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嘘告? なにそれおいしいの?

作者: ユウギリ

リハビリのための短編です。

最近小説を書いていなかったので(笑)


短編ですが、話数を付けてあります。読みにくかったらすみません。



〇第1話 ─えっと……嘘告って、なに?─


 僕、西村(にしむら)奏斗(かなと)は今、理解困難な状況下にいる。

 女の子と二人きりで、屋上に対面式で立っているのだ。

 ちなみに彼女ではない。

 なら、なぜこのような状況に陥っているのか。

 順を追って説明しよう。

 うちのクラスには、その唯一無二の可愛い容姿と優しさからクラスのマドンナとなっている、笹西(ささにし)香菜(かな)さんという女の子がいる。

 その笹西さんに


「西村くん、放課後、屋上に来てくれないかな」


 と言われ、言われた通りに屋上に来てみると、他の人達がいるわけでもなく、笹西さんと僕の一対一の状況になっている、というわけだ。

 そして、笹西さんはなぜか視線が定まらず、下を見たり僕を見たりを繰り返している。

 これが、一番の僕が理解困難と言った原因だ。

 埒が明かないので、こちらから切り出すことにした。


「えっと、どうして二人きりで屋上に?」

「そ、そのっ……に、西村くんっ!」

「は、はい……」


 ビックリした……。

 いきなり近づかないでほしい……。

 と、思っているのも束の間。

 次の瞬間、もっと驚くべきことが起こった。


「私とっ、付き合ってください!」

「……はい?」


 ◆


 もっと理解困難になったぞ?

 どうして僕に告白してるんだろう?

 イケメンではない(なんなら容姿を突っ込まれたことがない)し、成績も中の上辺りで誇れるものではないし、人一倍頑張ってることもないし、好きになる要素も一目惚れされる要素も無いに等しい。

 だから、告白している笹西さんは、余程の物好き、ということになる。

 ただ、僕に断る理由はない。


「西村くん?」

「僕でよければ、よろしくお願いします」

「……!」

「は~い、そこまで~」


 誰もいないと思っていたけど、そうではなかったみたいだ。

 割り込んできたのは、同じクラスの笹西さんとよく一緒にいる、笹西さんとはまた違った美少女の白川(しらかわ)美沙(みさ)さんだった。


「西村くん、ざんね~ん! 今のは嘘告でした~。ねぇねぇ、今どんな気持ち~?」

「ちょ、ちょっと! 美沙!? 西村くんっ、違うのっ、これは……!」

「えっと……嘘告って、なに?」

「「えっ……?」」


 ◆


 時が止まったように唖然とした二人から、嘘告の意味を教えてもらった。


「つまり、僕はまんまと騙されたってこと?」

「そ、そうそう! そうだよ~? どう? どんな気持ち~?」

「なるほど……嘘告か。通りでパッとしない僕に笹西さんが告白してきたわけだ」


 それなら納得する。

 とても思考がスッキリして清々しい気分だ。


「西村くん? 私は……」

「笹西さん。今のことは忘れておくから、笹西さんも気にしないで。それじゃ」

「ま、待って! 西村くん!」

「本当に気にしないでいいから!」


 去り際に笹西さんにそう告げた僕は、下校するために足早に階段を下るのだった。




〇閑話 side:笹西香菜→白川美沙


 あんな爽やかな笑顔の西村くん、初めて見た……。

 って、見惚れてる場合じゃない!


