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刻印戦記-Crimsonuniverse  作者: ワサオ
1-①紅と黒
11/77

11.戸惑い


「ようやく会えたな端義劉生だな」

「貴様は……なるほど。俺をぶっ飛ばした奴だな」


 俺の背後に現れたのは俺を蹴り飛ばした男だった。

 男は制服を着ていた。ここの生徒だったか?


「お前はここの生徒だっけ?」

「……さぁ。どっちだろうな。それよりも……」


 男はジリジリと歩み出して俺に近づいて来た。

奴からは闘気がみなぎっておりここで戦うつもりなんだな。


「やる気だな。ここで……」

「あぁ、その力は危険過ぎる。力の高まり方が異常だ。離れていてもその力を感知出来るほどにな。これ以上の行動は許さん。ここで仕留める」

「学校の周りは住宅地だ。それでもやるか?」

「そのつもりだ!!」


 いきなり男は大きく脚を踏み込み、勢いよく俺へと接近して攻撃を仕掛けて来た。

 俺は男のパンチを受け止めた。衝撃が走り、翔吾はフェンスに弾かれた。


「へぇ、やるじゃんか」

「これが本気だと思うな!」


 すると受け止めた状態から更に力強く押し込まれた。俺の手が徐々に押され、手が弾かれた。その隙を見逃さず、男は俺の顔を蹴り飛ばした。


「くっ!!」


 俺は身体に力を入れてフェンスギリギリで動きを止めた。口から血が出て、俺はその血を拭き取った。

 予想以上の力に侮っていた。だが、俺には策がある。


「俺の勘違いだったな。だが、楽しみを邪魔されるのは嫌なんだよな。翔吾、お前に仕事をやろう。俺の標的はこいつだ。だから、翔吾は下で存分に暴れ回れ」

「……分かったよ」


 翔吾は生気のない声で言い、俺はパチンと指を鳴らした。翔吾はその場から姿を消えた。


「何をするつもりだ」

「邪魔な奴は倒すだけだ。俺の理想を潰す奴を……お前も鷹斗もだ」



僕は体育の授業でサッカーをしていた。先生や真紀にはまだ辞めといた方がいいよと言われたが、たまには運動したいと説得して授業に参加した。

 翔吾君に刺された近藤先生も軽傷で済んで、今ではもう職場復帰を果たしていた。

 僕は校庭を駆け走り、動き回っているが、刻印を手に入れているからか、足の速度が以前の何倍にも膨れ上がり、サッカーの最速を誇る生徒ですら軽々と追い越してしまい、殆どの生徒は驚いていた。


