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刻印戦記-Crimsonuniverse  作者: ワサオ
1-②悪だくみNova-
34/77

【Part12】動画配信無期限休止中

 

 ウルフとクマは指定された場所にいる。だが、ウルフとクマは別々の狭い部屋に一日中閉じ込められてウルフもイライラが募っていた。


「いつまで俺を閉じ込めておくつもりだ?」


 部屋の隅で寝転がりながらボヤいているとドアの鍵が開く音が聞こえ、ドアに目を向けると白衣の眼鏡を掛けた男が入ってきた。


「やっとか、時間が掛かったな」

「映像の確認に時間が掛かってしまいましてね」

「しっかり撮れていたか?」

「えぇ。コンタクトレンズから撮られた映像には貴方とクマさんの戦いがはっきりと撮れてましたよ。お二人、ボコボコにやられてましたね」

「その為にお前ら研究部門に調べてもらいたいんだよ」

「まっ、ここで話すもアレですから部屋を出ましょう。僕の部屋に案内しますよ」


 そう言って男からマスクを渡されて、部屋から出て廊下を歩く。廊下には窓はなく、清潔感のある廊下。ウルフ以外の人間は全員が白衣を着て、歩き回っている。


「クマの奴は?アイツ、イライラするとなんでも壊すからな」

「クマさんは現在、本物の熊にも効く麻酔薬で寝てもらってますよ。コンタクトレンズ取ろうにも大暴れしそうでしたから」

「よほど女に負けた事を根に持ってるようだな」

「ふふ、それは大変ですね。で、ここからはどうするんですか?交渉が一時中止になったそうですけど」

「日を改めて行うそうだが、港が落ち着くまでここで待機しろとの命令だ。ここなら、退屈しなさそうだしな」

「それなら、早速退屈させないようにもてなして上げますよ」


 部屋の前につき、カードリーダーに職員専用のカードキーをスキャンさせてドアを開けた。そのカードにはcleanfoxの文字が書かれていた。

 部屋に入ると1人用にしては広いが、本や資料が散らばっており、立っていられる場所も限られるほどである。それに生物学や薬物関連の本が山積みになっており、今にも崩れそうな状態となっている。


「ごめんごめん、忙しくて中々片付けられなくて。僕の椅子に座って。コーヒーでも出すから」

「あぁ……頼む」

「その間、クマさんとウルフさんの戦闘時の動画でも観てて下さい」

「そうする」


 ウルフは椅子に座り、男がファイルから開いた動画を見直す。


「不思議な映像ですよね。普通は映画だのCG加工された映像だのと騒がれるでしょうけど、貴方が彼と戦闘経験があると言うことはこれは事実であり、刻印の存在は本当であったと」

「刻印……?巷の噂のか?」

「あまりご存じではないのですか?」

「薄らと聞いたぐらいだ。六道山の事を知ってる程度だがな」

「えぇ、その彼らと今回の少年達の力が類似していると言う話が紛れ込んでましてね」

「クリーンフォックスは環境保護団体じゃなかったか。いつから人間研究始めたんだ」


 嫌味混じりな言い方をすると、男は微笑みながらコーヒーを一つ机の上に置く。


「我々は環境保護団体なのは確かです。でも、もう一つは生体研究ですよ。生命体の進化や新たな生体の誕生のね」

「それと関係として刻印とやらを研究するって訳か」

「正解です。これは新たな発見でもあり、未知数な世界がいきなり広がったわけです。これは人間の進化に新たな謎を生み出したんです。それもここ数ヶ月でね」

「で、研究の成果は出たのか」

「今のところは映像からの憶測だけですよ。どのように彼らはその力を発揮して、どのような仕組みなのか。上層部は興味津々ですよ」


 男は星夜らの動画を閉じ、星夜らの刻印を手に入れた時の配信を見せた。星夜らが視聴者に説明していると、山頂から放たれた衝撃波に四人が吹き飛ばされた所で配信が止まった。