「美沙! なんであんなこと言っちゃうの!? 付き合えるところだったのに!」

「えぇ? でも、西村くんのこと好きになるのは、何もかなっちだけじゃないんだよ~?」


 そう言う美沙の顔を見れば、満面の笑みを浮かべていた。

 ま、まさか……。


「美沙、も?」

「今は、私の方がアドバンテージがあるかもね~?」


 その言葉は、宣戦布告と同義だった。


「わ、私だって、負けないから!」


 そう言った私は、美沙を置いてすぐに西村くんのところに向かった。

 取り敢えずは、美沙によってもたらされた西村くんの私への誤解を解くことから始めないと……。

 そうしないと、美沙と同じスタートラインに立てないから。


 ◆


「まさか、かなっちに先を越されるとは思わなかったなぁ~」


 たぶん、西村くんのところに行ったであろう親友が見えなくなったところで、私は独りごちた。

 だいぶ前からかなっちが西村くんに異性として興味を示していたことは知っていたけど、性格上、告白するまでの度胸はないと思ってた。

 でも、予想に反してかなっちは西村くんを屋上に呼び出した。

 そして、西村くんの性格からして、断る可能性はほぼ無い。

 二人が付き合うことになってしまったら、私のこの気持ちはどうなるのか。

 だから、かなっちが西村くんを屋上に呼び出した時、こっそり告白の現場に潜り込んで、西村くんが告白の返事をしたところで出ていって、嘘告だという()をついて告白を無かったことにしようと思い付いた。

 結果は、私の予想通りになった。

 でも、予想外なことに、西村くんは嘘告という概念を知らなかった。

 まぁ、告白が無かったことになったし、結果オーライってことで。

 かなっちには悪いと思ってるけど……


「これは、女の戦いなんだよ。かなっち」


 たぶん、誤解を解くために西村くんのところに行ったんだろうけど、西村くんの性格からして誤解はそう簡単には解けないはず。


「解ける前に、できるだけ有利にしとかないとね」


 そう呟いて、次はどうするべきかを考え始めた。




〇第2話 ─なんという偶然─


「西村くん!」


 準備してあった荷物を持って教室を出ようとしたところへ、笹西さんが現れた。


「さっきはごめんね。でも……」

「大丈夫。怒ってないよ」

「そ、そうなんだ……よかっ」

「そもそも、告白してきた意味が全然わからなかったから、嘘告だって聞いて納得した」

「……え……?」

「だから、本当に気にしなくていいから。それじゃ、また明日」


 そう言い、笹西さんの横を通り過ぎて、下駄箱に向かった。


 ◆


「ただいま~」

「お帰り~」


 リビングから返事が返ってくる。

 僕の姉だ。

 リビングに入ると、早々にお声がかかった。


「奏斗~」

「ん~?」


 壁側に荷物を置きながら適当に返事を返す。


「今日、同級生の男子から告白されたんだよねぇ」



──なんという偶然。



 まぁ、僕の方は嘘だったけど。


「へぇ、よかったじゃん。OKしたの?」

「ううん。考えさせてって」

「何か問題あるの?」

「嘘告なの。トランプの罰ゲームで負けた人が私に告白するっていう。──因みに、私が知ってるっていうのは向こうは知らない」


 おっと、これまた偶然。


「罰ゲームのはずなのに、相手の人、目が真剣だったの。どうしたら良いと思う?」

「いや、恋愛経験無い弟に聞いてどうすんの? そもそも、年下に聞くことじゃないでしょ」

「いいじゃん。奏斗しか聞ける人いないんだから」

「友達は?」

「全員あっち側」


 うーん……じゃあ、仕方ない。

 と言っても、恋愛経験の無い僕に言えることは限られてくるけど……。


「その人が真剣なら、一旦付き合ってみてもいいんじゃない? 本当に真剣ならきちんと付き合ってくれるでしょ」

「うーん……」

「というか、姉さんはその人のことどう思ってるの?」

「え? ま、まぁ、前から気になってはいたけど……」

「だったらチャンスじゃん。OKして付き合って、向こうが真剣だろうとなかろうと、本気にさせればいいんだよ」

「! そ、そうよね! ありがとう、奏斗!」

「どういたしまして」


 正解かどうかは置いておいて、姉さんに元気が出たのであれば、助言した甲斐もあったというものだ。

 ……そう言えば、あの時の笹西さんも真剣に言っていたように思える。

 まぁ、僕は笹西さんに恋心を抱いているわけではないから、姉さんに助言したように本気にさせるもなにもないんだけどね。

 それにしても、白川さんはなんであんなタイミング良く出てこれたんだろうか……。

 もしかして、あの二人も何かゲームをして負けた方が僕に告白するっていうのをしていたとか?

 でも、姉さんの場合は贔屓目抜きにしても美人だから対象になるのは当然として、パッとしない僕を対象にするメリットを感じない。

 パッとしないからこそ選ばれた可能性もあるけど。

 罰ゲームだったらあり得る。

 ん? なんかおかしい……。

 なんで罰ゲームで美人な姉さんが選ばれる?

