【Part19】誠心誠意準備中
時間が経って夜中になった。秋が色々と車を探している間、二人はノートに設計図を書きながら話していた。
「僕の方は石を運ぶから、軽トラックで大丈夫だけどそっちはどうなの?追手を撒くにはここの廃車から取れたエンジンからじゃまともに逃げる事は不可能じゃあ」
「その為のこの力だ。修理なら出来るだろう。それで新品同様にする。そこで対応するしかない」
そう話していると秋はどんどん車や軽トラを両手で軽々と持って、二人の前に遠慮なく落とすように置いた。
その衝撃に二人は一瞬宙に浮き、びっくりして線がめちゃくちゃになった。
「うわっ!」
「これで良いの?」
「いや、良いけど……もうちょっと優しく頼むよ」
「了解〜です!」
秋がまた探しに行くと、二人は再び車の設計図を書き始めた。
それから約十分後──
「この設計で──」
「おーい!!」
と秋の声が。
「ねぇねぇこれなんか速そうじゃない?」
「お?それ本当に廃車なのか?」
「だってここに置いてあったんだよ。廃車よ廃車」
そう言って秋が持っていた車は明らかに廃車とは思えないほどピッカピカの新品のようなスポーツカーだった。
星夜が確認するとその車は青色のプリウスであった。
「プリウスだなぁこれ」
「どう見ても廃車には見えないけどね」
「まっ、察するには駐車場のないアパート住みで、駐車場借りる金もないヤンキーがここに止めているってパターンだな」
車のダッシュボードには謎の人形が大量に置かれており、マフラー部分にも謎の人形がくくりつけられていた。
それに謎のフワフワっな毛で作られたマットや、全体的に車内は青色の物が置かれ、不気味なコーデであった。
「こりゃあ悪趣味だな。俺は車買ってもこんな意味不明なコーデはしないようにしよ」
「私もこんな車乗ってる彼氏とかだったら、別れるわね」
と全員で悪口を言い合う。
「悪口はそこまでで、ちょっと中身を拝借しようかね」
「それこそ犯罪でしょ」
「いやいや、ここに止めているのも犯罪というか違法だから。イーブンなんだよ」
「だからって……」
蓮が静止しようとするが、星夜は開ける気満々だった。
秋がドアを引きちぎろうとドアノブを握った所で、星夜が止めに入った。
「待て、無理やり開けようとすると防犯ブザーが鳴る。ちょっと待ってろ」
「?」
星夜は秋を離し、車のドアに手を当てた。そして鍵を開けるイメージを頭の中で浮かべながら刻印の力を発動すると、ガチャっと鍵の開く音が鳴り、ドアが開いた。
「どうやって開けたの?」
「最近の車って遠隔操作による電波でのドアロックとか出来るじゃんか。それと同じ要領で手から電波を出してロックを解除して。この力を使って、同じ電波を出して、ロックを外したんだよ」
「でも、他人の車だぜ。ここに止めている時点でまともじゃねぇよ」
ドアの開けて星夜が中身を覗き込む。適当に覗いていると、とある物を発掘した。
「おい、これって車の持ち主の写真か?」
そう言って運転席上部のサンバイザーから見つけた一枚の写真を二人に見せた。そこにはチャラそうな男二人が肩を組み合っている写真。
だが、その写真。蓮には見覚えがまだあった。
「ねぇ、この車って……あの時の奴らじゃあ……」
「え?まじで?」
「ここで配信していた時に、女の子にちょっかい出してた」
それを言われて星夜もようやく思い出した。
「なるほど、あの女の子をここに止めてあった車に乗せるつもりだったわけか。……ま、いいや!この車は廃車として扱う!」
「本気!?」
「あぁ、天罰だ。それにこのスポーツカーを改造すれば、逃げるに最適な車が作れるしな」
星夜の止まる気がない顔に蓮はもう止める事はしなかった。
「ご自由にどうぞ」
「このまま使うのはアレだからエンジン部分などを拝借するかな」
それから蓮は車の構造などを考え、秋が部品を持ってきて、星夜が刻印で車の骨組みを成形して行く。あのスポーツカーはエンジン部分の殆どが逃走用車に使用されたが、見た目は軽自動車にした。あのスポーツカーにする案もあったが、目立つので、隠れても気づかれにくい軽自動車に使った。
