【Part10】危機一髪!!& 解散危機??
何とか港から撤退し、追手からも逃げ切った。
全員、生放送のことなんて忘れて必死に逃げる事だけを考えていた。港から離れて、何十分も走って近くの公園へと逃げ込んだ。
マスクを投げ捨てて、荒く息を吐く三人。
「助かったよ蓮」
「呑気な事言ってる場合じゃないだろ!!僕がいなかったら君達は──」
「だーだーだーだー言うな。助かっただけでも十分すぎるお釣りが来る。捕まっていたら東京湾に沈められてたかもしれないぞ」
「そんな古いネタなんてどうでもいいわ!」
星夜に怒っている蓮だったが、秋は何処か満足気だった。
「でも、大男ぶっ飛ばしたのはとても気持ち良かったわ!ババーンと一発殴って超気持ちいい!」
「何言ってるんだよ。大事何だぞ!!SNSとか大騒ぎだぞ!突然配信切れたから、襲われた?とか、凸しようかなって言う奴まで大騒ぎだ!」
「でも、大丈夫だったんだからいいでしょうに」
「はぁ……まぁ二人共無事ならそれでいいよ」
そう言ってると星夜のスマホに東児からの電話が鳴った。
『お前達大丈夫か!?放送途中で切れてしまったぞ!』
「いやぁ、色々あってな……来たら全部教えるよ」
『追跡は?』
「中止だ、中止。とにかく来てくれ」
東児に今いる公園を教えて、公園に呼び出した。
慌てて来た東児に今さっき起きた事を全て話した。男らと一戦交えたこと、大きな収穫なしなど星夜が説明した。
説明を終えると東児はため息を吐き、呆れた表情で言う。
「まずは皆んなの無事な事が確認出来て良かった……」
「まぁ、俺の頬に少しだけ銃弾掠ったけどな」
「そんな事言ってる場合じゃないぞ。お前ら二人がした事分かってるのか?港内を騒がせて、ましてや戦闘を行なっただと?しかも能力を使って……」
「でも、戻って来たからセーフだろ」
「セーフはセーフでも俺達じゃなくて世間の問題だ!」
東児が怒りを表していると付近から、複数のパトカーや無数のヘリコプターらがサイレンを鳴らしながら港方面へと向かう音が聞こえた。
騒ぎが広がっていく音に星夜も秋も事の重大さを少しずつ分かり始めた。
「まさかこのサイレンって俺らの事か……?」
「当たり前だ。明日にはニュースになるぞ。少年少女が港で大騒ぎってな!」
東児の怒りに蓮も秋も何も言えなくなった。東児の怒りは治らず、呆れ果てたように星夜に当たる。
「やっぱりやめとけば良かった。俺達みたいな、ただの学生がこうやって危険な事に手を突っ込むのは危ないんだって……分かっていたはずなのに」
「今まではただの学生だが、今は違うだろ。この力もあるし」
「それが間違いなんだ。この力でお前は傲慢になった。その結果がこれだ。これ以上はやめた方がいいぞ、俺達の身が危ない」
「でも、色々と収穫はあったんだ。もう少し、調べれば──」
星夜の訴えに東児は腕を突き出して話を止めた。
「それを世間に公表してどうするつもりだ」
「そ、それは……奴らの悪事を世にバラして……」
「バラして俺達に何の徳がある?確かにクリーンフォックスとやらが裏がある組織だとしたら、世間は賑わうだろう。俺らは更に注目を集め、世間的認知も高まる。でも、見る人々は思うだろう。もっともっと過激な事をしろと。お前はどんどん機嫌が高まる要求に応え続ける覚悟はあるのか?」
「……」
的を得た言葉に言葉が詰まる星夜。
東児は更に詰め寄る。
「この能力があると思ってるだろ。お前らが逃げれたのもその能力のおかげだ。でも、この能力があるからお前は危険に走ってしまったと俺は思う。お前は命と配信、どっちが大事なんだ?」
「俺は……分からない。はっきり言えば、この能力を使い慣れていく内に自分は無敵なんじゃないかって幼稚な考えが頭をよぎったんだ」
「言い訳はいい。もう済んだ事なんだ。戻る事は出来ない」
東児は拳を握りしめ、歯を食いしばり、星夜を睨みつけた。
「俺は辞める」
「東児!」
「お前が辞めない限り、俺は戻らん!」
東児は背を向けて歩き出し、星夜は止めようと肩を掴んだ。
だが、東児は星夜に一睨みし、手を払って自転車に乗って帰ってしまった。