 断られればそれは罰ゲームになるかもしれないけど、付き合うことになったら罰ゲームでもなんでもない。

 普通なら、僕みたいにパッとしない人を選ぶはずだ。

 告白すること自体が罰ゲーム?

 でもそれは結局、付き合うことになったら罰ゲームにならないわけで、罰ゲーム足り得ない。

 ということは、実はその告白した人も姉さんを好きで、友達の人達は告白した人と姉さんをくっ付けるためにそんなことをした、とか?

 なんにせよ、姉さんが泣くことのない結果になればいい。

 そう祈るしかない。




〇閑話2 side:笹西香菜


 好きになった切っ掛けは、本当に些細なことだった。

 とある雨の日。

 その日は、朝、起きて外を見ると晴れていて、雨が降る余地なんてないと思って、傘を持たずに登校した。

 ところが、昼頃になると曇ってきて、もしかして……と思っていたら、案の定、雨が降ってきた。

 やっちゃったなぁ、と思いながら下校しようにもできずに昇降口で雨が降っているのを眺めていると、


「あれ、笹西さん? どうしたの?」


 そう声を掛けられた。

 振り向くと、それまで話したことが無かった西村くんだった。


「傘、持ってきてなくて……」


 私がそう言うと、西村くんはすかさず持っていた自分の傘を差し出してきた。


「これ、使って」

「えっ!? そんなっ、悪いよ!」

「大丈夫。いざというときの折り畳みがあるから。気にせず使って」


 よ、用意が良い……。

 というのが、率直な感想だった。


「じ、じゃあ、お言葉に甘えて……」

「うん。それじゃ、また明日」


 そう言って折り畳み傘を開いて歩き出す西村くんに、私はお礼を聞こえるように叫んだ。


「ありがとう! 絶対に、明日返すから!」


 ちゃんと聞こえたようで、西村くんはこっちに振り向くと、笑顔で手を振って、再び歩き出した。


 ◆


 これが、好きになる切っ掛けになった出来事。

 あの時から、西村くんに興味を持ち始め、気付けば毎日西村くんを目で追うようになっていた。

 西村くんは、誰にでも分け隔てなく接していて、決して他人の悪口を言わなくて、そして何より優しい。

 そのせいか、親友の美沙までもが西村くんを好きになっていた。

 それを知ったのは、西村くんに勇気を振り絞って告白したとき。

 せっかく上手くいくところだったのに、狙い済ましたように出てきて、私の告白を嘘告だと言って告白を無かったことにした。

 いくら西村くんを取られたくないからって、私の印象を悪くするような方法を取らなくてもいいのに……。

 好きなら好きって言ってくれれば、正々堂々西村くんを賭けて勝負したのに。

 とにかく、西村くんの誤解を解こうと西村くんを追いかけて謝ってみたものの、西村くんの一方的な許しを得てしまい、事実を伝え損なった。

 明日こそ、事実を伝えて美沙と同じスタートラインに立ってみせる!


