【Part4】ドヤ顔で体力測定を受けたら大変な事になった!
星夜の言葉通り、細かくやる事を変えて配信や動画投稿を続けた。
金をいっぱい手に入れ、星夜らは最新ゲームやスマホ、撮影器具など大量に買い込んだのだ。
その中でも蓮が勝ったドローンは全員のお気に入りとなり、上空からも撮影できるようになった。
「高いところから撮影?」
「そうだよ。結構操作大変なんだよね。これ……」
「なら、任せろ」
「え?」
星夜がドローンを地面に置き、両手で覆うように手をかざす。するとドローンの一部が分解されてデリケートな基盤が露になった。
両腕の皮膚の一部がパカっと扉のように開き、その中はロボットのような複雑な構造をしていた。そこから複数のコードが伸び、ドローンの基盤に接続され、何やらデータを送り始めた。
「な、何してるの?」
「ドローンのコントロールを俺の脳内と接続させる」
「それするとどうなるの?」
「簡単に言えば、コントローラーなしでも俺の思考で動かせる事が出来る。カメラを接続して、その視点を俺の目として動かせる」
「良く分かんないけど、すごいんだね……」
秋は理解してないが、蓮は頭を頷かせて納得していた。
そしてコードを身体に戻し、ドローンから離れた。
「動かすぞ」
星夜が頭に力を入れ、電源よ付けと念じるとドローンの電源が付き、浮けと念じるとプロペラが回り始めてゆっくりと宙に浮いた。
全員が驚き、思わず秋は拍手をしていた。
だが、ドローンはふらふらとバランスが不安定だった。
「凄い凄い!」
「あんまし話しかけるなよ。結構意識集中させないとバランス取れないからな。うっ……」
意識が途切れてドローンが落ちた。蓮はすぐに地面に落ちる前にキャッチした。
「すまん。意識が……」
「大丈夫、大丈夫。それよりもその能力が上手く使いこなせれば、様々な機械と星夜の脳をリンクさせる事も出来るって事か」
「そうゆう事。家のテレビでやってみたら、俺の意思で電源を入れたり、チャンネルも変えられるようになったんだ。リモコン要らずだよ」
「星夜の能力であらゆる機械を自由に動かせるなら、例えばあの自販機とかは?」
蓮が指を差したのはジュースの自販機であった。
星夜は自販機の前に立ち手をかざした。
すると自販機のボタンが全部光出して、準備中と売り切れの文字が交互に表示されて、明かりも消えたり付いたりした。全員が不安になるが、星夜だけは冷静だった。
そのうち取り出し口から何本もの缶ジュースが落ちてきた。
「初めてやったけど、結構凄え威力だ」
「でもジュースどうするよ」
「貰っちゃあ……ダメだよな」
星夜がいやしそうに東児に問うも東児は首を横に振った。
しょうがないので出てきたジュース代を自販機の上に置いて全員で分けあった。
*
そんなこんなで少しずつ能力の使い方を慣れて来た四人。それぞれ日常生活でも刻印の使い方をマスターし始めていた。
東児の糸の刻印は糸を触れた者同士、脳内で会話出来ると分かった。その能力をテスト中、糸を放って四人と脳内で会話していた。
『このA-2の四択の問題分かる人いる?』
みんな黙々とやっているように見えるが、秋だけは悩んでいるフリをして皆んなに問いかけた。秋以外は平均点以上は取れるが、秋だけは頭があまりよくないので、秋が必死に頼み込んだのである。
秋が早速皆んなに聞くと、星夜が直ぐに答えた。
『それはAだよ』
『ありがと。次の四択は?』
『D』
『ありがと。次は?』
と次々と答えを聞いていき、見事に全員同じ点数で高得点を取った。
だが──
「お前ら四人、なぜ全員5教科全部同じ答えで、同じ点数なんだ!?」
「いやぁ……それは何ででしょうねぇ?」
怒り浸透な先生に呼び出されて、四人の前にテストを突き出された。先生の言った通り、全員5教科一問一答全部片手で同じ点数であり、疑わない方がおかしいくらいのピッタリな点数だった。
「お前ら四人合同でカンニングしたなぁ?誰かの回答覗いたのかぁ?」
「やってないですよ!そんなことは。先生らに聞けば分かりますよ。俺らはカンニングはしてませんからぁ」
何やんか星夜が言い訳をして、無理やり乗り切った四人。だが、これ以降は授業であんまり能力を使わないと決めた。
別の日の体力測定──ソフトボール投げの時、いつも距離が短い蓮だが、この日はやけに自信に満ち溢れている様子である。
「お前、やたら元気あんじゃん。まさかと思うが──」
「そのまさかだよ」
「あんまし使うなって言ったばかりだろ」
「ボール投げくらいはいいでしょ。いつもみんな馬鹿にするし」
「今回だけだぞ」
これは止めようにも止められないなと感じた東児は渋々許可をした。東児と星夜は刻印を使わずに力を抑えて投げ飛ばした。
まずは東児。
「抑えて抑えて、力を抑えて──!」
力を抑えてゆっくりと投げ飛ばした。真っ直ぐと円を描くように飛んでいき、白線が書かれている場所を優に越してしまった。
「わぁ……」
「64m!学年最高じゃないか!」
「あ、ありがとうございます……」
先生も他生徒もびっくりする中、星夜の番となる。
「へっ、あんなもん俺だって超えられるさ!」
「力抑えろよ星夜」
「お前の記録を越すぐらいにはな!」
野球のボールを投げるようなフォームを描いてボールを投げ飛ばした。
目にも止まらぬ速度でボールは飛んでいき、東児の記録を簡単に越して校庭端のフェンスにめり込んだ。
「マジかよ」
「先生!記録は?」
「122mだ……」
全員が固まっている中、次は蓮の出番になった。
その顔はフェンスより向こうを捉えており、明らかに刻印を使おうとしているのが丸わかりであった。
だが、他の生徒らはそんな事を知らずに馬鹿にしたような罵声を浴びせる。
「蓮!10mは越せよ!」
「みんな下がらなくていいぞ!むしろ近寄れ!」
みんなが笑い馬鹿にするが、蓮はそんな戯言は耳には入らず目先のフェンスを超える事だけを考えていた。
ボールを握りしめて、何とも言えない絶妙にダサいフォームで投げようとした時、風の刻印の力を発動して手を離した瞬間に強風をボールに当てて空高く飛ばした。
蓮の周りから強風が吹き、全員が飛んできた砂で目が見えなくなり辺りは砂煙に包まれた。
「あいつ、マジでやりやがったな」
「それもこんな校庭で……」
当の本人はドヤ顔でいたが、煙が収まると先生は蓮の前で困り顔をしていた。
「お前……」
「なんですか先生?記録は?」
「いきなりの風でびっくりしたが、記録は7mだ」
「嘘でしょぉ!!?」
地面を見ると10mに届かない7mの場所にボールが落ちていた。
「何で!?」
「能力をうまく使えても、運動神経がよくなるとは限らないってもんだよ」
「そんなぁ……」
本人は上手くいったと思ったが、運動神経は能力に反映する事はなかった。蓮は肩を下ろして残念そうに座り込んだ。
それを遠くから見ていた秋は握力検査をしていた。
「あいつら馬鹿でしょ。ふん!」
と力を込めて握力計をギュッと握りしめた。
「秋ちゃんメーターが!」
「うわっ!?」
友達の声で気づいた、握力のメーターが何周もして計測不可能な数値になってしまっていた。
今年の体力測定は先生も頭を悩ませるほどであった。