「大事になっちゃったわね……どしよ」
暗闇に消えていく東児の背中に見て秋がつぶやく。
蓮はすぐさまスマホを開いた。そこには映像が切れるまでの配信動画
「SNSでもバズりまくりだ。アーカイブ消しても無駄だね。それに賛否両論、東児の言葉通りだ」
「有名人……の仲間入り?」
「悪い意味でね。これは炎上不可避って奴だね……」
「謝罪動画ルート?」
「それが正しいと思うけど、東児がいないんじゃあ余計にややこしくなる。今は文章だけで謝って乗り切るしかない。だろ、星夜」
蓮が呆然としている星夜に問うと、星夜は静かに頷いた。
「あぁ。頼めるか蓮」
「うん、SNSとかは僕が何とか抑えとくよ。でも抑えても現実は厳しいよ。その場限りの時間稼ぎだ。多分、明日明後日には付近、つまり僕達の高校とかで聞き込み調査が始まるよ。顔は隠しても学生である事は公表しているし」
「大丈夫さ、きっと……」
「そうだといいけどね。とにかく今は帰ろうよ。ここにいると怪しまれるし」
「そうだな……」
蓮の顔からも疑心暗鬼な表情が読み取れ、星夜は顔を下げた。
そんな星夜の顔を見て、蓮は尋ねた。
「星夜、まだ続けるか?配信を」
「……考えさせてくれ。じっくりと」
「そうした方が良い。東児の言葉通り、僕らにいつ危険が訪れるか分からない。そうなったら、今みたいに生きて帰れるか分からなくなる」
「……」
そうして三人は帰宅した。
空気が重く、誰一人として喋る事はなかった。
*
星夜の家──帰ってすぐ、部屋に一直線に行こうとしたが──
「星夜、頬の傷どうしたの?」
リビングから母親に呼び止められた。
咄嗟に作り笑いして星夜は答えた。
「学校の階段で壁に擦っちゃってね。かすり傷だよ」
「なら、良いけど。あまり夜遅くには出歩かないでね。ここ数ヶ月物騒な事件が起きるからね。港でも変な事起きるし、変な世の中ね」
「は、はは……そうだね」
笑いながらリビングを後にして、階段を駆け上がって部屋に戻り、電気を消してベットに横たわった。今日の事は忘れようと寝ようとしたが、今になってウルフとの戦いでの恐怖が蘇って来た。
手が震えて心臓も激しく鼓動し、寝れなかった。
それにコンテナから飛び出ていた銃の事も気になり始めた。そしていても立ってもいられず、"CC"。この銃の会社らしきロゴを思い出してスマホで調べ始めた。
「……CC。クライムカントリー、"罪の国"」
写真には軍人や傭兵、小さな子供や女性などがその銃を笑顔で持っている写真が大量に見つけた。
更に調べると、その銃は世界の紛争地域へと売られて、人殺しの道具に使われている。中には見たくもない画像もあり、目を背けてページを閉じた。
「くっ……何考えてるんだろうな俺」
気になる。余計な事を調べなければ良かったと思った。
でも、腑に落ちない。このまま引き下がる事が一番良いのか?東児は自分らには関係ない事だと言っているが、配信関係なく、この悪事を止めないとダメなんじゃないかと。
引き下がって普通の高校生に戻るか、危険を犯しても悪事を突き止めるべきか、この日星夜はずっと悩んだ。
何時間もずっと……
*
更に次の日──星夜が学校に到着すると、みんないつも以上にザワザワしており、昨日の配信の事を話していた。
星夜は周りをキョロキョロ見ながら歩いていた蓮を発見して話しかけた。
「おい蓮」
「うわっ!?びっくりした」
「そんなビクビクすんなよ。怪しまれるだろ」
「予想以上に噂が早いし、それに裏の校門にはパトカーが止まってって誰か言ってたから……」
「こりゃあ朝の集会は確定だな」
蓮もあまり寝れなかったからか目の下にクマが出来ていた。
「蓮も寝れなかったか」
「うん、あんな事があったんじゃね」
「東児は見たか?」
「あの後、電話とかしたけど全然出ないんだ。学校には来てればいいけど」
元気がない二人。そんな中元気よく秋が後ろから挨拶して来た。
「おいっす!二人共!元気かい?」
「元気ならぐっすり寝ているよ」
「私はぐっすり寝れたわよ?」
「そうかい……」
秋の元気に押されたまま教室へと向かう。
