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距離

  2007年6月30日月曜日



 大きくも無く、小さくも無く。裕福でもなく、貧乏でもない。

 それが、俺の家。

 俺の家のすぐ隣には幼馴染の彩香が住んでいる。

 小さい頃引っ越してきた時に彩香と出会った。

 二階の自分の部屋を決める時も彩香の部屋の横を選んだのだ。いつでも話が出来るように。

 その頃は純粋に、彩香という友達が好きだった。



 目覚まし時計がやかましく鳴り響く。

 あぁ・・・、毎度毎度うるせー・・・。

 だったら初めからセットしなければ良いだけの話なのだが、それでは朝起きる事が出来ない。

 目覚まし時計を止めて着替えを始める。

 痛ッ・・・。

 服を脱いで体を見る。

 あいつらも慣れているのか、痕が残っているのは腹や背中だけで顔などの目立つところは痕が残っていない。

 その方が俺としても楽なんだがな。

 「・・・と、早く着替えないとな」

 誰かに言うわけでもなく、とりあえず声に出して自分を促す。

 って、痛いって!

 「やっほー、翔。どうしたの?」

 軽くうずくまってると窓のほうから声。

 彩香か・・・。

 「いや、なんでもねぇよ」

 「ホントに?随分と痛がってるように見えたけど」

 こういうときはお節介焼きというか・・・。

 「なんでもねぇって。それより、着替えなきゃ行けないし、これから学校だろ」

 「んー・・・、まぁね。・・・休みたいけど・・・」

 「ん?なんだって?」

 「ううん、なんでもない!じゃぁね」

 変な奴・・・。とりあえずさっさと着替えよう。

 痛いのを我慢しつつ、着替えて一階へと降りる。

 トイレに行き、顔を洗い、テーブルへと着く。

 重い。

 それがいつも思う感想。

 両親の仲は特に悪いわけでもない。

 両親との仲も特に悪いわけでもない。

 ただ、最近父親の様子がおかしい。

 その所為もあるのだろうか、朝食時の空気が非常に重たい。

 さっさと食べて学校に行こう。



 大きくも無く、小さくも無く。裕福でもなく、貧乏でもない。

 それが、私の家。

 私の家のすぐ隣には幼馴染の翔が住んでいる。

 小さい頃引っ越してきた時に翔と出会った。

 二階の自分の部屋を決める時も翔の部屋の横を選んだのだ。いつでも話が出来るように。

 その頃は純粋に、翔という友達が好きだった。



 うっすらと目を開く。

 まだ目覚ましが鳴る時間にはなっていない。

 ここの所随分と早く起きちゃうな。

 する事も無い。一階で寝てるお父さんもお母さんもまだ寝てるみたいだった。

 とりあえず顔を洗って、着替える。

 ここの汚れ、まだ取れてなかったんだ。

 いつの間にかセーラー服についている汚れ。

 日に日に酷くなってるし、いつまで隠し通せるかな・・・。

 どうせこのまま寝る事も出来ないし、制服をきれいにしよう、うん。

 小さな汚れをふき取り、糸のほつれがあれば裁縫セットを使い、少しずつ時間が過ぎていった。

 ふと隣の家で目覚ましの音が鳴った。

 翔かな?

 カーテンを開く。翔の部屋は窓は開けてるくせにカーテンは閉めてる。

 何するのか見物でもしよう。

 何気なく見ていたが、普通に着替えているようだだった。

 ただ、痛がっている点を除いては。

 声をかけた。

 案外普通に返答が戻ってきた。

 二、三会話をして互いに部屋に戻った。

 私のこと、気づいてくれたら良かったのに。

 私が苦しんでいるって気づいてくれた良かったのに。

 でも、翔も私と同じように苦しんでるんだよね。

 それに耐えてるんだよね。

 見ればわかる。

 だけど、見ればわかるのに、どうして互いに気づきあうことが出来ないのだろう。

 無理なことと判っていても悲しくなってきて涙が出てきた。



 どのくらい時間が経ったのか、気づいたらいつも家を出る時間になっていた。

 行きたくない。

 正直に言って、行きたくなかった。

 お母さんの急かす声が聞こえたので、とりあえず着替えて顔を洗って歯を磨いた。

 「それじゃ、行ってきまーす」

 「あれ?ご飯は?」

 「時間がないからいらない」

 そういって家を飛び出す

 ――「彩香、最近様子が変なのよ」

 ――「そうなのか?」

 ――「制服が変に汚れてたり・・・、いじめでも受けてるのかしら」

 ――「ふとした拍子に汚したんだろ。お前は気にしすぎだ」

 ――「そうだといいけど・・・」

 そんな会話が家でされてる事にも気づかずに。

 あれ?翔?

 私が家を出るちょっと前に翔も家を出たのかな。

 そう思い、近づいて声を掛けようとする。

 あれ・・・。どうして足が動かないんだろう。

 近づきたくても近づけない。

 あれ・・・。どうして声が出ないんだろう。

 声を掛けたくても掛けられない。

 あ、そうか。

 気づいた。

 気づいてしまった。

 私は気付き合えなかった事で今まで以上に翔との距離を感じたんだ。

 翔は何も悪くない。

 何も話さずに分かり合うことなど無理だと判っているのに。

 声を掛けるのを諦め、トボトボと歩き出す。

 頬を温かいものが滴り落ちる。地面に斑点を作っていく。

 あれ?なんだろう?

 どうして泣いているの?

 だめ・・・、止まらない・・・。

 そのまま回りを気にせず大声で泣いた。

 騒ぎを聞きつけたのか、少し先を歩いていた翔が走り寄ってきた。

 必死に声を掛けてくれる。でもその声は私には届かない。

 いや、私が拒否してる。

 だめ、これ以上翔に優しくされるわけには行かない。

 逃げ出したい衝動に駆られた瞬間、私は走り出した。

 どこでも良い。どこでも良いから。翔が来ない場所に。

 


 とりあえず俺は何もしていない。それだけは確信を持って言わしてもらう。

 はっきり言って、どうして彩香がいつの間にか後ろを歩き、いきなり泣き出したのかわからない。

 慌てて駆け寄ったは良いが、どこかに逃走。

 ・・・俺が悪いのか?

 あぁ、やばい。早く学校にいかねーと。

 

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