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モンスターウォッ血!!  作者: うぉすれや
2/4

2滴 屋敷

「キッタナイ屋敷ね・・・。」


私は大きな屋敷の前に立つ。

大きい屋敷ではあるが、綺麗とは言えない。はっきり言えば、私なら住むことをためらうレベルだ。


だが、贅沢は言えない。私は以前住んでいた住処を聖教徒騎士団の強襲に会い、ここにいるからだ。


『まぁ、後々綺麗にしていけばいいわけだし・・・。あの男はなんとかものにできると思う・・・。魅了は入らないけど、時間を掛ければ惚れさせるくらいできるはずだし。街も近いから餌にも困らないわ。ふふふふふ』


きっと私は今、邪悪な笑みを浮かべているだろう。

私の計画は


あの男の近くであの男の性格や思考などをしっかり把握する。

あの男の好みの女を装う。

あの男をじわじわと私に惚れさせる。

この家に住み着いて街を餌場にする。


そんな感じかな〜??


コンコン


私は屋敷のドアをノックする。

すると中から女性の声がする。


「は〜〜〜〜い!!ベル様??鍵はかけていませんからどうぞ〜〜。」


この世の中で鍵もかけない不用心な屋敷が存在するとは・・・。

強盗や、窃盗、殺人者に浮浪者・・・いきなり入ってくるかもしれないのに・・・。


私はゆっくりとドアを開けて中に入る。

すると目の前に先ほどの声の主だろうか?こちらを見て立っている女がいる。


「あらあら、お客様でしたか。失礼しました。」


笑顔で私の方に歩いてくる女。

だが・・・この女・・・どうもおかしい・・・。

全く足音がしないのだ。


「おはようございます。あいにく主は留守にしています。どのようなご用件でしょうか?」


笑顔のまま私に頭を下げて私に質問をしてくる女。


「外でベルと知り合ってね。家に招かれたのよ。」


「そうですか〜〜。それでベル様は??」


ベル様か・・・。あの男は自分を様づけて呼ばせているのか・・・。どんな身分なのか・・・。


「ベルなら大荷物を持って後ろを歩いているわ。」


「そうでしょうね〜〜〜。ベル様の気配がしていますから。ふふふふふ。」


この女はベルが近くにいるのを察知してこの場にいるらしい。

そんなことができるなら私がドアの前に立っているのも気付いていたはず・・・。

私の怪訝そうな顔を見て


「あぁ!!申し訳ございません。私はミルザ。この屋敷の召使です。」


笑顔のまま自己紹介をするミルザ。


「私はレム。よろしくね。」


私はミルザに向かって手を出す。握手するためだ。

ミルザも笑顔でそれに答える。


「!!」


女の手が異常に冷たい・・・。なんで?


「あぁ〜。びっくりしましたか??申し訳ございません。私には体温がありませんから。ふふふ。」


ミルザはそう言うとゆっくりと体を回転させて見せる。

回転して止まるとその姿は先ほどと違い少し存在が薄くなった女になる。


「ガイスト??」


私の言葉に笑顔を見せるミルザ。


「ええ。」


ガイストとはこの世界の幽霊のこと。ものすごい存在感が薄く、気づくものも居ないほど弱いものも存在するらしい。

存在感の薄いものから、まるで生者のように振る舞うもの、体を大きくして戦闘に長けているものなど色々いる。

ただ、総じて言えることは、存在感があるほど力も強く、厄介である。なぜならガイストには物理的な攻撃が全く通じない。要するに、魔法が使えないものが出会ってしまえばどんなに戦闘力が高くとも勝つことは絶対に出来ないのだ。

