【Part18】放送予定まで後6日
あれから一夜が経ち、星夜達は再び学校に通った。
噂が広まったのか周りの多くの目が三人を疑う目に変わっているも気になるも、三人とも気にする事なんてせず至って普通に振る舞っていた。
横を通りかかると星夜らを見てヒソヒソと話す生徒もいれば、わざわざ教室の外からこっそりと見にくる生徒までいた。先生達は普通には接してくるが、やたらと目が合うし、どことなく重苦しい空気を醸し出してくる。
それでも三人は優として学校生活を送った。
放課後の人気のない教室──星夜ら三人が集まっていた。
黒板には作戦会議で大きく適当にかかれていた。教卓の前に星夜が立って秋と蓮は机に座っていた。
「全くみんな私らを見過ぎって」
「それほど僕たちが怪しいって噂が広がり始めているって事だろうね。近所のおばさんまで変な目で見てる気がするもん」
二人がうだうだ言ってると星夜が話を止める。
「愚痴はそこまでにして、作戦会議をするぞ。蓮、人の気配はないな」
「うん、この階の風の流れに人の流れも息遣いも今のところはここ以外に感じない。誰もいないよ」
蓮の能力で周りに人の気配がないか、人の歩く時の風の流れを読み取り、人が来ていないかを確認した。
「よっし!なら始めるぞ──っとその前に一つ言うことがある」
「何?」
星夜は無言で黒板に文字を書き出し、大きな文字で"犯罪者"と書いた。
「犯罪者?」
「俺達がやってしまった事は犯罪だ。それに今度行う事も犯罪になる。つまり俺らは犯罪者であり、多分重罪な犯罪者になるだろう。その覚悟は出来てるな」
「は、犯罪……」
犯罪者になると言う言葉に蓮は息を呑むが星夜は話を続ける。
「今の俺らは世間の敵になりつつある。それにクリーンフォックスの怨みを持つ。誰がどう見ても四面楚歌って奴だ」
「……マジかよぉ」
そういうと蓮を意味を理解して落ち込むも、秋だけはあまり理解してなかった。
「四面楚歌って?」
「つまりは周り全員敵だ。俺ら四人以外はな。だからこそ、配信して一人でも多くの味方を引き寄せる。そうすればクリーンフォックスの真実を知り、上手く行けば世間を少しでも味方につけられる。犯罪者って事は変わらないけどな」
「正義の悪ってやつね」
「まっ、そゆことだな。話を戻すが、やる事は二つ!東児の救出!!そして東児の連絡にあった石を破壊する!」
二人の課題。その課題に蓮は難色を示す。
「東児の救出……能力を持っているとはいえ相手はプロ。星夜一人では対処も難しいよ」
「そうかもな。だが、お前らの方も石を手に入れて六道山から離れる事も重要事項だ。あれの存在だけはバレて行けない。あのまま放って置けばいいかもしれないが、いずれまた俺らの時のように何かの弾みで同じ事が起きるかもしれない。なら、俺らの手で破壊するなり、封印するなりすんだよ」
「……そうだけさ」
「だが、この作戦には問題が複数ある!」
黒板にその問題を書き始めた。
「一つ目は石を奪う事だ。俺と東児がクリーンフォックスの気を引く間にお前らが取りに行く」
「でも、石は今のうちにでも取りに行けば良いんじゃ無い?」
「それもありだ。未だに石の付近は政府によって立ち入り禁止になっている。だが、その最中にクリーンフォックスに見つかったりしたら、下手したら石を奪われ、東児の脱出も困難になる。そして東児の救出後してから取り行く事もありだが、救出したらまた大騒ぎになって六道山全域に警察や報道機関などが押しかけてまためんどくさくなる。なら、タイミングは脱出している時の混乱に乗じてやるのが一番だと」
「なるほどぉ」
「本当に分かってんのかよ……」
「大丈夫、大丈夫。それより質問。東児と星夜は逃げたとしても、クリーンフォックスに追われると思うけど、どうするおつもり?」
