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2件目

 お前誰だと口にしてから気付いたが、そもそも俺が喋っている言語は通じているのだろうか。


 洞窟に繋がってしまった押入れの先が、どうして同じ国の人間の所に繋がっているのだと思うのだろうか。というのも、今まさに目の前にいる女性の恰好から思ったのだったが、現代人に似つかわしくない格好をしていた。

 深淵を思わせる濃い蒼色の髪。声をかけたと同時に振り返り、こちらを見つめる碧の双眸。白い肌に高い鼻とくれば、どこからどう見ても美少女なわけだが……その手に持っている剣は何だろうか。これが単なるコスプレだったら良かったんだが。


「あー……ここは土足厳禁なんで、ここで脱いでもらっても良いですかね」

「ぬ? あ、あぁ……」


 取りあえず、言葉は分かるらしい。

 それがまた違和感なんだが、困惑気味に靴を脱ごうとしている彼女を尻目に、手にしていた袋を下ろした。

 足元、洞窟を通ってきたのだろう。土と埃に塗れた靴が部屋のカーペットに足跡を残していた。足拭き用のマットは、新品の状態で手提げ袋の中に入ったままだった。


「ところで、ここはどういう所なんだろうか。とてもじゃないが、迷宮(ダンジョン)の奥にあるような場所じゃないが」

「(ダンジョン?)……えーと、ここは俺の家なんだが……お宅はどちら様で?」


 家と言った瞬間、信じられないといった表情をされてしまった。


「な……こんな所に家? いや、しかし……こんなにも立派な造りの内装は見たこともない。確かに、家、なのかもしれないが……また、どうしてこんな所に」

「ちょっとちょっと、考えに集中するのも良いけど、質問に答えてくれてもいいんじゃないかな」


 困惑しているところに質問攻めで情報を仕入れる。

 ダンジョンなんて単語が出てくるぐらいだ。さすがにコスプレした外国人なんて線は薄い。ここに来て高レベルの中二病患者が住居不法侵入してきたなんて事はないだろう。


 ――何という事でしょう。

 彼女が押入れの戸を挟んでやってきた向こうの世界、何と異世界でした。

 転生してから二十数年。それなりに望んでいたことが現実になった今、思う事は『面倒』です。

 そりゃぁね? 親元を離れられない学生時代だったら何も考えずに異世界に旅立ったことだろう。しかし、それなりに安定した生活をすることが出来る今この現世において、無理を押し通してまでして異世界に行こうなんてするのはバカのすることだろう。


 ……じゃあ、俺は馬鹿だな!


「ところで、君はこうして洞窟の奥まで来てしまったわけだが……まさか一人でここまで来たのか?」

「いや……他に二人、一緒にパーティーを組んでいたんだが、強い魔物に追われて逸れてしまったんだ。持っていた武器もガタついていて、どうしようかと思っていたんだが」

「どうやってここに?」

「どうやって? ……魔物が思っていた以上に強くて、一人でどうしようもなくなってた時にここの扉が見えたから咄嗟に」

「なるほど」


 あっぶねー!!

 これから単身、洞窟に突入するところだったー!!

 如何にも冒険者してます体の女性が言う魔物と出くわしてたら即アウトだったに違いない。装備は整えられたが、魔物を狩れるような手段は無いからな。


「それよりも、良いだろうか」

「ん、なんだ?」

「ここは貴方の家だと言っていたが、どうしてこのような危険な場所に? 先ほどの魔物がここに入ってくる危険もあるというのに」

「あー、その……」


 困った。

 確かに向こうの住人からしてみれば洞窟の奥に家を持っているというのは不思議な事だろう。しかも、洞窟に相応しくない綺麗な内装の部屋と来れば尚更だ。

 しかし、俺からしてみれば彼女の方が不審極まりない存在でしかないのだ。魔物と対峙した時のために持っているであろう剣も、刃があれば立派な銃刀法違反だ。ガッツリメートル越えをしているであろう刀身は、一見コスプレの類かとスルーされるだろうが。


 ――あ、そうだ。


「一応、商人なんて事もしてるんだが……見ていくか?」


 さっき買ってきたもの、彼女なら役に立ててくれるかもしれないな。

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