「鷹斗……お前、そんなに足早かったか?」

「え、いや、気のせいだよ。久しぶりだから、テンションが上がっているだけさ。ははは」


 しまった。個人的にはいつもの感覚で走っているも、刻印を手に入れて、制御がなかなか出来ない状態だ。

 なんとか笑ってやり過ごしたが、このままではやばい。バレるのは時間の問題かもしれない。


「鷹斗、思いっきり蹴れ!!」

「分かった!!」


 クラスメイトからボールをパスされて、僕の目の前にまで飛んできた。僕はテンションが上がって、刻印の力の事をことも気にせずに、力一杯ボールを蹴り飛ばした。


「そら!」


 ボールに足が当たる一瞬だけ、無意識に刻印が発動してボールを燃やしてしまい、燃える魔球のような状態になって飛んでいった。


「し、しま──」


 ボールは勢いよく生徒達の間をすり抜けて、隕石の如く猛進し続けてた。

 ゴールキーパーはそのスピードや燃えている状態に、止める事を放棄してゴールから離れた。


「ひえ!」


 ボールはそのままゴールへと入り、ネットを軽々と突き破って高校の後ろに聳え立つ山の山頂へと飛んで行き、山頂からは煙が上がった。


「やばっ!」


 またしてもしまった。

 周りの生徒達が僕を凝視している。いきなり燃える魔球を蹴り飛ばすクラスメイトが驚きを隠せていない。

 幸いにも誰もボールに当たっておらず、怪我人もいなかった。本当に助かった。


「お前、何だ……そのキック」

「あ、いや、それは、あの……」


 僕が先生の問いに答えを詰まらせていると、別の場所でテニスをしていた真紀が僕の状態に気づき、テニスラケットを投げ捨てて、大急ぎで駆けつけて来た。


「鷹斗の奴、まだ本調子じゃなくてですね先生!」

「え?」

「熱があるかな? ちょっと、保健室に連れて行きますねぇ!」


 真紀は笑いながら言って半ば強引に手を引っ張って、僕を校庭から引き離した。


「何なんだ鷹斗の奴……」


 先生や生徒達は呆れ果てていた。

 僕は玄関前まで引っ張られると、真紀に説教された。


「鷹斗、あれほど言ったでしょ。刻印を学校で使うなって」

「僕だってそうしたいさ。でも、ずっと体育休んでいるのもアレだし、無意識に刻印が出ちゃうの」

「出ちゃうのじゃないのよ! 今は、誰にも被害に遭わなかったから良かったけど、本当に良かったわよ」

「何とか制御したいとは思っているが、やはりまだまだ改善点が多いな」

「刻印を持っていない私が言うのもアレだけど、頑張って制御しましょう。少しでも手伝うから」

「何とかしてみせるさ。ありがとうな」

「でも、今は休んでた方がいいわよ。まだ本調子じゃないんだし」

「そうする……」


 何とかしたいのは重々ある。だけど、まだ完全には使いこなせていない自分がいた。でも、もう少し慣れるまでは体育の授業は辞めた方がいいかも。

 そう思い保健室へと向かおうてした瞬間──


「きゃあ!!」

「何だ!?」


 悲鳴が外から聞こえて来た。僕は咄嗟に外へと飛び出した。

 そこには以前、消息不明となった翔吾君が校庭で暴れていたのだ。近藤先生を殴りかかり、倒れた先生に馬乗りになって殴り続けていた。


「先生!!」


 すぐさま翔吾君の元へと走ろうとしたが、この刻印の力がみんなにバレるのはあまり良くない。でも急がないと……迷っているとゴミ箱に白いビニール袋を発見した。


「これしかないか!」


 ビニール袋を取って二つ目の部分に穴を開けて被った。ハッキリ言って気持ちいいものではないけど、バレるよりかはマシだ。

 そんな事をしている間に他の生徒らが翔吾君を取り押さえていた。だが、翔吾君の周りからオーラが放たれた。


「はっ!」


 と翔吾君が声を張ると、取り押さえられた生徒達は衝撃波により最も簡単に弾き飛ばされた。吹き飛ばすと翔吾は他に取り押さえようとする周りの生徒達へと攻撃を加え始めた。

 顔からは生気がなく、明らかに普通の様子ではないのは確実だった。


「や、やばい!!」


 翔吾君へと向かうと今度は屋上の方からフェンスを突き破る音と共に翔吾君とは別の衝撃波が発生した。


「まさか!?」


 走りながら空を見上げると空中で制服を着た二人が激しく戦闘を行なっていた。あの金髪の生徒……まさか劉生君!?それにもう一人の男子生徒もまさかあの男性!?それにあの身のこなし、やはり彼も刻印を……

 劉生君は空を飛び、男へと衝撃波を放ち壁に叩きつけた。だが、男はすぐに劉生君へと殴りかかり二人の戦闘は周りの人々も目を釘付けにされていた。


「何だあれ……」

「現実なのかこれ……」

「うそだろ……」


 生徒達や先生がボヤく中、二人は学校裏の山の方へと飛んでいき激しく戦闘を繰り広げ続けた。僕は彼に劉生君を任せて翔吾君へと向かった。

 翔吾君が別の生徒に襲い掛かろうとした時に、ギリギリ僕は間に合って攻撃を手で受け止めれた。


「早く先生らを連れて離れて!!」

「き、君誰!?何そのビニール袋!?」

「そんな事より、僕は翔吾君を抑えるから、早く!!」


 生徒達をその場から離した。真紀も手伝って、驚いて動けない生徒らを誘導していた。


「みんなは私が誘導するからた……いや、貴方はは翔吾君を!!」

「分かった!!みんなをなるべく学校の外へと離してくれ!!」

「もちろん!!」


 真紀は苦笑いしながらも生徒達をその場から離した。僕は翔吾君を手を掴み上げてもう片方の手も掴み止めた。


「翔吾君、落ち着け!!」

「鷹斗君を殺せば……殺せば!!」


 僕の事には気づいていないが、何故だか僕にとんでもない恨みを持っているようだ。やはり劉生君との関係が何か変化を……

 翔吾君の手の力が徐々に強まっていき、掴み上げた僕の手が翔吾君の前に身体ごと引き寄せられた。普通の人間の力とは思えないパワーが働いている。そして懐に隠していたナイフをいきなり取り出して、僕の肩へと突いてきた。


「死ね!邪魔だよ!!」

「ぐっ!!」


 ナイフは肩に突き刺さり、肩からは血が流れた。痛い……だけど、このくらい耐えてやる。僕はナイフが刺さったまま翔吾君の腹を一度殴り込むが、翔吾君はダメージを受けてないのか不気味に笑って僕の首根っこを掴み、学校側へと投げ飛ばした。


「うわっ!!」


 僕は二階の誰もいない教室へと投げ飛ばされてガラスを突き破り、椅子と机をを薙ぎ倒しながら壁に激突した。


「いてて……」


 あの時、思いっきり殴られなかった。明らかに体が動揺して中々強く攻撃ができない。あの時、劉生君には怒りを糧として殴れた。でも、翔吾君が被害者だと考えると力強く殴る事が出来ない。

 彼を止めないと……被害が。洗脳を解くにはどうすれば。

 僕は迷いを生んでしまった。こんな状況で何を判断すればいいのか浮かばない。僕は無意識に立ち上がって呆然としていた。


「早く鷹斗君出てこい!!さもないとこのナイフで生徒達を刺し殺す!!」


 翔吾はナイフをチラつかせて周りを見渡している。いつ動き出して生徒達に被害に遭うかもしれないこの状況。

 どうすればいいんだ。彼を止めるには劉生君を止める?止めると言っても何をするんだ?力任せに殴って暴力で解決するのか?