秋の質問に星夜は指を差し黒板に次の項目を書き出した。
「そこで二つ目の課題だ。二手に別れて互いに逃げる先だ」
「逃げる先?」
「そうだ。俺らとお前らは別々の方向に逃げる。一緒な方向に逃げてるんじゃあ意味はない。俺らが敵の気を引いている間にお前らは逆方向の遠い山へと行ってこっそりと破壊しろ。そうすれば奴らはもし六道山の石の情報を手に入れたとしてもそこにはなく、破壊された場所は俺らのみが知るって訳よ」
「なら破壊する場所は?」
またも秋の質問に答えて、黒板に書き出した。
「そうだ!それが三つ目の問題だ。破壊する場所だ。お前らは人気がない場所で破壊しなければならない」
「なんで安全な場所に?」
「考えてみろ。俺らがこの力を手に入れた時の衝撃波ざ発生し、周りの人らに何かしらの影響を及ぼす可能性がありうる。その為、人気がなく六道山から離れた山奥で破壊しなければない!」
「へぇ。で、どうやって運ぶの?」
またも質問されると星夜は"車"の一文字を書いた。
「車で行き、石は車に乗せる」
「えっ!?車!?」
秋じゃなく、蓮の方が驚きを隠せない表情で叫んだ。
だが、星夜は淡々と話を進める。
「そうだ車だ。正確には軽トラックだな」
「でもどうやって!?僕達が運転するの?犯罪だぞ!?」
「もう犯罪者だって。でも運転はする。でも、直接運転する訳ではない。俺ら運転した事ないからな。代わりにこれで運転すんだよ」
星夜はカバンからある物を取り出して蓮に投げ渡した。それはゲームのコントローラーであった。
「ゲームのコントローラー?」
「そうだ。俺の刻印って奴の力を使って車を改造する。それでそのコントローラーで軽トラックを運転出来る様にする。それなら犯罪じゃないだろ?」
「そ、そうかな?」
「どの道こっちの方が俺らには出来るだろうからな。だから、俺は俺で運転する。そちらの運転は蓮に任せるぞ」
「……まぁ、そんな予感はしてたけどね」
「任せとけって。俺が上手い事作ってやるからさ」
自信満々に言う星夜。蓮もそれに信じるしかないと、自分から納得した。だが、それよりも気になる事があった。
「運転は何とかなるけど、問題は星夜達の方だよ。逃げたとしても何処に逃げるんだ?」
「東海道だ」
「と、東海道!?」
「海沿いの道を走ってひたすらに逃げ続けるさ。住宅街だと被害が出る。それに山の中だと下手に行き止まりになったり、迷ったりしたらアウトだ。深夜の東海道なら車通りも少なく、逃げる道にはもってこいだ」
「東海道通った事ないでしょうに。でも、もし何とかなれば東海道の海沿いの道を通って距離を離しつつ伊豆半島まで逃げて、伊豆半島の山に逃げ込む。あそこならそんなに広くもないから迷う事もないし、時間をかけて山の中で敵の目を掻い潜って逃げる事が出来れば……」
「何とかなるって訳だ」
「上手く行くかなぁ。敵も死に物狂いで探すよ」
「そこは俺と東児次第だ。山の中に潜伏して隙を見つけて脱出して愛知方面まで逃げる。そして四人で合流後、警察に匿ってもらう」
「匿うってつまり、自首?」
「そうゆう事。捕まった方が奴らも手が出しづらいはずだ」
「それが上手く行けば、私達は大丈夫だし、クリーンフォックスもおとなしくなるかなぁ」
その言葉に星夜は少しだけどんよりとした顔になる。
「上手く行って日本の武器製造工場が廃止されても、世界の何処かで武器は作り続けられるだろう。でも、クリーンフォックスに大きな痛手を喰らわすことが出来る。それにこの作戦は、はっきり言えば全ては推測であり、可能性ばかりに囚われていふ。成功確率なんて無名配信者が一気に有名になるのと同じくくらい難しいだろうな。失敗すれば何されるか分からん。逃げ切れば奴らの出鼻を挫く事が出来る。それに賭ける」