教室に恐る恐る入る星夜。だが、そこには東児の姿はなかった。
「いないか……東児」
「やっぱり色々と思い詰めている部分があったのかな」
「だろうな」
椅子に座るが周りから聞こえるのは昨日の配信の事ばかり。幸いにも星夜らは自分達が配信をやっている事は話していない。でも、何処か不安があった。
そうしていると、先生が教室へと入って来た。
「緊急の集会だ。みんな体育館に来てくれ」
案の定昨日の事で、配信者がこの付近に住む高校だという事で危険な事はしないようにと警察官らが呼びかけに来た。
「──である為、配信を行なっているとされている男子三名と女子一名を知っている。又はその可能性がある人を知っていると言う生徒さんは、誰でもいいので先生に言ってください。その場合、可能性がある生徒を呼び出して書き込み調査をします。それでも言えないという生徒さんの為に、後で学校全体にアンケートを出します。そこに記載して下さい」
とスーツ姿の中年男性が言い、ザワザワとした空気の中、集会を終えた。
その後、教室へと戻りアンケートに、今回の件を配信で見たか?とか、彼らがこの地域の人々だと知っていたか?など悪巧みNovaの事を認知しているか調べる質問が10個ほど書いてあり、最後の質問には彼らだと思う人の名前を書いてくださいという質問があり、全部適当に答えた。
アンケートを提出し、それ以降は普段の学校生活に戻った。
「今日も放送しないの?」
「今は自粛だって……それにこの状況じゃあバレるの時間の無駄だ」
「このままじゃ私達バラバラになっちゃうよ。いいの?東児も学校に来ないし……」
「良いわけないよ。俺の責任だ。何とか、ならないか考えてんだよ」
秋は元気のない星夜の元を後にして、蓮へと目を向ける。
蓮も蓮で落ち着きがなく、常に周りをキョロキョロと疑心暗鬼に陥ったように見ていた。
「何慌ててんの?」
「みんなが僕らを怪しんでるんじゃないかって……」
「そんなにならならくてもいいじゃん」
「その考えが出来る君がうらやましいよ」
蓮が暗く嘆いていると、窓際がザワザワと人が集まり出していた。
「何?」
「二人共来い、見てみろよ」
「ん?」
星夜が二人を呼び寄せて窓から外を見せた。
学校の外の道路脇に多くのワゴンカーが止まっており、カメラを構えたマスコミ達がいた。更には4台ほどのパトカーが止まっており、警察官らも集まっていた。
「おおよそこの高校にいるって分かったようなもんだな」
「休めば良かった……」
「マスコミもこんな時は嗅ぎつけるのは早いな。六道山での事件の時もすぐに怪しいとされる人物の高校を特定したからな」
マスコミが学校に来た。つまり、殆どこの学校の生徒だと言う事が分かったのだろう。多分、数日の間はマスコミが学校に張り付くだろうと星夜は感じた。
マスコミが押し寄せた事で、学校側は対応に追われてこの日の学校は午前中で終わる事となった。
警察に合わないように時間を置いて帰ろうとして、人があらかたいなくなったのを確認してからこっそりと一階男子トイレの窓から脱出し、学校の塀から逃げようとした時、蓮が誰かの気配を察知した。
「誰か来──」
「君達、話をほんのちょっと聞かせて貰えるかい?」
「うわっ!?」
いきなり後ろから現れた男に蓮が思いっきり尻餅をついた。警察官ではなさそうな軽装な格好。ヘラヘラと笑いながら胡麻をするように手を擦りながら三人に近づいて来た。二人がびっくりしてる中、星夜だけは冷静さを維持しながら問う。
「マスコミさんですか?」
「素性は見せれないが、警察……と言えばいいのか?とにかく話を聞かせてくれよ。すぐ終わるからさ」
そう言って男はヘラヘラとしたまま警察手帳をチラチラと胸ポケットから見せて来た。
男が警察手帳を見せた事で、蓮も秋もどよめきを隠せなかった。
「け、警察?」
「まさか本物!?」
その時、男は一瞬だけ鋭い眼になり、すぐに戻ったら、だが、星夜だけは見逃さなかった。
男のヘラヘラとした喋り方に不安を感じるが、この男から感じる異質な雰囲気。
普通の警察とは思えないこの男の言葉に、星夜は頷いた。
「ありがと、君達」




