表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵様は見る目がない!  作者: 猫森まりも
第一部 雇用契約?公爵夫人、始めます
1/44

お屋敷の外観は良い仕事してますね

「うわぁ……、私来る所間違えた?想像を越えた所の話ではないわね…」



エスコートされることもなく馬車を降り、目の前の豪邸を眺めて冷や汗が流れる。


馬車に揺られること3時間。遥々田舎から王都までやって来たのには理由がある。



私はこの屋敷の主に買われたのだ。



後ろで御者が荷物を下ろしている中、長い溜息を吐いて屋敷を眺めながら立ち尽くしていると、屋敷の扉か開き、執事と数名のメイド達が現れ、恭しく礼をした。



「お待ちしておりました、お嬢様。私は執事のアジルと申します。ご案内させていただきますので、どうぞこちらへ」



褐色の肌にライトグレーの髪を短くまとめた、琥珀色の瞳が印象的な、アジルと名乗る執事に促されるまま屋敷へ足を踏み入れる。広々としたエントランスは、荘厳でありながら品格を感じさせる外観に相応しく、上品さを損なわない豪華さがある。絵画や壺などの調度品もその価値を思うと背筋がゾクリとした。…が、同時に違和感も覚えた。



「遠路遥々、お疲れ様でした。ゆっくりとお休み頂きたいところではありますが、まずはご主人様にお会いになってください」


「あ、はい。大丈夫です、お気遣いありがとうございます」



1枚の絵画に目を奪われている時に声をかけられ、うっかりしてしまった。アジルは少し目を見開いている。驚いたようだ。


だが彼も一流の執事なのだろう、すぐに愛想の良い表情を浮かべて先導するように歩き出した。


鳥のヒナのように数歩先を歩く彼を追従すること数分、応接室と思われる部屋の前で彼は立ち止まり扉をノックをした。



「ご主人様、アジルです。お客様をお連れしました」


「入れ」



中から響いた声はあまり抑揚がなく、何の感情も読み取れなかった。


アジルは静かに扉を開き、私は彼に促されるままに室内へと歩を進める。


応接室内の一際豪華な1人がけソファには、屋敷の主と思われる男性が書類を眺めながら鎮座していた。


背後で静かな音を立てて扉が閉まると、目の前の男性はゆっくりと視線をこちらに移した。



__ああ、私はこの人を知っている。



まさかとは思っていた。思っていたが、あんな非常識な条件を提示してくる人物だとは思えず、困惑が顔に出ないよう気付かれないように息を飲み、淑女らしく礼をし、声がかかるのを待つ。



「…ようこそ、よく来てくれたな、花嫁殿」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