【Part15】捕獲されました!!
東児を載せた車は建物の中に進み、数分が経った。
車が止まり、前の二人が車から降り、両脇の二人が東児を起こす。
「起きろ」
東児は寝ている演技をして、今目が覚めた風に演じる。
「……ここは?」
「教える必要はない。早く来い」
「ここは何処だよ!教えろよ!!」
「うるさい!」
東児が喚き散らしていると傭兵の一人が銃のストックで軽く頭を小突いた。
「いて!」
東児が怒りを表すも傭兵らは怯む事なく、今度は背中を小突く。
「早くしろ!」
「いて!」
東児は小突かれた衝撃を利用して、ワザとフラフラとしたおぼつかない歩き方をして仰向けに倒れた。地面に倒れる瞬間に刻印を発動して糸でポケットからスマホを咄嗟に取り出して、ズボンの中へと入れた。更に目を覆っている布をずらして片目だけ見せる様にした。
「痛っ!!」
「何をしてる!立て!」
「この状態で立てると思ってるのかよ。むしろ立たせてくれよ。背中が痛くてたまんねぇよ!」
とワザとらしく喋って、自分の顔へと意識を引きつけてる間に糸を伸ばしてスマホをズボンの中から外へと離して、近くにあった用具入れの上に投げ飛ばした。傭兵らは東児の顔へと意識を向けており、声を上げていた為、スマホの存在や刻印を発動した事には気づくことはなかった。
そして起こされて布を再び目に巻かれた。それと同時に刻印を解き、無事にバレることはなかった。
「ちっ、しょうがない。もう一度打て」
「あ?何をするんだ!!うっ──」
「これで黙るだろ」
暴れる東児を落ち着かせるために、傭兵の一人が注射を東児の首に打つと、ものの数秒で東児は気絶し、さっさと東児を連れて行った。
*
あれからどれだけ経ったか不明な中、眩しい光が目に注ぎ込み、目を開けた東児。
「……くっ、またかよ」
頭がズキズキして、頭を抑えようとしたが手が動かなかった。足も首も動かす事ができなかった。何かベルトのような物でしっかりと手足が固定されており、ベッドのような寝床に仰向けで寝かされていた。
「……」
ここで暴れるのは危険だと思い、東児は一度息を吐き、周りを確認した。真っ白い部屋の中で何か場所の目印になる物を。
自動ドアと天井の通気口、そして監視カメラが壁の四方から常に撮られている。つまり、今も何処かで誰かが自分を見ていると。
何をされるか分からない。実験に使われるのか?それとも海外に売り飛ばされるのか?まさか洗脳なんてないよなと、冷静を装いながらも心の中では少しだけ、怖がっている自分がいた。
とにかく今出来ることを考えるのが最優先だと東児は自分自身に語りかけて落ち着かせた。
*
東児が居なくなってから数日が経っていた。
東児の件はすぐにニュースになり、またもや学校には報道陣が押し寄せて、世間を騒がせた。学校もまた対応に追われているも、授業は普通に行われた。だが、星夜も蓮もこの日はあまり喋る事はなく、放課後になると星夜はさよならも言わずにそそくさと帰って行った。
秋はまだ残っている蓮へと声をかけた。
「蓮」
「な、何?」
「何処か遊びに行かない?星夜ったら、すぐに帰っちゃうんだから」
「い、いや、遠慮しておくよ」
何かに怯えている蓮。ここ最近ずっとこの調子で、周りの目を常に気にしている。
その行動を気にした秋は蓮に聞く。
「ここ最近、ずっと怯えてるけど、大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ。あれから僕達を特定をしようとしている馬鹿がいっぱいいる。それが怖くてしょうがないんだ!」
「でも──」
「僕達はもう誰に狙われてもおかしくない。特定馬鹿や誘拐魔、特定されたら何されるか分からない。家族にも迷惑が掛かる。それにクラスの誰かがもう僕達を怪しんでいるかもしれない。だから、あまり外へは出たくないんだ。ごめんよ」
「……うん」
「秋も気をつけてね。何が起きるかなんて分からないんだから」
そう言って話を切り上げ、蓮はそそくさと帰っていった。
秋はまだ喋りたりなさそうだが、蓮の表情を見てこれ以上話し掛ける事ができなかった。
秋も蓮の言葉が頭に残り、静かに帰っていく蓮の背中を見つめた。
*
その頃、星夜は──
「……」
星夜は一人で事件が起きた公園付近の家や車などの監視カメラ、ドライブレコーダーなどを刻印の力を使って確認していた。
隠れながら腕から無数のコードを出して、監視カメラに接続して脳内に映像を映し出してデータを確認していた。
「くっ……ここもダメか。何故だ、何処もデータが消去されているんだ!」
