18.刻印決戦
「なら、最初の洗礼だ! 避け切れるか!」
劉生の力で無数の木が地面から抜き取られて、一斉に僕の方へと飛んできた。
僕は炎の刻印の力で右手に炎を溜めて、地面に叩き飛ばして、その場に爆発を起こした。煙に隠れて僕は木の的にならずに、避けきった。そして、僕は指をパチンと鳴らした。
その瞬間、劉生の周辺にある地面が一気に爆発を起こした。
「何!?」
辺り一帯が煙にまみれた隙を見て、僕は一気に距離を詰めて、瞬く間に眼前に迫った。
「はぁぁぁ!」
「!?」
劉生は突然に僕が現れた事に驚き、防御が間に合わず、放った拳は真っ直ぐと顔面を捉えた。
拳は深く頬を直撃した。だが、劉生はその場に足を力強く踏み込んで耐え切った。
そしてすぐに劉生は反撃に転じて、足を踏み込み僕の足を触手で動けなくした。手を握りしめて右手に力を溜め始めた。
そして手が大きなオーラを纏うと手を勢いよく突き出し、衝撃波を放った。
「アホが!」
僕は桁外れの衝撃が身体全体を襲い、森の方へと吹き飛ばされた。いくつもの木を薙ぎ倒しながら、僕は地面に倒れた。
「ぐっ……いっ!」
右足に激しい痛みを感じた。思いっきりぶつけて、青い痣が出来てしまった。
立ち上がろうとした瞬間、目の前に劉生が瞬間移動して来て、僕の身体の上に乗り、そして手を爪を立てるようにして喉元を突いた。
「死ね!」
「クソ!」
ギリギリで劉生の腕手を掴み、もう片方の手で火球を咄嗟に作り出して地面に叩きつけて衝撃でお互い吹き飛んだ。
すぐに体勢を整えて再び火球を作り突撃しようとした時、とあるものを発見した。
「こ、これは……あの時の」
地面に突き刺さっていたのは前にサッカーの授業で蹴り飛ばしたボールであった。こんな所にあったのか。使えるかもしれない。
地面から取り出して、劉生へとボールを向けた。
「劉生……サッカー勝負だ」
「あ? お遊戯のつもりか?」
「本気のサッカーだ! オラァ!」
痛んでいる右足を使って痛みに耐えながら、僕はボール蹴り飛ばした。ボールはあの時と同じ、燃える魔球となり、劉生の元へと飛んで行った。
「コントロールは抜群だ!!」
「付き合ってられるか!」
劉生は手を突き出してボールを直前で受け止めた。
僕は走って飛び上がり、受け止められているボールを押し込むように更に蹴り込んだ。
「うおぉぉぉ!」
「くっ!」
ボールは徐々に押し込まれて行き、劉生の顔面に直撃して爆発した。
「ぐわっ!」
再び森の中から公園へと戻ってきた僕は、劉生が気づく前に地面へと火球を無数に投げ、地面に煙を発生させながら劉生へと近づいて行く。こうすれば、金縛りのような触手技は使いづらくなるはずだ。
「なるほどね。なら、次の手だ」
劉生は空に手を挙げた。その瞬間、辺りを徘徊している複数の自衛隊のヘリのコントロールを奪った。そして全て僕の方面へと機関銃の銃口を向けた。
「やばい……」
劉生が片方の手で銃をポーズを取り、撃つフリをした瞬間、ヘリの機関銃が一斉に煙の中に隠れている僕へと射撃を開始した。
「クソッ!」
「全て避け切れるかなぁ?」
咄嗟に炎を纏った片手を地面へと当てた。ドーム状の炎の膜で出来たバリアを作った。弾は煙の中へと無差別に撃たれ、弾がバリアの中へと入ると、すぐに溶けた。
だが、一部の弾がそのままはバリアを貫通して、僕の肩へ被弾した。
「うっ!」
痛みの声を上げると劉生は聞き逃さずその場所を特定するなり、僕のいる場所へと集中的に射撃を始めた。
「そらっ!」
「このままじゃ、いい的になるだけだ。なら──!」