「頑張らなきゃ!」

「何を?」

「!? さ、紗綾(さや)!? いつからいたの!?」


 妹の紗綾が、いつの間にか後ろにいてビックリした。


「今さっき。で、何を頑張るの?」

「えっと……それは……」

「もしかして、西村くんっていう人のこと?」

「う、うん」

「あれ? でも、今日、告白したんだよね? フラれたの?」

「ううん。それがね……」


 妹に話すことではないかもしれないけど、今の私は話したい心境だった。


「なにそれ!? 美沙さんのこと、見損なった! 汚い手でお姉ちゃんの頑張りを無駄にするなんて……そんな人、絶交しちゃいなよ!」

「でも、美沙も西村くんのこと好きみたいだし……仕方ないかなって」

「そんなこと言ってると、美沙さんに取られちゃうよ! それでもいいの!?」


 紗綾の言うことはもっともだと思う。

 でも……


「いいの。美沙に取られたときは、素直に、親友としてお祝いしてあげたいから」


 これは、紛れもない本音。


「まぁ、お姉ちゃんがそれでいいならいいけど……」

「でも、負けるつもりはないから」

「わかった。お姉ちゃんが勝てるように、恋愛マスターである私が一肌脱いであげる!」


 マスターは言いすぎだと思うけど、実際、紗綾はすでに彼氏を作っていて2年も続いていて私からしたら恋愛上級者だから、その紗綾が味方に付いてくれるのは心強い。


「まずは、美沙さんが作った誤解を解く作戦立てよ」

「うん。わかった」




〇閑話3 side:白川美沙


 私が西村くんを好きになったのは、とある休日のことだった。

 その日は、かなっちと一緒に映画を観に行って、観終わったらその場で解散ということになっていた。

 無事、映画を観終えてかなっちと別れた後。

 家に向かって歩いていると、同い年ぐらいのチャラい系の男子二人が私の前に立ち塞がった。


「ねぇねぇ、いま暇?」

「俺らと遊ばね?」

「あ、そういうのいいんで」


 ピシャリと言い放ち、二人を避けて行こうとすると、通り過ぎた辺りで腕を掴まれた。


「そんな冷たいこと言わないでさぁ」

「俺らといると楽しいよ~?」

「それを決めるのは私でしょ!? 関わらないで!」

「へ、へぇ~。そういうこと言っちゃうんだぁ?」

「なら、こっちも実力行使するけど文句無いよね?」


 そう言った私の腕を掴んでいる男子の掴む力が強まる。

 想像以上に強くて、腕に激痛が走る。


「痛っ……! やめてください!」


 振り解こうとしても、相手の力が強すぎて振り解けない。


「ほら、こっちおいで」


 そう言いながら、私を路地裏に連れ込もうとする。

 少しでも時間を稼ぐために体重をかけて引っ張られないようにしても、男子の筋力には対抗できなくてズルズルと路地裏に引きずられる。

 もうだめかと思った、その時──


()()! ここにいたんだ!」


 そんな声が後ろから聞こえてきた。

 引っ張られながら後ろを見ると、それまで話したこともなく、なんなら興味のかけらもなかった西村くんだった。

 その西村くんが、私のことを名前呼びしていることが気になってしょうがなかった。


「西村くん……?」

「探したよ。さ、行こう」


 通り際にそう言いながら男子の手を難なく解いて私の手を優しく引く西村くん。


「おい、待てよ!」

「人の連れを勝手に誘わないでください。迷惑です」

「うっ……」


 西村くんの圧に屈した男子二人は、それ以上何も言わずに去っていった。

 助けてくれた西村くんの姿は、私の中では白馬の王子様のようにカッコいい姿だった。


 ◆


 男子二人が見えなくなったところで、西村くんが突然謝ってきた。


()()()()。ごめんね」

「えっ?」

「仕方なくとはいえ、いきなり下の名前で呼んじゃって……」

「う、ううん。助けてくれたんだから、そのくらい気にしなくていいよ」

「そっか。白川さんがそう言ってくれるなら気が楽になるよ」


 下の名前で呼んでくれないことに、どこか寂しさを感じつつ、笑顔で頷く。


「お詫びと言ったらなんだけど、家まで送るよ」

「えっ、そこまでしなくても……」

「さっきみたいな人に絡まれるといけないし。ね?」


 そう言ってくれる西村くんの顔は、私のことを心の底から心配してくれているんだとわかるくらい、どこまでも優しさに溢れた表情で……。


「まぁ、僕よりイケメンで優しい人なんて五万といるけど、今は僕しかいないし、今日のところは僕で我慢してね」


 なんでこの人は自分のことを過小評価するんだろう?

 私にとっては、この世界で誰よりもカッコいいのに。

 そして家まで送ってくれた西村くんに、何かお礼がしたいから家にあがってほしいと伝えると、


「いや、たまたま通りすがっただけだから、いいよ。それじゃ、また学校で!」


 そう言って立ち去ろうとした。

 当然、私は呼び止める。

 それでも、聞かずに去っていってしまった。

 この時から私は西村くんのことを好きになった。

 今までの私はなんで西村くんに興味がなかったんだろう、と思えるくらいにはベタ惚れに。

 他人に言わせれば私はチョロい女なんだと思う。

 でも、そのくらい西村くんはカッコいいんだから、誰にも文句は言わせない。

 私は、西村くんのことをもっと知ろうと思い、西村くんとの関わり方を変えることにした。




〇最終話 ─未来の僕、頑張れ……!(切実)─


 翌日、登校すると珍しく笹西さんが僕よりも先に登校していた。


「西村くん、おはよう!」

「おはよう。今日は早いんだね」

「うん。ちょっと西村くんに用事があって」

「僕に?」


 なんだろう?