その他にも多くのパーツが新品同様のスポーツカーから取られて、ド派手な外観しか残らなかった。
軽トラも3人で様々な軽トラのパーツを吟味して、能力でつぎはぎしながら無理やり作り上げた。何とか使えるエンジンを組み合わせて簡単な骨組みは完成した。
終わった頃には3時近くになり、工場付近の道路には人も車一台も通らないほど静かだった。
「ふぅ、今日はこれまでにして帰ろうぜ」
「うん。久しぶりに汗かいて疲れたよ。こんなに疲れたのは刻印を手に入れる前のようだ」
「俺もそんな気がする。やっぱりこうゆう集中出来るのって最高だな」
星夜も蓮も笑い合いながらタッチし合い、秋も満足そうに地べたに座っていた。そして身体の力を抜くと、お腹の底からゴロゴロと大きな音が鳴った。
「ねぇねぇ、今から開いてる店ないかな?重いもの持ちすぎて腹減っちゃったよ。色々とあって夜ご飯食ってないし、いつものファミレスこの時間開いてたっけ?」
「開いてるけど、この時間ドリンクバー掃除中だった気がするぞ」
「ドリンクバーより腹ごしらえ!牛丼屋でもいいから行こう!ラーメン屋でもいいよ!」
秋が色々と指で数えながら候補を上げる。
「僕は牛丼」
「俺も牛丼屋でいいや。大盛りなら安いし腹も膨れるし」
そういうと秋は二人の服の襟元を掴み上げて、二人を軽々と持ち上げて牛丼屋へと直行しようとした。
「なら、早速行くわよ!」
「ちょ──」
その時、星夜のスマホが鳴った。
「ん?」
「誰から?」
秋は二人を掴んだ手を離して地面に落とした。
「いて!」
「早く早く星夜。東児からかもしれないよ」
「……分かったよ」
落とした事に謝らない秋に、腑に落ちないが取り敢えずはスマホを確認すると──
「東児からだ。それも動画が複数付きだ」
「え!?」
蓮も秋も興味津々で星夜の頬に擦り寄った。
「そんな近づくなって……」
「なになに?」
星夜の声は二人には届かず、動画の内容とメッセージが気になる二人。渋々と星夜はメッセージを読む。
「たいせつなとうか。おれとこうりゆうしせんいんてあんせんなところまてにけてからこうかいしろ。えぇーと。大切な動画。俺を合流し、全員で安全なところまで逃げてから公開しろってさ」
「どんな動画?」
東児から送られてきたファイルには何個かの動画があり、その動画を見た。
その動画はどんな内容なのか不明だが、その動画を見て、3人の顔はどんどん険しくなったと思ったら、目が飛び出しそうなほど驚いた表情までもした。
見終わると3人とも苦笑いをした。
「この動画って……とんだネタを提供しやがって」
「これは世間の反応がやばい事になるよ……ヤバすぎる」
「へっ、余計にやる気が湧いてきたぜ」
「そ、そうだね。これは絶対に世間に公表しないと……世界が一変しちゃう」
やる気になる二人だが──
「内容分かったんなら、早く牛丼屋行こう!」
「……」
胡座を掻いてお腹を摩る秋に二人は黙り込んだ。
その後、組み立て途中の車を隠して3人は牛丼屋へと向かうのであった。
*
時を同じくして研究所にいる東児──
充電はあまりない。スマホを通気口から通して様々な場所の動画は十分に撮って星夜達に送った。色んなのが撮れた。自分達が想像も出来ない映像から、この世に公表しないと行けない危険な映像など。
でも、後は皆んなを信じて時間を待つばかり。
現在、深夜は監視も少なく、研究所内の傭兵達の巡回も少なくなっている。まだ何か撮れると感じてまたダクト内を通りながら、色んな部屋を探っているととある個室に到達した。
自分に銃を撃ってきたウルフって男だ。シャツ姿でベットに座り、自分の銃の黙々と手入れをしていた。
部屋の中を覗き込むと部屋の至る所に武器が転がり落ちており、何種類もの銃があり、ライフルからショットガン、スナイパーライフルなど殆どの銃が揃えられており、弓矢や西洋風の盾、日本刀やレイピア。手榴弾からダイナマイトまでまるで武器庫ような空間に見ていてヒヤヒヤしてそっとウルフの部屋を覗くのをやめた。
これ以上やる事もない。だから、後は時が来て星夜達と上手く連携を取れると信じるだけだ。
そう祈るしかない。自分達ならできる。