星夜の言った通り、成功すればクリーンフォックスの悪事を暴ける。だが、世論がどこまで味方するかは分からない。でも、それに賭けるしかないと星夜は思っている。
「なら、成功するよ」
「え?」
「私達はこの刻印っていう力がなくても有名になれた。なら、今回も同じ風にやればいい。そうすれば簡単に成功するわよ」
「……そうだな。今回はおふざけじゃない。分かったな」
星夜の言葉に秋は一度黙り込み言葉を濁らせた。
「でも私達、犯罪者になるのよね……いまいち実感がない。それに少年院に入ったら、どれくらい家に帰れなくなるのかな」
「逮捕されたら少年院行きになるかどうかってとこだが、本音を言えば俺にも分からん。こんなパワー持った奴らを独房に入れても脱走なんて余裕だしな。そこは政府がどうするかの判断だな」
「……」
「まっ、今は昔のように楽しもうで、奴らの慌てふためく顔を拝むためにな!」
そう言って星夜は秋の背中を軽く叩いた。
「お前のおかげでみんなが揃った。そんなリーダーなお前が暗くてどうすんだよ。やってやろうぜ、俺達最後の配信を」
「う、うん」
「元はと言えば、俺の責任だ。俺が何とかする。お前らはあの石を破壊する事。俺が東児の救出に成功する事を祈ってくれ」
「分かったわよ。その代わり、絶対に成功してよね。責任を持って」
「もちろんだ」
秋は拳を突き出し、それに対応して星夜は秋の拳に自分の拳をぶつける。
「なら、僕も。絶対に成功させよう。そして次に配信する時が来たら四人で」
「四人で絶対もう一度配信する。ちゃんとした配信でな」
自分達がやった事でここまで大事になった。一つの組織を、いや日本や世界をも注目させる事になったかもしれない。
そんな事をしてしまったばかりに友人や自分らにこんなにも大きな影響を与えてしまった。更にはその組織が悪の存在である事も知り、世界の紛争を減らす為、刻印を利用させない為に立ち上がる。
そう全員が決心し、無意識に全員が拳を引いて、力強くぶつけ合った──
「ぐはっ!」
「げっ!!」
といい雰囲気でぶつけ合ったが無意識にぶつけたあまり、無意識に刻印の力を発動していた秋の拳をぶつけられた二人は何メートルも吹き飛んでいった。
「ご、ごめん力み過ぎた!」
「いてて……まぁ、これくらいのやる気がないと困るからな……とにかくみんな次の準備に取り掛かるぞ。ここからもっと忙しくなるぞ」
そう言って立ち上がる星夜とさっそく不安になる蓮であった。
「もう不安だよ、全く」
そして一度その場を離れ、星夜は二人をとある場所へと連れて行く。
「って何やるの?」
「ついて来い。いい場所がある」
そう言って連れてきた場所とは──
「ここって……」
「見ての通り、廃工場だ。俺らが一度配信だろ」
それは一度生配信し、ヤンチャな奴らが女の子にオラついて東児と蓮が追い返した場所。
相変わらず静かな場所で、人の気配は全く無い。
「ここなら、ボロいとは言え廃車のパーツがある。この機械の刻印とやらを使えば、直せるはずだ。俺と蓮で石を運ぶトラックと逃走用の車の設計を考える。秋は工場内の廃車を集めてくれるか?」
「分かった。いっぱい探してくる!」
「大きな音は立てんなよ!それで警察やらが来たら元も子もないからな!」
「分かってるわよ!」
そう言って秋は意気揚々とやる気を出してゴミ山へと突撃して行った。
星夜と蓮は建物の中へと入り、持ってきたノートを開き、懐中電灯を当てながら車らの設計を考え始める。
「今日はオール覚悟でやるぞ」
「オールは編集してて慣れてるから大丈夫だよ。それに東児の事を考えれば何日でもオールするつもりだよ」
「俺もだ」