 昨日のことは、気にしないでって言ったから違うだろうし……。


「その前に、まず、私の話を最後まで聞き終わるまで何も喋らないで」


 なんでそんなことを言うのか理解できなかったけど、頷いて返した。


「昨日のことなんだけど、嘘告っていうのは美沙が吐いた嘘なの。本当に私は西村くんのことが好きで、それで告白したの」


 理解困難、再び。

 昨日の告白は嘘でなく、本当だった?

 となると、断然、僕のことを好きになった理由も告白してきた理由も理解できない。

 それに、なんで白川さんがあんな絶妙なタイミングで出てきたのか……。


「これは本人から言うべき事だと思うけど、言っちゃうね。美沙が嘘を吐いたのは、美沙も西村くんのことが好きだからなの」


 重ねて理解困難が僕の身に降りかかる。

 このままじゃ、僕の思考の中に結構な高さの〝理解困難の跳び箱〟ができてしまう。

 一つでも跳び越える(理解する)のに苦労するのに、これ以上積まれたらジャンプ(理解)するのも億劫になってしまう。


「だからたぶん、これから私と美沙の二人にアプローチされることになると思うから、よろしくね?」


 人間なのに、頭がショートしそうだ。

 今すぐ現実逃避に入りたいくらいに、頭がこれまでの情報を理解しようとするのを拒絶している。

 でも、一つだけ理解したことがある。

 二人からアプローチされる……つまり、笹西さんと白川さん、どちらかを選ばなければならない未来が確実に来るってことだ。

 姉さんに相談に乗ってもらおう。そうしよう。


「西村くん?」

「あ、ごめん。考え事してた」

「ううん。私が西村くんでも戸惑うと思うから、気にしないで。でも、私も美沙も本気だかr……」

「ちょっと待ったぁ!」

「「!?」」


 突然大声を出され、驚きながら声がした後ろへ振り向くと、そこには白川さんが顔を真っ赤にして立っていた。

 かと思うと、スタスタと歩き出して僕の横を通り過ぎる。

 なんだろうと思いつつ目で追っていると、そのまま笹西さんの腕を掴んで引っ張っていった。


「えっ? ちょっと、美沙!?」


 呼び掛ける笹西さんの努力虚しく、どんどん引っ張られていく。

 そして、教室の奥の窓際まで行くと、白川さんがなにやら必死な表情で耳打ちをし始めた。

 あんなに必死だということは、笹西さんが言っていたことは本当なんだろう。

 というか、またタイミング良く出てきたってことは、昨日みたいに聞いてたってことだよな。

 ということは白川さん、昨日は先に告白され、今日は勝手に自分の気持ちを言われ……。

 うん。ちょっと、白川さんに同情する。

 笹西さんって恋愛経験ありそうだと思ってたけど、こう見ると無さそう。

 まぁ、僕も恋愛経験は無いから偉そうに言える立場じゃないけど。

 と、そんな考え事をしてる間に話が終わったらしく、二人して僕の前まで来た。


「「西村くん」」

「は、はい……?」

「「覚悟してね!」」

「あ、はいっ」


 どうやら、覚悟を決めないといけなくなったらしい。

 つまり、今後は二人からの猛アプローチを捌いていかないとならないわけだ。

 100%、僕が断る未来は来ない。

 なんと言っても、二人とも容姿以前に性格が良く、クラスメイトからの信頼も厚い人格者だから、告白をされて断る理由がない。

 というより、僕でなくても、告白されて断る男はいないはずだ。

 大勢の男がいる中から選ばれ、しかも被るのだから、僕は運が良いのか悪いのか……。

 ともかく、これからどうなることやら……。

 未来の僕、頑張れ……!(切実)





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