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別世界魔獣討伐部隊  作者: のり(バリトン吹きの少年)
8/10

幕間「家での出来事」

「ただいまー」


 普段は先に唯愛(ゆあ)が帰って待ってくれているが、今日は───今日からは誰もいない。暗く静かな部屋に電気をつける。

 家は一軒家の3LDKで間取りは玄関を開けるとまっすぐに長い廊下があり、右の手前が光希の部屋、その奥が唯愛の部屋。右側は手前がトイレ、奥が洗面・脱衣所、風呂場になっている。突き当たりにはリビングがある。唯愛の部屋はリビングから近いし、もし不審者が入って来たとしても最初に入られる部屋は光希の部屋か、トイレだ。家事全般唯愛がやってくれているので洗濯機のある脱衣所の近くだってのもあり、この配置になった。

 クローゼットの中に制服をしまい寝巻きを取り出し脱衣所に置く。だが風呂にお湯を張ってないことに気付く。下着のまま風呂場に入り湯を張る。

 蒸れた足でフローリングを歩きたくないので、その間にスマホを操作する。電源をつけると待受画面に通知が来ていた。「明日は月初の会議があるから早めに会議室に集合」とのことだった。月初の会議とは先月の活動を報告・反省し、今月の活動に活かすことを決める会議だ。

 画面に表示されているデジタル時計は10時を示していた。もう、面会時間が過ぎているので、また明日することにした。タイマーを起動し15分にセットする。

 その間に好きなアーティストの曲や面白動画を見る。3本づつ視聴すると、あっという間に15分経ってしまう。

 画面にタイマーの通知が来る。服を脱いで湯張りを止める。

 たまに唯愛と一緒に入るが、今はいない。そろそろ実感がわいてくる。背中の流し会いが懐かしい。こんなことになるなら、昨日一緒に入ればよかったと後悔する。

 そんなことを考えながら、ボディソープを体に塗りたくる。全身に塗り終えたら、シャワーで流す。

 体を洗い流したら湯船に浸かる。そう広くはないが唯愛と入っている時より広く感じる。───今はより一層。

 5分ほど入ると、体が暖まって来たので出ることにする。真夏だから暖まり始めた頃がほどよい。

 寝巻きを着てリビングに行く。テレビをつけると魔獣被害の件が連日報道されている。

 アナウンサーの声を聞きながら棚にあったはずの柿の種を取りに行く。


 『今日は4回、人型魔獣が現れるという異例な一日となりました』


『そのうち一つは本部付近の病院に出現ということなので引き続き警戒が必要ですね』


 アナウンサーとコメンテーターとのやり取りを柿の種を食べながら聞く。

 すると、画面に『まもなく録画を開始します』との文字が表示される。いつもだったら唯愛と一緒に見るドラマだ。録画するなら明日見るとして、今日はもう寝るとする。

 今日はいろいろあった。ありすぎて早かった。たぶん人生で一番不幸な日だろう。

 なぜ光希がこんな目に遭わなければいけないのか。 

 なぜ唯愛があんな目に遭わなければいけないのか。

 光希には理解ができなかった。もし神が存在するのなら、何を考えて試練を与えているのか。

 考えていくうちにどんどん辛くなる。

 部屋に入ると姿見が目に入る。その鏡に写った自分は泣いていた。涙を袖で拭い。そのままベッドに入り眠りに就いた。 











 ふと物音に目が覚める。枕元にあるスマホで時間を確認すると、4時17分を示していた。


「しっ!」


 すると、横から声が掛けられる。驚き、体がビクッとする。恐る恐る声がした方を見る。

 そこには、物音の正体がいた。普通の男性よりほんの少し筋肉が付いた容姿をしているが、肌の色がおかしく、青系統の色をしている、この世の者とは思えない人形の何か

───由月だ。

 由月は光希の顔の側、まさに息の吹きかかる距離で、唇の前に人差し指を立てている。


「なぜ、お前がここに」


 殺されるかもという恐怖で素直に小声で応じる。

 家に入ったとき確かに鍵は───締め忘れた。昨日はいろいろとあり。意識が朦朧(もうろう)としていた。それが原因だ。だとしても、なぜ由月がここにいるのか。


「俺は探し物をしに来た。欠片をしっているか」


「知らない」


「そっか」


 そう言うと顔を離し窓の方を見る。逃げられる。光希はそう思った。


「あっ!そうだ、ここに来たことは秘密にしてくれ」


 また唇の前に人差し指を立てる。

 光希は逃がすまいと武器を取ろうとする。頭上の空気を掴む。言葉通り空気だった。普段は『(そら)』にいれているが今日に限って、更衣室に置いてきてしまった。

 光希はベッドから急いで降り由月の腕を掴もうと手を伸ばす。


「待っ!」


 ───が、掠り、握り損ねた。光希はその勢いで、壁に激突する。由月はそのまま朝日の明かりに吸い込まれて行った。

 故に、光希は千載一遇のチャンスを見す見す逃してしまったのだ。

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