12.後悔
俺はあの男と戦いを繰り広げていた。力を駆使して辺り全部の地面から一気に木を抜き、全て飛ばすも奴は走りながらも一本一本擦りもせずに避けながら接近して来た。
「はぁ!!」
木を避けた隙に俺は空を飛び、山の頂上へと一気に移動した。
男は俺を追い、同じく頂上へと移動して来た。
「お前も見る限り、俺と同じ力を持ってるな。だけど、その力を発動しないって事はまだ使えないか、それとも使えない理由があるって事だな。だが、貴様ほどのやり手が使えないって事はないだろう。したがって使えない理由があるな。街の被害か?それとも他の理由か?」
「理由ならあるが、お答えできかねんな。だが、刻印をそこまで使いこなせる程の腕は褒めてやる」
「刻印?この力の事か……カッコいいじゃんか」
「その力は闇の刻印。お前を放ったおけば、この次元そのものにも大きな影響を与えてしまう。だから、ここで始末をさせてもらう」
「出来るものならな!」
男は俺に飛びかかり、取っ組み合いとなり地面を転がり落ちた。
お互いに必死に殴るも、男は怯む事なく俺へと殴り続けてくる。奴は何故刻印ってパワーを使わないんだ。
考えていると、男はその隙を見逃さずに俺を殴り飛ばして木に叩きつけた。反撃を繰り出そうと刻印の力を発動しようとすると、突然胸が激しく痛みだした。まるで力強く殴られたような痛みが走った。
「うぐわっ!」
刻印の力も出来ず、動きも止まってしまった。男はすかさず、攻撃を仕掛けて来た。
「仕留めた!」
「くっ!」
や、やられる!動こうにも動けない……このままじゃ──
その瞬間、俺はその場から突如として姿を消した。
「……また、いなくなったか」
男は自分の腕をじっと見つめながら、悔しそうに木を思いっきり殴った。
「また、出来なかった……」
*
警察は僕を探しているが、顔を隠していたお陰でバレてはいないと思う。体操服だから、ちょっと危ないかもしれないけど。でも翔吾君を殺した事には変わりない。
僕は罪悪感に見舞われたまま、逃げた生徒達と混ざるように合流した。真紀に助けられた女子生徒の一人が僕を心配しながら話しかけてくれた。
「鷹斗君、真紀ちゃん大丈夫かな……救急車に運ばれたけど」
「救急車に!?」
「うん。ぐったり様子で大急ぎで運ばれたみたい……」
「……くっ!」
僕は体育館から飛び出して運ばれたと思う近くの病院へと走った。僕のせいで真紀が怪我をしてしまった。その罪悪感が体を包み込みそうになりながら僕は病院へと走った。
病院へと到着すると、入り口には真紀の両親が慌ただしく医師と話していた。
「真紀のお父さんとお母さん!!」
「た、鷹斗君!」
「真紀は大丈夫ですか!?」
「……命に別状はないとは言われて今は軽い治療を終えて部屋に案内されたよ。でも生徒達みんなの証言がおかしくて……君も居たんだろ?どうゆう事なんだい?」
「僕も避難していて、あまりよく分からないんです……申し訳ありません」
「そうか。真紀は意識が戻ったようだから、会いに行ってやってくれるかい?私達はもう少し警察の人と話すから」
「分かりました……」
僕はすぐさま真紀がいる病室へと向かった。
ドアを開けると真紀はベットで横たわっていた。僕が入って来たことに気づくと起き上がってくれた。
「真紀、大丈夫!?」
「私なら全然大丈夫よ。刺さったの結構浅かったみたいだから、命に別状はないって言ってたし……」
「だけど僕が迷ったせいで……」
僕は真紀のベットの前で膝を突き、情けなく涙を流してしまった。
「もっと、僕がしっかりしてれば……真紀をそんな目に合わせなくてすんだのに……」
真紀は優しく頭を撫でてくれて、温かみのある声で語りかけてくれた。
「人を助けるって勇気がいると思われるけど、こんな時って人は無意識に行動にでちゃうのよね。命の危険を顧みずに……でも、戸惑うのも無意識だから、仕方がないわよ。考えずに動ける方がおかしいんだもん」
「でも、刻印を持った僕が……いながら」
「自分を特別視しちゃダメよ鷹斗。特別視すれば、周りの目も気になるし、プレッシャーにもなってしまうもの。自分は普通だと思うのが一番。確かに刻印は特別な能力かもしれないけど、それをどう使うかは鷹斗次第よ。特別と捉えても、普通にすれば大丈夫よ」
「でも、僕は翔吾君を殺してしまった。怒り任せで殴ってしまった……頭の中にずっと残るんだ。あの瞬間と、あの時の怒りが。自分を忘れて殴ってしまったんだ!」
「……」
僕は無意識に声を荒げて、言い訳をするように言葉を発していた。それに対して真紀は口を開くことなく、顔を俯かせた。
「翔吾君には悪いと思うけど、被害を減らせた事だけはよかったと思うべきよ。鷹斗が行動しなかったら、下手すれば死人も出ていたかもしれないのよ。だから今は自分を責めずに、劉生君を何としても私達で止める事を考えるべきよ」
「本当にすまない。こんな時まで……真紀に励まされて……」
「いいのよ。今は鷹斗も休んでね」
「……分かった。本当にありがとう……」
真紀の言葉に僕は涙が滝のように溢れそうになったが、情けない姿を見せては行けないと涙を耐えて真紀に感謝した。
自分は特別な能力を手に入れたけど、特別ではない。僕は僕で、何処にでもいる一人の高校生だ。でも、彼を止めないといけないと言う事だけは変わらない。
*
俺は突然、惠美子の前に現れた。周りを見ると、そこは惠美子達がいる倉庫であった。
「!?何だ、何故ここに!」
「大丈夫ですか劉生さん」
「……くっ、お前が戻したのか」
「はい」
俺は無性に腹が立ち、惠美子の胸ぐらを掴み壁に叩きつけた。
「何故俺を戻した!!」
「あの時、翔吾さんが死んでしまいました。それで貴方の身体に何かしらの異変がおきたようです」
「ちっ、役に立たない奴め!」
惠美子から手を離して、俺は力なく座り込んだ。
力を発動しようとしても、身体が痺れて何も出来ず、ただ手が痛くなるだけだった。
「ちっ、まだ上手く力が制御出来ねぇ。
「うまく制御が出来ないうちはあまり、大掛かりな行動は止した方が身のためです」
「……そうだな。今は力を蓄えるのが一番だな」
「信者を連れて参りますので、力を蓄えましょう。取っておきの人物を用意いたします」
「何だ?」
「貴方の身内ですよ」
身内と聞き、一人だけ思い当たる人物がいた。
だが、それよりも不気味に微笑む惠美子の顔に少しだけ寒気がした。