僕は煙の中から飛び出した。そして真っ直ぐと劉生がいる方向へと走った。僕の作戦、それは劉生との距離を詰める事だ。
劉生は咄嗟にヘリの銃口が僕へと向こうとしたが、その時には劉生との距離は目と鼻の先になっており、自分への被害を考えて撃つ事はなかった。
「それくらい読んでいた!」
劉生は先程のSAT部隊の所持していた銃を懐から取り出し、容赦なく撃って来た。
僕はギリギリのところを攻めて、避け続けた。その最中、両手から火球を作り出して、一つを地面に当てて、土の下へと潜伏させた。
一発の銃弾が頬を掠った。だが、僕は速度を緩める事なく接近して、劉生の目の前を飛び越えた。
「そらっ!」
「何!?」
僕は飛び越えた時、劉生の後ろ首元に火球を配置して、劉生が振り向いた瞬間に爆発させた。
「ぐおっ!」
そして吹っ飛んだ劉生が着地し、その場所には潜伏させた火球があり、タイミングよく爆発させた。
更に両手に大きな火球を作り出して同時に投げ飛ばし、巨大な爆発を起こした。
「ぐあぁぁぁ!!」
劉生は火だるまになり、手を振り払うと火は一瞬で消え去った。だが、火傷した場所は徐々に回復しており、火傷した跡は何もかもなくなった。その再生する姿がやけに不気味に見えた。
「回復能力まで備わっているなんてな……勘弁してほしいな」
「ぐぅ……結構痛かったぜ鷹斗。けど、どんどんやる気になって来たようだな。嬉しいぜ、全く」
歩こうとした時、足にズキっと痛みを感じた。先程のダメージで負った傷がこんな時に……
痛みに耐えながらも、再び火球を作り出そうとした時、足が劉生の触手によって食い止められていた。
すぐに火球を地面に投げようとした時、劉生は手を突き出して更に触手を出して僕の腕をキツく縛り上げた。
「またこれか!」
「隙を見つけるのに苦労したぜ。怪我して良かったなぁ」
ゆっくりと近づき、再び銃を取り出して僕に向けて来た。
「漫画とか銃を額に近づけると、人間汗が出るけど、本当なんだな。死が迫る恐怖に一番人間らしさが現れる」
どんだけ力を出そうにも出せない。
劉生は引き金を引こうとした。
「アディオス〜鷹斗君」
身体の力が強ばり、目を瞑った。
その時、突然劉生の右手の甲に矢が刺さった。この矢は真紀のだ。一瞬で気づいた。真紀が助けてくれたのか?
「うっ……!」
痛みから隙が出来て、触手の力が弱まった。手を縛った触手を振り払い、地面に向かって火球を投げて足の触手も消しとばした。
先程の攻撃よりも痛み悶えている劉生から一旦離れて、真紀の元に向かった。
「ま、真紀。助かった」
「伊達にキャプテンやってる訳じゃないのよ。弓道部のね」
突然放たれた矢の正体。それは真紀が放ったものであった。真紀は百mも離れた木の陰から、劉生の手の甲を矢で射たのであった。大会優勝経験もある真紀だからこそ、出来た所業だが、それよりもこんな危険なところに来たことに、心配と感謝の板挟みになった。
「やっぱり来て良かったわ。予感も的にも的中したわね」
「上手いこと言ってる場合か。でも、本当に助かったよ。やっぱりここは危険だ。後は僕がやるから、本当にありがとうな」
「そんな事よりも足は大丈夫?」
「痛いけど、耐えられるさ」
「よかった……勝てる勝算はあるの?」
「嘘か本当は分からないけど、彼の意思次第だ。それで僕が審判する」
「……鷹斗を信じる。絶対に勝ってよ」
真紀は僕に抱きついて来た。暖かく、数秒が何分もの感覚にも感じた。そして何処か懐かしい感覚だった。両親に抱いてもらった感覚に似た優しく、愛のある感覚だった。
「貴方なら絶対に勝てる。私は信じてるからね」
真紀は涙目ながら、山を降りて行った。