「彼らの手に入れたとされているタイミングはこの六道山事件での配信です。この配信は途中で切れてしまっていますが、見ての通り山頂で何か起きているのは間違いないです」

「それが六道山事件に関係すると」

「そうです。あの時の衝撃はここの研究所にも響いた程ですよ」

「ここ……か」

「はい。この六道山には我々職員やマスコミ、更には野次馬や警察など様々な人々がいたはずなのに、何故彼ら四人だけが刻印を持っているのか。それが謎なのです」

「なるほど……」


 ここはクリーンフォックス社が所持している六道山から近い場所にある保護区域。その場所は立ち入り禁止のフェンスが敷かれており、人里離れた場所には建物がある。

 表面の建物には生物学研究所として一般的に見学などの為に時より解放しているが、建物の地下には武器製造工場が建っている。

 その工場の箱には星夜が見た"CC"のロゴが描かれていた。


「お時間があるんですよねウルフさん」

「あぁ、最低でも1・2週間はな」

「それなら地下で製造した武器の試運転でもしてみては?安全性や使い心地など、ウルフさんのような人にはもってこいな時間潰しになるのでは?」

「そうだな、いい時間稼ぎになるな」

「それに一風変わった武器も製造していますからね」

「ほぅ、それも興味があるな」


 ウルフはコーヒーを飲み干して部屋から早足で出て行った。その顔は何処か楽しそうで、戦いを求めているような顔だった。


「何やら楽しそうですね」

「刻印という存在で、世界が変わろうとしている。楽しみに決まっている。またアイツと戦いたい。次は負けん。刻印相手だろうとも」


 *


 あれから2週間が経った。星夜らの身には何も起きず、平和に時が過ぎ去っていく。

 ターミナル事件の報道は減ったものの、世界的な自然保護団体の噂と言う事もあってか、クリーンフォックスの報道は定期的に行われていた。

 星夜らは事件を起こした事についてSNSでは謝り、無期限の休止を宣言したが動画で直接謝らない事に多くの批判の声が上がった。

 東児は学校には来るものの、星夜らには絡む事はなく、秋や蓮が話しかけた時は軽くは対応はしてくれるが、今まで通りには戻らなかった。

 放課後もすぐに東児は帰って行き、話しかける暇すらなかった。と言うよりも星夜が話しかけれなかったと言う方が正しいだろう。帰っていく東児を寂しそうに見つめていた。

 そんな星夜を見て、秋が手を握り締める。


「ねぇ星夜」

「何だ……秋」


 秋の目を見ると、いつもとは違う真剣な眼差しであった。でも、すぐにいつものニコりと笑う秋に戻り、蓮の手も握りしめた。


「みんなでゲーセン行こうよ!」

「な、何でだよ……」

「こんなんじゃ、私本調子出ないし、蓮だってそうでしょ?」


 秋が蓮に目を向けると蓮も頷いた。


「あぁ、これじゃあ居心地悪くて息苦しいよ。気分転換も大事だ。少しはスッキリする為にも」

「そうそう。私、最近出来たゲーセンに行きたいんだけど行く?ちょっと遠いけど」


 二人が楽しく会話しているが、何処か目が泳いでいる。

 星夜の元気を取り戻そうと必死になっているのは、星夜自身にも伝わっていた。

 星夜は息を吐き、表情を整えた。


「なら行こうか、そのゲーセンに」

「本当!?お菓子取りまくるわよ!!」

「そうするか」


 二人は秋に引っ張られて、ゲームセンターへと連れてかれた。

 テンションの低かった星夜だが、クレーンゲームをやふと段々と熱くなっていき、気づいたら何千円も使用してきた。秋は慣れた手つきでいとも簡単に人形を手に入れた。蓮は物を落とす穴付近に落ちたフィギュアを刻印の能力を使って風で落とそうとしたが、それは流石に二人に止められた。

 いつの間にか三人は楽しくになっていき、時間をも忘れてゲームをし続けた。

 そして蓮と秋はエアホッケー対決をする事になった。


「なぁ、本気で打ち込むのは辞めてくれよ。僕どころかこの店自体ぶっ壊れるからさ……」

「そっちこそ、ホッケー盤に風吹かすのは辞めなさいよぉ」

「もちろん」

「なら、負けた方がジュースを奢るってのは?」

「OKだよ」


 そんな事を言っていた二人だが、最初こそはお互いに普通にやっていく。

 だが、途中で二人共ムキになって秋は刻印を発動してフルパワーでパックを打ち飛ばして壁を突き破り、外高く飛んでいき、星になった。蓮も蓮で打ったパックがゴールに届くと、ゴールに風のバリアを作り出して跳ね返すなどやりたい放題になった。幸い手袋のお陰でバレる事は無かったが、星夜はヤバいと思ってそそくさと二人の勝負を辞めさせた。