辺りの監視カメラを確認しても、映像の一つも見つからない。それも東児が誘拐されたされる日のみがデータがないのだ。
「……やはり相手さんの方がデータの操作をしているのか」
*
星夜は無言のまま帰って行き、蓮も周りを気にしながらそそくさを帰って行った。
秋は他の女子友達の誘いも断り、一人で帰路は着く。
「……」
駅前のゲーセン、ファミレスといつもなら皆んなで行く場所。
店には多くの学生達が楽しそうに話しており、その光景がちょっとだけ羨ましくも感じた。
今は寄る意味もないとそのまま街を抜けていこうと思った。その時、近くから人の荒々しい声が飛び交っていた。
「ん?」
その声が気になってその方向へと向かうと、何が原因なのか分からないが、若い男数人が取っ組み合いになって歩道を塞いでいた。
更には野次馬も多くいて、止めようとはせずスマホで無言で撮影していたり、何する様子もなく歩き去っていく者ばかりだった。
二人の男は胸ぐらを掴み合いながら鉄柱にぶつかったり、道路にはみ出しそうになったりと危険な状態だった。
このまま放っておけば車事故や他人にも被害が被ってしまう。
「……」
この力を使えば、彼らの喧嘩をすぐにて止める事が出来る。
でも、蓮の言葉が頭によぎった。
特定されて家族に迷惑が掛かる。だから、あまり人前には出たくない。でも、このままじゃ──
秋が迷って動けないでいると、一人の女子高校生が人混みから抜けて男達にスマホを突き付けた。
「何をしてるんですか?警察に連絡しますよ」
それは110の数字が打たれている電話のキーパッド画面だった。男達に見せつけて、指を電話マークへと向けた。
その言葉に二人は動きを止めて、互いに引っ張りあっていた手をそっと離した。
「……ちっ、クソが」
一人がそそくさとその場から逃げらように去って行くと、もう片方の男も何も言わずに女子高生を睨みつけて走り去って行った。
事が終えると周りの人達は祭りが絶えたように、その場を去っていき、女子高生も逃げた二人が視界から帰るまで目視で確認してからその場から立ち去ろうとした。
正直秋はびっくりしていた。自分がこんなにも迷ってたのにあの女子高生は躊躇いもなく前に出て、男達を軽々と退けた。何故、あんなに躊躇なく出来たのか、どうしても気になった秋は女子高生を追いかけて話しかけた。
「……あ、あの!」
秋が声を掛けると女子高生は足を止め、振り向いた。
「どうかしたの?」
「いや、あの……」
「大丈夫?顔色よろしくないけど」
「だ、大丈夫。です……」
普段は焦らない秋だが、今は何故か緊張していた。だが焦りながらも、その女子高生に聞く。
「何であんな事が出来たのですか?怖くないのですか?」
「う〜ん。怖いとか怖くないとかじゃないかな?仲の良い男子が言っていたけど、正しいと思って助けるんじゃなくて、助ける事が普通って感じのことを言っていたのよ。だからあの時の私はそんな事多分考えてなかったかな?」
「そ、そうなんだ……」
「正しい正しくないとか考えれば、迷いが生まれる。でも、それが普通と捉えれば動くのも簡単。困っている人がいるなら出来るだけ助ける。車事故が発生したならすぐに救急車や警察に連絡を入れる。私の友人は後先考えずに突っ走るいい意味でおバカな友人よ」
「……」
秋が何も言えずにいると女子高生はスマホで時間を確認した。
「じゃあね、私行くところがあるから」
「うん。時間を取らせてごめんなさい。でも、少し勇気が貰えました。力だけが全てを占めるんじゃく、行動も大事なんだって……」
「……良いのよ。私だって非力な人間だから、あれぐらいが精一杯だから。あれだって悪あがきのようなもんだから、一概には成功したとは言えないわよ。でも、大きな力があってもなくて、変わらない人も一応いるしね」
「それでもとってもかっこよかっいいですよ!」
「ありがとね。じゃあ、行くね」
「ありがとうございました」
その女性の背中には大きな弓袋を背負っていた。多分部活での予定があるのだろう。女性は手を振り、優しく笑いながら、その場をさって行った。
「あ、名前聞くのは忘れてた」
でも秋は正直びっくりした。あんなにも躊躇なく危険の中に飛び込めるなんて。今までの自分ならこの力を使って行ったかもしれない。でも今はなぜだか恐怖を感じて飛び込めなかった。みんなにこの力がバレるのが何処かで怖がっているからだろう。
なのに、この力がなければ自分は危険に飛び込む事が出来ない臆病者なんだと改めて感じた。
「……この力だけに頼ろうとしていたのね。アタシ」




