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同日

旅荘ホテル月桃館げっとうかん一階 事務室


 事務室の扉を叩き、入室の許可を乞うと、中から「どうぞ」の声。

 中ではユイレンさんが机に向かいそろばんと帳簿を前にその綺麗な眉を寄せて数字と格闘しておいでだった。

 今日のお召物は海老色の色無地の着物に藤色と白の市松模様の帯。イヤハヤ、まほらま族のご衣裳もまことにお似合いです。

 結い上げられた髪と襟間から見える白いうなじにどぎまぎしながら、談話室での話をしてみると口元に手をあてコロコロとお笑いになり。


「まぁ、健気でかわいらしい事、そこまで考えて居たのなら、ハイ、当館としたしましては喜んでお迎えしましょう。・・・・・・けれども、もう一つのお勤め先は、そう言う『二足の草鞋』はよろしいのですか?」


 あ、肝心なことを忘れてた。

 軍の服務規定は憲兵のクソ野郎どもと喧嘩する為意地になって覚えたが、雇員の服務規程までは範疇外だ。

 そこで俺はあのお怖い方に聞いてみることにした。

 事務室を辞して溜間ロビーにある電話室に飛び込み、新領総軍司令部の交換台に掛ける。そこから特務機関呼び出し・・・・・・。

 しばらくして、受話器から冷気が漏れ出すようなあの冴え冴えとしたお声が流れて来た。


「私だ。どうしたと言うのだ?」


 トガベ・ノ・セツラ少将閣下だ。

 おれは手短に用件を離すと、まず愉快気な大笑いを聞かされたあと。


「私も雇員の副業に関する規定はしらんな、まぁ詳しい事は総務部長のカ少佐にでも聞くしかないが、まぁ良いんじゃないのか?田舎育ちのシスルには良い社会勉強になるだろうよ。しかし、一度見てみたいものだなあの娘の制服姿を、正式に採用されたらぜひ私に一報を入れろ、見に行ってやる」


 閣下はどうもこの話をネタとして消化するおつもりの様だ。

 ともあれ、関係各所に問い合わせた結果、いずれも問題なしという事でシスル嬢は月桃館採用は決定したというわけだ。


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