 そして時間が経ち、陽が沈みかけた頃、ゲーセンの外で三人はジュースを飲んで、各自の成果を見せ合っていた。


「私は高いクマちゃん人形〜!」

「僕はデカお菓子!」


 そんな中で星夜は秋にとある質問をした。


「何で東児じゃなくて俺を励ますんだよ」

「だって東児は星夜よりも物分かりがいいからね。東児より星夜の心を整えてから、もう一度話し合いを持ちかけようと思って」

「はは、つまり俺がめんどくさいって訳か」


 その答えに秋は頷き、蓮も物申した。


「そゆこと。東児はしっかりと話聞いてくれるからな」

「はっきり言ってくれるな全く……はは」


 ばっさりと清々しい顔で言う秋と蓮に星夜は思わず笑ってしまった。

 星夜の笑顔に秋は笑った。


「それでいいのよ、それで」

「え?」

「こうやってみんなで楽しいと感じ笑い合うのが一番じゃない?港に行く時とか、東児だけは反対していた。私にも言っていたわ、"危険な事をして、みんなに迷惑は掛けたくない"って。でも、星夜だけじゃなく私も蓮も東児の心配をよそに決行しちゃってこうなった。東児は思い出が大事だと思っていたけど、友情も大事だって事を教えてくれたのかもね」


 そう言ってジュースを飲み干して空き缶を簡単にくしゃくしゃのちっちゃな球体に変形させてゴミ箱に投げ捨てた。


「……って事で、東児に連絡する?」

「え!?」

「お、俺が?」

「私も蓮も普通に東児に話した。でも星夜だけはあれ以降一度も話してないでしょ?言うのよ、話し合おうって」

「……それも……そうだな。覚悟して電話しよう。なぁに簡単だ。いつも通りに言えばいいんだ」


 星夜は言葉を詰まらせながらスマホを取り出した。


「はは……何か緊張するな」

「そう?」

「いつもなら平気で遊ぼうだの、集合だのって言えるけど。何かこうゆう時って電話しづらいな……」


 星夜が中々電話を掛けようとはせず、うじうじしていると秋が焦ったくなったのか星夜のスマホを奪い上げる。


「もう焦ったい!!なら、私が電話するよ!育児なしの星夜に代わって伝言を伝えるって」

「わ、分かったよ。俺が電話するよ」

「なら早く!」


 秋に急かされながら電話番号を押す。

 コールが鳴る。緊張しながら耳に当てる。そして出た瞬間何を話そうか迷う。こんなに緊張するのは初めてだ。でも、言おうと決断した。と様々な感情が交差しながら待つ。

 コールが何度か鳴り、コールが止んだ。

 東児が電話に出なかった。


「電話に出ない……」

「もう一度掛けて見れば?」

「……あ、あぁ」


 秋に言われてもう一度電話を掛けるも出ない。何度も掛けるが出ない。

 自分が嫌なのかと考えてしまうほどに。


「何度かけても無理だ……何でだ?れ

「星夜が嫌のかな?」

「それはそれで傷つくぞ……」

「嫌だとしてもこんな態度はダメだよね。なら、私が掛ける」


 今度は秋のスマホで電話を掛けるも、出る事はなかった。しつこく掛けても出なかった。


「えぇぇぇ!私での出ないの?」

「今度は僕がやってみよう」


 蓮も連絡を入れるも反応はなく、全員が何度も電話を掛けるも反応はない。

 嫌がられているのか、それとも単に電話に出れる状態じゃないのか?考えるも、答えは一切浮かばなかった。

 そこで秋が提案する。


「東児の家は?私は行った事ないけど」

「……こんなに時間は東児のお母さんに迷惑だ。行かない方がいい」

「ふ〜ん。なら行けばいいか」

「そうした方がいいさ」


 星夜はスマホを見つめた。明日の朝、学校で言えばいいかと。そんなに無理して詰め寄るのはかえって悪い方向に進むかもしれないしと、スマホを懐に戻してこの日は帰宅した。

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