の分まで描いたのだが、どっちも男だという事しかわからず、差別化が出来てなかった。
でも、星夜は満足そうにしていた。
「ま、まぁ画力はどうでもいいや。とにかくこの車は世界で一つの車となった」
「うん。目立つけど、これはこれでありかもね」
「疲れし今日は帰るか」
「でも、この車とかどこに置く?制作途中なら、放置されていた可能性もあるけど、これは放置していたら警察とかにレッカーされるよ」
「秋、お前は軽トラを持ってくれ。俺と蓮でこの車を持つ。どこかバレない場所に置こう」
星夜の声かけに応じて秋はトラックを軽々と持ち上げて、軽自動車は二人で持ってバレなさそうな廃ビル裏の倉庫内に置き、ビニールシートが隠した。
「これでよしと」
「車は完成したけど、次は何するの?」
「次は運転練習だ。まぁ、これは俺と蓮が自主的にやっておく。秋、お前は身体をしっかりと鍛え上げてくれ。もしもの時にはお前のその拳が必要となるだろう」
そう言って秋の肩を叩いて、帰る支度を始める。
秋もその期待に応えようと、拳を振り上げて声を上げた。
「よっし!やってやるぞ!」
「あぁ、やってやろうぜ」
そうして三人はこの日も遅く帰った。
3人が帰ってから1時間後──
「──っぱり俺っちの車だよねぇ!バイクじゃ物足りねえっての!」
「一週間ぶりのドライブで、女の子達ブイブイ言わせて──」
あの車の持ち主である二人のヤンキーが馬鹿騒ぎしながら廃工場に来た。ドライブをするようだ。
本来車が止めてある場所に行くと、車がその場から消滅していた。
「あれ?」
「車は?」
「レッカーされたか?」
「いや、まさかな」
二人は車を探すが、その姿は発見できなかった。
スマホのライトで周囲を探していると、片方がハンドルを発見した。
「俺の車のハンドルじゃねえか!」
「えっ?マジ!?」
男らは慌ててその付近をくまなく探し歩いた。
すると、そこら辺に四つのドアが転がっており、その近くにはタイヤや型が綺麗に取られていた。
それを発見すると男らは口を開けたまま力が抜け、その場に膝をついた。
「お、俺らの……」
「車が……」
男達は自分の愛車の無惨な姿に、ただ唖然と見つめる事しか出来なかった。
*
星夜は家に帰ると玄関に母が立って待っていた。
怒っているわけでは無さそうだが、その悲しい目は何かを訴えていた。
「か、母さん……」
「ここ最近、遅いわね」
「……ま、まぁね。動画撮ろうとしていたら遅くなっちゃって。父さんは?」
星夜は母には言っていなかった。刻印の事を。
それに毎日遅いのは動画投稿の為だと嘘をついていた。それに心配をかけたく無かった。自分達が危ない橋を渡ろうとしている事も。
「東児君がいなくなっているのに?」
「……」
「毎日ボロボロになって帰って来て、お父さんも心配しているし。今日の夕方、警察の人が来たの。あなたのお子さんが怪しいと言って……」
その言葉に身体がビクッとなるが、何も知らないと言わんばかりに、何も言わずに母の横を立ち、母の顔を見ずに言う。
「……母さんは警察に何て言ったの」
「自分の息子から本当の事を聞くまでは信じないって。お父さんも同じよ。息子から真実を聞くまでは警察には何も答えないつもりよ」
「……」
星夜は何も答えられなかった。
刻印の事を説明するのか?それともクリーンフォックスに狙われているって言えばいいのか。それも無を貫けばいいのか。どうすれば良いのか、何も言えず無言になってしまった。
「教えて。星夜は東児君がいなくなった事の何かを知っているの?」