そんなものが屋敷の中をウロウロしているなんて・・・。


ミルザはもう一度回転して元の姿に戻る。


ガチャ


後ろのドアが開く。

ベルが入ってきたのだろうと思って振り向くと、そこには前に立つミルザと同じ服を着た女が沢山の荷物を持って立っている。


「あら??この方が??」


驚いた顔をして私を見る女。


「「この方が??」」


ミルザと私は声を合わせてそう聞き返す。


「先ほどベル様が片付けをしているのを見かけまして、声を掛けたんですよ。そしたら屋敷の中に女がいるから中に案内していてくれと頼まれまして。」


笑顔のまま首を傾げて私を見つめる女。


「テナ。この方はベル様のご友人の」


「レムです。よろしく。」


私はテナと呼ばれた女に手を出して握手する。

ミルザ同様に冷たい手をしている。


「ふふふ。驚かれないところを見ると私達の正体を知っているんですね。」


笑顔を崩さぬまま、私の横を通りすぎて足音をさせることなくフロアを突っ切って行く。


「ベル様も案内しろと言っていることですし、どうぞ。」


ミルザは私を案内するように前を歩き始める。

外は汚く、汚れも破損場所もあったが、中は質素ではあるがとても綺麗だ。

窓から日も入っているのでとても明るい。

ただ・・・ガイストは日に弱いはず・・・。


「あなた達・・・こんなに日が照っているのに平気なのはどうして??」


「あ〜〜〜〜、よくわかりませんがベル様の話を聞いてから大丈夫になりましたけど??以前は夜しか行動しなかったので日がダメとは知りませんでしたし。」


「あなたはガイストになって日が浅いの??」


私の質問攻めに笑顔を見せてこちらを振り向く。


「ガイストになった時がどれほど前かわかりません。ただ、気がつくとここで彷徨っていました。」


そうとだけ言って歩き始めるミルザ。

そして他とは少し違う少し飾り気のある扉の前に立ちゆっくりと扉を開く。


「ここでくつろいでお待ちください。ベル様は片付けをしているとのことですのですぐに戻ってくると思いますから。」


大きなフロアには長く大きなテーブルと椅子が10ほど・・・。そしてこの部屋には不釣り合いな大きな真っ白の毛皮のソファが置いてある。


私はソファにゆっくりと座って考える。

あの男だけなら簡単だったのに・・・ガイストがいるなんて・・・。

というよりあの男は馬鹿なのか??化物を身近に置いて生活し続けるなんて・・・。

最悪襲われて死にかねないのに・・・。


私は少し頭を抱える。

あの男とその家族程度ならどうにでも出来た。

だが、実態のないガイスト相手では魅了も、眷属化も、効かない。

そのうえこのボロ屋敷だ。

ガイストの弱点属性の魔法なんぞ使えば燃えかねない。

追い出すのにかなり苦労しそうだ。


「フッ・・・まぁいいか。ゆっくり考えれば・・・。」


私はポツリとつぶやく。

すると大きな真っ白の犬の顔が私の顔の横にいきなり生えてくる。


「キャァぁ!!!」


私は驚いてソファから飛び退く。

犬のような顔をしているが明らかに別種だ。物凄くでかいのだ。


「何??何こいつ??」


あまりの出来事に無い心臓がバクバクしているように感じる。


フヘフヘと口を開けて舌が垂れた状態のまま尻尾を下に下げた状態で私の前に立つでかくて白い犬。


「あぁぁ!!すみません!!いい忘れていました!!シュール様がいらっしゃいます!!」


私の悲鳴を聞いて走ってきたミルザが慌てて犬の説明をし始める。


予想通り、この犬は厳密には犬ではないらしい。

そりゃぁそうだろう。体高が3mを越えるような犬なんぞいるわけがない。

天上に背中があたってまっすぐ立っていないのだから・・・。

名前はシュールというらしい。

何故かミルザは様を着けて読んでいる。

ペットに様を付ける意味がわからない。

そう思っていると頭の中に声が響く。


『悪巧みしているようだけどそんなこと僕がさせないよ。』


子供のような声で私の頭に直接話しかけてくる。こいつだ・・・犬モドキだ。


『あなた・・・言葉がわかるのね・・・。悪巧み??何のことかしら??』


口に出さず、頭の中でそう答える。


『僕に触れて色々考えていたでしょう??そんなことさせないし、できないよ。ヴァンパイアのオネェちゃん。』


その言葉に私は驚く。

なぜこの犬は私がヴァンパイアと気付いたのだ??

ガイストたちは全く気づいていないのに・・・。日のある時に訪問したのだ。そう思うヤツのほうが頭がイカれているか、相当な阿呆だろう。


『アンデッドはニオイでわかるよ。いちいちステータスなんて覗き見なくても。それに頭の中で魅了だの眷属だの考えている時点でそれ以外中々考えられないでしょ??』


鼻で笑ったように感じる。私を少し馬鹿にするような目つきでじっと見つめてくる。

とてもむかつく・・・。


『お茶飲んだら帰ってね。ここは僕がいるから君に居場所はずっと出来ないよ。』


そう私に忠告してソファのような形になる。


『・・・』


私はいろんなことをこの犬に聞くがもう話す気は無いようで、無視され続ける。

犬ごときが・・・物凄くムカつく。


私をさんざん無視し続けていたのにいきなり首を持ち上げて私を見つめる。


『ベルに忠告したら仲良くしておけってさ。それと少し買い物行ったりするから時間がかかるって。そう伝えておいてって言われたから一応伝えとく。ベルは心が広いね。こんな性悪女・・・とっとと追い出せばいいのに・・・。』


そういった後鼻息をフンと鳴らして扉の方に歩き始める。

あのデカさでその扉から出るつもりなのか??


私の心の中の疑問を聞き取ったのか、私の方を向いて鼻をフンと鳴らす。

犬の体がいきなり光り出す。

そして三分の一ほどに小さくなる。


扉のノブを口で咥えて器用に開ける犬。

そしてそのまま部屋を出て行く。


「なんだ・・・あいつ・・・。」


ソファが無くなったのでテーブルにある椅子をひとつ借りて座る。

そうしているとお茶とお菓子を持ってくるガイスト。


「えっと・・・初めてのガイストよね??」


ここには何体のガイストがいるんだ??

どう見ても人にしか見えない姿なのでちゃんと顔も把握できる。

だからこそ、どう見ても別の個体とわかるのだが、この屋敷にはどれだけの魔物が住んでいるんだ??


「あなた達・・・どれほどの規模でここにいるの??」


私の質問に対して笑顔を見せるガイスト。


「ガイストだけなら五体です。ここの管理を任せられているので全員には中々お会いできないと思いますが、お客様の相手をするのは三体。他の二体は屋敷の修繕をしています。と言っても姿は女ですけどね。」


「あ!!そうそう!!シュール様から伝言です。ベル様は依頼のものを依頼主に渡しに行くそうです。それに伴い風呂に入ったり、散髪に行ったりもするそうですので時間はそこそこかかるとか・・・。貴女様に部屋を用意するように指示されました。後でまた声を掛けさせていただきます。」


笑顔でそう私の伝えて消えるガイスト。

自己紹介もしてくれなかったので名前もわからない。



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