もうバレる
ユイと冒険者生活をして一週間後。いくつかの依頼をこなしてそろそろランク昇格の依頼が来るであろう時期。いきなり尋ねられた。
「ねぇ。何で実力を隠してるの?」
いきなり何を言ってるんだこの子は?絶対にバレないように一週間暮らして来たんだぞ。魔法は一回も使ってないし、武器も普通の武器を使って、動きを初心者冒険者の動きを完全に再現していたはず…どこでバレたんだ!?
しかし、焦ってはいけない。ここは普通の対応で返すんだ。
「えーっと…実力を隠してるってのはどういうことかな?俺は初心者冒険者だし、まだレベルも3の雑魚なんだけど?」
「これ。」
そう言ってユイが差し上げたのは、鉄製の杖だった。
「この杖。明らかに只の杖じゃない。この杖使ったら明らかに魔法の威力が上がったし、鉄製の杖にしては軽すぎる。」
しまった。スライム討伐の時に渡してたオリハルコンの杖を回収し忘れてたなんて。オリハルコンの杖だが、
オリハルコンの杖
作成者:ユウキ
攻撃力:30
特殊効果:不壊属性、魔法効果上昇(特大)
と、普通にぶん殴る分には只の杖だったんだけど、魔法使うと明らかに威力が上がる装備だった。誰だよこんな杖渡したやつ。俺ですねすいません。
いや、まだシラを切ることができるはずだ。
「へー。この一週間でそんなに魔法が上達するなんて流石だなぁ。その杖も町で適当に買った物だったんだけどもしかして掘り出し物だったのかもな~。」
「シラを切るつもり?じゃあ他にもそのハンマー。ちょっと床に置いたときの音とかからして明らかに100kg以上あるはず。そんな重い武器をレベル2で持てるはずがない。」
くっ、俺が鉄コーティングのアダマンタイト製のハンマーを使ってたことにも気づいていやがる。
「何を言ってるんだ。俺のステータスはギルドカードに記載されている通りの雑魚ステータスだぞ。100kgの物なんて持てるはず…」
「偽造スキル。」
「何?」
「偽造スキルがあると仮定すれば説明できる。高いレベルの偽造スキル持ちは自分のステータスを偽造できると聞く。どれくらいステータスを偽っているか調べる魔道具はないけど、偽っているかどうかを判断できる魔道具は存在する。」
うっそーん。そんな道具あんのかよ。せっかく覚えた偽造スキル使えねーじゃん!
「これ以上シラを切るつもりならギルドに通報する。ちなみにギルドカードの偽造は重罪で死刑もあり得る。」
「…………………………。」
「わかった。通報「それはやめてくれ!何でも言うこと聞くから!」わかった。」
くそ。まさか俺の平凡な冒険者生活がもう終わりを告げるなんて…これからは、パーティー内でユイに荷馬車のようにコキ使われる生活が始まってしまうなんて…
「じゃあとりあえず本当のステータス見せて。」
「1つだけ約束してくれ。ステータスのことは絶対言わないと。」
「約束する。」
「本当に誰にも言わない?もちろん紙に書いて教えてから言ってはいないからセーフでしょ?って言うのもなしだぞ。」
「言わない。もし約束を破ったら処女をあげてもいい。」
「マジで!?むしろ言って!」
そう発言するとユイが軽蔑するような目で見てきた。くそっ!処女の一言に俺の紳士の化けの皮が剥がされるなんて!
「良いから見せて。」
「はい…」
もうどうにでもなれと、本当のステータスを見せた。すると、
「本当のステータス?」
「ああこれが俺の本当のステータスだぞ。」
「嘘つかないで。こんな高いステータス最上級のドラゴンレベル。あり得ない。」
「嘘じゃないって。高すぎるから隠してたの!」
「嘘…精々レベル10くらいだと思ってたのに…」
「嘘じゃないよ。嘘だったら俺の童貞をあげてもいい。」
「死ね。」
何か辛辣になってきた…美少女にこんなに嫌われるなんて死ぬほどきつい。
「わかった。信じてあげるけど証拠見せて。」
「任せとき!」
俺はユイからの信頼を取り戻すため、全力を出すことにした。
まずは、空間魔法で俺の住んでいた山までいき、そこで火属性魔法、土属性魔法、水属性魔法、風属性魔法などあらゆる魔法を使って見せた。
「これから剣術とかやるんだけど見ててね。」
「もういい。想像してたのより遥かに強かったからいい。」
「そ、そう?じゃあ何かすればいいことある?」
そう言うと、ユイはしばらく考え込んだあと…
「じゃあ、倒して欲しい奴がいるの。」
そう言って頭を下げてきた。