【Part6】生放送準備中
数日後の午後6時30分──神奈川県横須賀市、駿河湾ターミナル付近。
星夜、蓮の二人はコンビニの駐車場にてドローンの整備をしていた。二人がいる近くには港の一つ駿河湾ターミナルがあり、毎日多くの外国船が船舶する国際的にも重要な港である。
情報ではここで武器密輸が夜に秘密裏に行われると言われている。全員がそれを信じて待ち構えている。
「スマホは取り付けた。カメラ撮影してるけど、パソコンにちゃんと写ってるか?」
「うん。画質も問題はないし、タイムラグもあんまりなし。十分過ぎるね」
「もう一度リハーサルするぞ」
「うん」
星夜の思考でドローンを動かしてリハーサルをしている二人。スマホのカメラがちゃんと写っているかどうかを確かめているようだ。
パソコンにはちゃんと二人を写しており、ちゃんと写っていた。
「ブレてないし、キチンと操作出来てるよ。長時間飛ばせるの?」
「あぁ、この数日間で訓練したから大丈夫なはずだ」
「だいぶん力使えるようになったね。相変わらずの努力家だねぇ」
「俺らも視聴者も皆が楽しまないといけない。どっちかがつまらないと思ったら、もう面白さには追求出来ない。だからこそ、もっともっとド派手な事で盛り上がらせるんだ」
「東児の奴、あまり気に食わない顔や物言いしてたけど?」
「あいつは昔から頑固者だ。強めに反対しているのは俺も分かっている。それに今やる事が危険なのも分かっている。でもな、それは宝の持ち腐れって奴だ。成功すればアイツも納得するだろう」
「そうかねぇ?」
「そうさ。さっ、リハーサルもここまでだ。秋に連絡してくれ」
「……分かったよ」
星夜の言葉に少々不満気になるも、蓮は言われた通り秋へと連絡を入れた。
同じ頃、秋は遠くから望遠鏡で港方面を見ており、蓮から電話が掛かってきた。
『そっちはどう?』
「情報通りよ。明らかに傭兵のような筋肉マッチョな外国人が何人か港付近を彷徨いているわ。それも目つきが怖いこと」
望遠鏡に映るのは港や港付近に映画に出てきそうなマッチョで悪人ズラな外国人が大量に周りを確認しながら歩いていた。銃こそは持っていないものの、目つきだけはとても厳ついのだ。
『やっぱり、情報は合っていたようだね。もう少し様子を見てから戻って来てね』
「はーい」
電話を切り、蓮と星夜はドローンの整備をさっさと終わらせた。
星夜はウキウキを隠せず、拳をプルプルと震わせていた。
「よし、ドローンの準備はオッケーだよ。操作は星夜の脳内コントロールに任せるからね。決して調子に乗らないでよ」
「任せろって。カメラを仕掛けたドローンを俺が操作して、武器の密輸をしているところを撮影する。その場面を生配信で流す!」
「後は東児に連絡だ。トラックが出発を確認出来れば、準備完了だよ」
星夜は東児にも連絡を入れた
『東児、そっちはどうだ?』
「俺も情報通りの場所についた」
東児は言われた場所である港から離れた六道山の山道の外れにある整備もされていない道路の草むらに隠れていた。
静かで誰もいない場所であり、草むらが風邪で揺れる自然音しか聞こえない空間。怖いというよりも、本当にいるのかという感覚で待ち構えている。
「本当に出てくるのかよ。こんな所に」
『あそこまで詳しく書かれた情報が正しくないわけがない。頼むぞ東児』
「これで何も来なかったら、俺はこのグループ降りるからな」
『お好きにどうぞ〜』
東児はムカついて電話を切り、ため息を吐く。
自分は馬鹿な事してんなぁと。
「何でこんな事してんだろな俺……」
自転車でわざわざ何時間も掛けて来た東児。ペットボトルのジュースを飲みながら何か現れるのを待つ。
一時間ほどが経ち、空がオレンジ色に染まって陽が沈みかけていた。草むらでシートを敷いて寝込んでスマホをいじっていた。眠気も出てきて流石に東児も来ないと思い始めて、苛立ち始めた。
「まだ来ないなぁ。やはり、嘘情報だったか?ん?」
山の奥から無数のライトが付き、地面が徐々に揺れ始めた。
東児はその方向へと身を潜めて目を凝らした。
「来たか?」
揺れと共に砂道を走る車の音も接近してきた。少し待つと10台を超えるトラックが連なって道に出てきた。
一見何の変哲もない白のトラックだが、荷台を見るとシートが被さっているが大きな機械らしき物が乗せられているのだけは分かった。だが、山の奥から出てくるのは少しばかり不自然だ。別に汚くもないトラックに、シートも汚れていない。工事などの作業ではない事と東児は予測した。
それに運転席に乗っているのはガタイの良い外国人らが乗っており、トランシーバーで何処かへと連絡を取り合っている。
「……傭兵か?環境保護団体のはずだろ。それに……あの積荷。明らかにおかしい。まさか、本当に──」
10台以上のトラックは全てが南へと方へと向かっていく。
星夜の予想が当たったのは間に触るが、すぐさま東児は連絡を入れた。
『どうした?動きはあったか?』
「お前の予想が当たったのはムカつくが、本当のようだった。10台以上のトラックが南へと向かって行った」
『分かった、サンキューな。で、お前はどうする?そのまま家帰るか?』
「……考えとくわ」
『オケ』
電話を切り、何秒かの沈黙が続いた。
「……」
東児は街へと向かうトラックを見つめる。何か
「最後だ、最後だ。こんな馬鹿げたこと最後にしてやるからな!」
チャリに乗り込み、追跡を開始した。
東児から電話を受けた星夜。怒っているのは分かっているのだが、別に気にする様子もなく、用意を進める。
「車が本当に動き出したようだ」
「東児怒っているように聞こえたけど、大丈夫なのかい?」
「気にすんなって。それよりも始めようぜ。新世代の配信の始まりだぞ。それにいい天気だし」
「う、うん……天気もなんか悪そうだけどね」
空は雲一杯の曇り空。それに天気予報だと、雨の確率70%と言っていたが──
*
ターミナル内。コンテナ船が停泊しており、コンテナをガントリークレーンで降ろしてるが、船の周りには筋骨隆々な外国人らが何十人も周りに目を光らせている。
その中に一人、周りの男らとは一際違う男が船近くのコンテナに寄り添って船をじっと見つめていた。プロレスラーのような黒色のマスクを被って顔を隠して、マントを羽織っており、身体には鎧のような装備が施されていた。
「……嫌な風が吹いているな」
ボソッと呟くと通りかかった兵士が空を見上げながら答える。
「日本は地震や台風がよく起きる島国ですからね。台風が近づいているんじゃないですかねぇ」
「だと、いいがな」
「ん?」
男のスマホが鳴った。
電話に出ると、野太い声の男からの電話だった。
『ウルフ、もうすぐで客が来るぞ』
「分かった」
『クマにも連絡しておけ』
「あい分かった」
『今回の客は超大物だ。もしも何かあった場合は──』
ウルトと呼ばれる男は一方的に電話を切り、クマと呼ばれる男へと連絡を入れる。
「クマ、俺が指示を出すまで待機していろ」