 でも劉生君の方へと向かったら今度はここが……そこで僕は最悪の答えを見出してしまった。彼らを殺すと言う答えが……

 パトカーのサイレンが外から聞こえ、外を見るとパトカー何台もが到着し、警察らが校庭に集まり出した。


「誰か刺してやる!!」

『落ち着くんだ君!!』


 その隙を見て翔吾君は僕から離れて遠くに逃げていた生徒達へと走って行った。


「しまった!!」


 僕は咄嗟に止めようと痛みを忘れて窓を飛び越えて走った。だが、間に合うわけもなく、ナイフがまだ逃げていない生徒らの方へと翔吾君が刃と共に向かって行った。

 生徒達は悲鳴を上げながら逃げるも、一人の女子生徒が転んでしまって、足が震えて動けなくなった。

 翔吾君が徐々に近づき、警察も僕も間に合わない。これじゃあ被害者が。

 その時、怯える生徒の前に真紀が女子生徒の前に駆け寄って無理やり起こした。


「立って!早く走って!!」


 背中を押して歩かせて真紀自身が手を広げて、自ら翔吾君の的になろうとした。


「逃げろ真紀!!」


 僕はもっと速度を上げた。だが、ナイフは無常にも真紀へと刃を向かった。


「きゃっ!!」

「真紀!!」


 真紀の胸元にナイフが刺さり、その場にゆっくりと倒れ込んだ。

 その瞬間、僕の心の中の何かが壊れた気がした。


「さぁ、早く鷹斗君を──」

「僕はここにいるさ……」

「え?」


 僕はビニール袋を上げて、翔吾だけが見えるように顔を見せた。

 

「た、鷹斗君……死ね!!」


 翔吾君は僕だと分かるとナイフを僕に突いてきた。僕はナイフを直で受け止めて、そこから血が流れ落ちた。


「つ、強い力が!」

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

「ひっ!?」


 僕は今までに感じたことのないパワーが溢れ出て、刻印の力が無意識に発動した。手から垂れる血は地面に落ちると一瞬で蒸発して煙となった。ナイフも粘土のように柔らかく折れた。

 それを見てナイフを捨てて無抵抗なアピールして逃げ始めた翔吾君。だが、僕は自分の意識が何処か別の世界に行ったかのように、刻印の力を最大限に出し瞬時に翔吾君の目の前に移動した。


「あ、あぁ……辞めて鷹斗……君」

「うおぉぉぉ!!!」


 考えが浮かばない。一瞬だけ目が覚めたような怖がっている翔吾君の顔があった。だがそんな事はお構いなしに僕は力任せに無抵抗の翔吾君の顔面を一発殴り、体育倉庫へと殴り飛ばした。

 体育倉庫の壁を突き破り中で激しい衝撃音が聞こえた。

 その瞬間に自分が我に帰った。


「はぁ……はぁ……翔吾君!!」


 僕は自分が今した事を後悔した。怒りに身を任せて殴り飛ばした。

 体育倉庫を覗くとそこにはボールなどを薙ぎ倒し、壁に激突した跡があった。翔吾君は棚の下敷きになって倒れていた。すぐに棚をどかして翔吾君の姿を確認した。

 その姿に僕は絶句した。


「あ……あぁ。翔吾君!翔吾君!!」


 翔吾君は目を開けたままぐったりと倒れていた。倒れた翔吾君に何度も揺さぶって起こそうとしたが、翔吾君は反応を示さずにぐったりとし続けた。


「嘘、嘘だ……死んじゃった……そんな」


 本当に死んでしまったの。翔吾君が、まさか僕は本当に嘘だ。考えが何も浮かばない。どうすればいいんだ。死んじゃった。あぁ。


「そこにいる君達!!動くな!!」

「!?」


 警察官達が刺股を持って体育倉庫の前に集結した。ビニール袋を被っている僕は顔はバレていない。だから、見つかる前に逃げないと。

 僕は咄嗟に小さな火の玉を生み出して地面に叩きつけて煙を発生させた。警察官達が怯み、視界が悪くなった隙を突いて倉庫から飛び出して学校裏へと逃げていった。

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